2025.10.24
まだ“芽生え”の写真でサステナビリティを語ってる? ーそろそろ、ビジュアルをアップデートしようー by Thomas Kolster
もしサステナビリティがマッチングアプリのTinderにプロフィールを作るとしたら、そこに並ぶのはいつもの三点セットだろう。 風力発電のタービン、ホッキョクグマ、そして―もちろん―しっとりした手に包まれた小さな芽。 ……左にスワイプ。一択だ。 想像力はどこへ行った? よりよい世界を「思い描けない」まま、どうやってそれを「創り出す」ことができるだろうか。 この20年、私たちのサステナビリティのビジュアル表現は、悲劇的な破滅か、夢のような抽象表現に偏ってきた。 だが、そのどちらも、もはや人の心を動かせていない。 Getty Imagesの最新レポート『Sustainability at the Crossroads』は、この問題に真正面から取り組んでいる。 年間27億件の画像検索データ、25市場・10万人超の回答者、60名を超えるビジュアル専門家の知見を分析した結果、気候変動の「イメージ」がどのように進化し、どこで停滞しているのかが見えてきた。 2000年代初頭、環境を象徴するビジュアルといえば、煙突、油流出、融ける氷河といった“災厄の絵”が定番だった。 そして今――私たちは「手のひらの芽」に囚われている。 2025年のいま、誰もが「気候」を語りたがる一方で、「何を見せるか」については沈黙している。 見せ方が、未来の想像力を形づくる これは、ただのデザイン論ではない。 ヨーロッパでは74%の人が「実際の進展を感じられるビジュアル」を求めている。 それでも業界は、記号的なイメージに頼り続けている。 現実味のない物語に、人々はもう共感しない。 では、どうすればいいのか。 Gettyのレポートは、ビジュアルストーリーテリングを再構築するための5つの戦略を提示している。それは、現実の行動を促す新しい“見せ方”のヒントでもある。 完璧よりも、本物を。 人々が求めているのは「無傷の理想」ではなく「誠実な現実」だ。 傷や汚れ、葛藤を含めた“ありのまま”のビジュアルこそ信頼を生む。 進歩とともに、そこにある苦労も見せよう。 PRの完成形ではなく、“いま進行中の挑戦”を讃えるのだ。 不安だけでなく、希望を。 気候危機は深刻だ。だが、恐怖だけでは人は動かない。 研究でも、「危機感」と「実現可能な行動」を組み合わせた方がはるかに効果的だと示されている。不安をあおるより、解決への道を照らそう。課題と、それに立ち向かう姿を並べて見せよう。 テクノロジーの“グリーンな力”を伝える。 AIによるリサイクルや発電窓など、グリーンテックはすでに現実の産業を変えつつある。それなのに、その映像はどこか無機質で遠い。 テクノロジーを“人の手”の中に取り戻そう。 ソーラーパネルを設置する人、廃棄物を分別する人、エネルギーを節約する人―― その動きこそが未来を映す。 「持続可能」は、我慢の物語ではない。 人々は、“犠牲”よりも“実現可能な変化”に心を動かされる。 日常の延長にある行動―コンポスト、再利用、節電。 そんな身近な実践をリアルに描くことが鍵だ。 完璧な理想ではなく、「自分にもできる」と思える行動を見せよう。 サステナビリティを“組み込む”。 優れたブランドは、環境への取り組みを「付け足し」ではなく「基盤」として考える。製品設計から顧客体験まで、静かに一貫して流れる価値観として。 そのビジュアルは、派手でも誇張でもない。 自信と誠実さを湛えたトーンこそが、長期的な信頼を築く。 私たちは、物語ではなく「可能性」を見せているか? 画像は飾りではない。 それは、私たちの思考と感情、そして行動を形づくる。 だが今のサステナビリティ・ビジュアルは、恐怖か、あるいは使い古された象徴で人を麻痺させている。 いまこそ、新しいビジュアル言語を。 理想ではなく、現実を。 無機質なアイコンではなく、生きた人間を。 “伝える”だけでなく、“招き入れる”表現を。 次に、あなたが「光に包まれた芽」や「夕日に映える風車」の画像を投稿しようとしたとき、自問してみよう。 ―この一枚は、誰かを動かすだろうか? それとも、ただ流されていくだけか? もう比喩は十分だ。 今こそ、「変化の現実」を見せよう。