投稿日:2025.10.24 最終更新日:2025.10.24
これが信頼を築くサステナ発信だ -社内広報戦略5つの方法- by Antti Isokangas
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NECSUS STAFF
多くの企業はすでに、サステナビリティ・コミュニケーションが単なる広報活動ではなく、経営戦略の一部であり、信頼を築き、企業の評価を形づくるものであることを理解している。
しかし、多くの企業が見落としていることがある。それは「社内の発信が働き方そのものを変える」という点である。
社員は最初にして最も重要な受け手である
キャンペーンを展開し、報告書を出し、新たな取り組みを始める前に、自問すべきは「社員は理解しているか」である。
理解していれば、社員は企業の強力な応援団となり、質問に答え、リスクを見抜き、自分の言葉でストーリーを広げることができる。
理解していなければ、混乱、部門間の不一致、懐疑的な管理職、そして顧客にまで伝わる不信感を生む。
内から外への発信は必須である
強い社内コミュニケーションとは、社内報での小さな記事ではない。時間をかけて「どこへ向かうのか」「なぜ重要なのか」「自分の役割にどう関わるのか」を共有することである。
例えばデンマークの海運大手マースクは、環境移行を進めるにあたり「My Learning Academy」などの学習プラットフォームを通じ、継続的学習文化を社員に提供している。さらに、低炭素燃料を扱うための「Maritime Decarbonization Suite」など専門的研修を行い、社員が変化に対応できるよう支えている。
フィンランドのマリメッコは、素材や循環型の取り組みに関して社員を早い段階から議論に参加させ、デザイナー、調達担当、店舗スタッフをパイロットプログラムやワークショップに巻き込んでいる。誰もが自分の仕事と企業の長期的な環境目標とのつながりを理解している。
Sグループでは、日常業務そのものにサステナビリティを組み込み、食品廃棄削減や生物多様性への理解を全店舗や物流、接客にまで広げている。
サステナビリティは雇用ブランドの一部である
10年前、サステナビリティは採用において「あると良いもの」だった。しかし今では基準そのものであり、とくに若い世代にとって重要である。応募者は企業の気候や社会的責任への姿勢を「入社するか否か」の判断材料としている。
フィンランドのネステ(再生燃料大手)やアウトクンプ(低炭素ステンレス大手)は、採用活動においてサステナビリティを中心に据えている。彼らはエネルギーや鉄鋼の未来を形づくるうえで「移行」「課題」「社員一人ひとりの役割」を率直に語っている。サステナビリティは「事業の一部」ではなく「事業そのもの」である。
調査によれば、Z世代の就職希望者は環境責任、透明性、目的意識を最重要視している。この傾向は創造的職種やNGOに限らず、物流、技術、金融、生産部門にまで広がっている。
社員体験に裏付けられないサステナビリティ主張は、無意味どころか信頼を損なうリスクである。
メッセージは一様ではなく調整が必要である
社外向け発信を投資家、顧客、パートナーに応じて変えるように、社内発信も多様な社員に合わせる必要がある。価値観を変えるのではなく、役割に即した例や形式に翻訳するのである。
例えばフィンランドの食品大手ファッツェルは、パン職人や販売員といった現場社員に対して、食品廃棄や地域への影響、チーム単位の指標など、日常に直結するテーマを用いてサステナビリティを伝えている。
風力大手ヴェスタスでは、サステナビリティを生産や保守、開発にまで組み込み、役割ごとの指標や協働計画を通じて浸透させている。
また、調整とは「聞くこと」でもある。部門や地域によって信頼度や関心は異なる。相手を理解すればするほど、効果的に巻き込むことができる。
社員ネットワークの活用
効果的でありながら十分に活用されていない手段の一つが、社員によるリソースグループ(ERG)である。サステナビリティ分野では、社員が自発的に組織内で活動するネットワークが存在する。
フィンランドのコネ社では、社員主導のサステナビリティ・ネットワークが、グローバル目標を地域の行動へと落とし込んでいる。スウェーデンでは建設パートナーシップ、トゥルクでは物流包装の廃棄削減など、地域ごとに活動している。これらは企業のサステナビリティ部門や広報部門と連携し、社員の主体性と信頼を高めている。
北欧の他企業でも、正式なERGに限らず、横断的なプロジェクトチームや「サステナビリティ大使」プログラムとして機能している。社員主導の取り組みは、価値を部門横断的に広げ、責任を上層部だけでなく全社で共有することにつながる。こうしたグループは「内部の健全な圧力」としても働き、経営陣が見落とす視点を突きつけ、組織全体を正直に保つ役割を果たす。
社内コミュニケーションを強化する5つの方法
・サステナビリティを事業そのものに結びつける。価値観だけでなく成長や効率、強靭性と関連づける。
・役割に合わせた発信をする。購買担当と整備士は求める情報が異なる。
・本物の声を使う。社員自身の語りやチーム単位の物語が信頼を築く。
・一方通行ではなく対話に投資する。アンケートやワークショップで本音を理解する。
・小さな成功を祝う。店舗やチーム単位の前進を評価することで勢いが生まれる。
文化こそが真のブランドである
情報があふれ、約束が疑われる時代において、信頼できる社内文化こそ最大の武器であり資産である。社員が使命を理解すれば、彼らは最も強力な発信者となる。
逆に社員が理解していなければ、どれほど立派なキャンペーンも意味をなさないのである。