環境への取り組み先進国であるフィンランド。
首都ヘルシンキでは5月7日にSustainable Business Nordic 2025 が開催され、NECSUS Green Fileが現地取材を行ないました。
以下、総論(前編)です。
今回のカンファレンスでは、欧州でのCO2削減に関する企業の報告義務制度の動向に注目。
大企業から順に取り組みが始まっていますが、米国の政権交代や制度の直前での変更により混乱を招いています。
一方、具体的施策以上に重要視されたのは、マーケティング、法務、ESG投資、コミュニケーションから企業文化改革に向けてのリーダーシップ論まで、様々な角度から次代を見据える姿勢作りです。
各論に走りすぎず、あるいはピントの定まらない概念論に終始せず。
欧州、特にその中でもサステナブル・ビジネスで先進的な取り組みをしているフィンランドらしく、会場内はサステナビジネスに向かう雰囲気が共有できている様子です。
もちろん各種打ち手は試行錯誤が続いています。
しかし、参加者を中心としたビジネスリーダー達は、カーボンニュートラルの必要性と具体的なゴール(ゼロ・エミッション)を真正面から捉え、日々の業務に結びつけています。
フィンランドの現場から
会場ではカーボンニュートラルの各施策をポジティブに捉え、従来のビジネスからサステナブル・マネジメントにシフトしていく勢いが感じられました。
カンファレンスで基調講演を行ない、個別面談にも応じてくれたグドバタイジング(グッド<良い>とアドバタイジング<広告>を合わせた造語)提唱者のトーマス・コルスターは、マーケティング的視点から「サステナビリティこそ最大のビジネスドライバー(推進役)である」と述べ「ひるまず、粘り強くサステナ活動すべき」と続けます。
また、「テクノロジーがサステナビジネス推進に果たす役割はとても大きい」と述べたのは、エンジニアのヘレナ・ソイマカリオ(フィンランド科学技術業界団体サステナブル成長戦略エグゼクティブ・ディレクター)。
AI等がすでに風力発電でのトラブル回避等に効果的に使用されている等の実例を紹介。
「サステナビリティに資するテクノロジーへの関わり方は幅広い。
だから、あきらめずに着実に進もう」と力を込めました。
続いて登壇したサミ・トルニコスキ(インパクト代表)は、バリューチェーン上での透明性あるデータ収集・活用についてスピーチ。
そもそもデータ収集の難しさからデータは不完全なものであり、その運用も間違えると正しい判断からかけ離れてしまう危険性を指摘し、「データは責任の分担を明確にする中で活用すべき」と語りました。
なお、主なアジェンダは以下の通り。
- サステナビリティをけん引するリーダーシップの再定義と、価値主導の変革の必要性
- テクノロジーを活用したサステナビリティ推進
- バリューチェーンの透明性とScope3再考
- 自然保全に向けた先進技術の可能性とその限界
- 不確実な規制下でのサステナビリティマネジメント
- サステナブルファイナンスと投資の未来 サステナビリティから価値を創出する方法
- EU規制改定後のサステナビリティとデータの行方
- ESGコミュニケーションによる競争優位性の構築