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グリーンマーケティングとクリエイティブプロセスを 規律するEU指令 ―敵か、味方か?- by ルチア・ダル・ネグロ | NECSUS GREEN FILE

グリーンマーケティングとクリエイティブプロセスを 規律するEU指令 ―敵か、味方か?- by ルチア・ダル・ネグロ

  ルチア・ダル・ネグロ博士 De-LAB CEO(www.delab.it/en) >>> 2026年9月27日、「グリーン・トランジションに向けた消費者のエンパワーメントに関する指令」が、EU全27加盟国で全面的に適用される。ブリュッセルでは「ECGT」、または「EmpCo」と略称されるこの指令は、2024年2月に採択され、翌月に発効した。各加盟国には、2026年3月27日までに国内法へ反映することが求められていた。そして9月以降は、すでに流通している商品、パッケージ、広告キャンペーンにも猶予期間なく適用される。 これまでサステナビリティに関するメッセージを、表現のトーンや好みの問題として扱ってきた企業にとって、これは、その問題が「根拠」と「プロセス」の問題へと変わる瞬間である。 しかも、この指令は、個々の表示を一件ずつ審査するのではなく、一定の言葉やイメージの使用を類型的に禁止する仕組みを採っている。そのため、最も早く、そして最も大きな影響を受けるのは法務部門ではない。キャンペーンが実際に生み出される現場、すなわち企画書、ムードボード、ネーミング会議、クライアントへの最初のプレゼンテーションなのである。 本稿は、グリーンキャンペーンを最終的に承認する人だけでなく、そのキャンペーンが生まれる場に立ち会うすべての人に理解してもらいたい内容である。 何が変わるのか 意味を具体的に示さない「美辞麗句」は使えなくなる 「環境にやさしい」「グリーン」「持続可能な」「気候にやさしい」「環境に配慮した」といった言葉を、裏付けのない装飾的な形容詞として使うことは、もはや認められない。 欧州委員会のガイダンスでは、これらの言葉を適法に使用する二つの方法が示されている。 一つは、EUエコラベル、ドイツのブルーエンジェルや北欧諸国のノルディックスワンといった各国のISOタイプⅠ環境ラベル、または他のEU法令に基づく同等の最高水準の認証によって、その表示を裏付けることである。 もう一つは、その言葉が具体的に何を意味するのかを、当該表示が掲載されるウェブページ、パッケージ、画面上の目立つ場所に、明確に記載することである。 したがって、単に「気候にやさしいパッケージ」と表示することは違法となる。一方、「気候にやさしいパッケージ――製造に使用するエネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄っています」と表示するのであれば、一般的で曖昧な主張ではなくなり、違法とはならない。 つまり、禁止されるのは言葉そのものではない。認証も具体的説明も伴わない、曖昧な形容表現なのである。 カーボンオフセットに依拠した「カーボンニュートラル」は使えなくなる 企業自身のバリューチェーン内で実測された排出削減ではなく、購入したカーボンクレジットに依拠して、ある製品が気候への影響を中立化、削減、または改善したと表示することは、全面的に禁止される。 これは、「算定方法を開示すれば使用できる」という問題ではない。明確な禁止事項である。 一部分の環境性能を、製品や企業全体の評価へ広げることはできなくなる   箱がリサイクル可能だからといって、その製品全体が持続可能になるわけではない。また、環境負荷の低い製品ラインが一つあるからといって、企業全体が「地球環境に貢献している」と表示できるわけでもない。 今後は、すべての主張について、根拠が裏付けられる範囲を正確に限定し、その限定された内容を、消費者が表示を見るのと同じページまたは画面上で明示しなければならない。 実体のある制度に基づかない認証マークは使えなくなる 緑色の葉のアイコン、独自に作成した「エコ」マークなど、環境上の優位性を示唆するバッジ型の図柄は、ECGT上の「サステナビリティ・ラベル」に該当する。 このようなラベルは、公的機関が設定したもの、または真正な認証制度に基づくものでなければ違法となる。その認証制度には、競合他社にも開かれていること、内容が公表されていること、制度の運営主体から法的に独立した第三者による検証が行われていることが求められる。 企業が独自のラベルを所有、運営すること自体は禁止されていない。この点は欧州委員会のガイダンスでも明示されている。ただし、その背後にある認証制度が、これらの条件を満たしていなければならない。 どれほど善意に基づくものであっても、実体のある制度を伴わず、パッケージのためだけに作られたマークは認められない。 これら四つの規制の背後には、各加盟国の消費者保護当局が執行する、極めて高額な制裁金が存在する。 EU法では、各加盟国が国内法で定める制裁金の最低水準を年間売上高の4%としている。これは上限ではなく、あくまで最低基準である。さらに高い基準を設けている国もあり、例えばフランスでは、平均売上高の最大10%、または誤認を招く広告キャンペーンに要した費用の50%までの制裁金を科すことができる。 2026年9月27日の適用開始後に正式な移行期間はなく、欧州委員会のガイダンスは、既存の商品も対象となることを明記している。 一方、欧州委員会は、既存在庫をすべて再包装しなくても、ステッカーや販売時点での訂正情報によって適合させることが可能であるとも説明している。また、執行に際しては、企業が法令遵守のために合理的かつ相応な努力を行ったかどうかも考慮される。 だからこそ、早期に監査を開始する必要があるのであって、古いパッケージは当然に安全だと考えてよい理由にはならない。 影響が及ぶ場所――クリエイティブプロセスそのもの 一般的なコンプライアンス説明では見落とされがちだが、キャンペーンを事後的に審査する人ではなく、実際に生み出す人にとって最も重要なのが、この部分である。 従来、環境に関する表示は、制作工程の終盤で修正すればよい問題として扱われてきた。まずキャンペーンを作成し、法務部門がリスクの高い形容詞を穏当な表現に修正したうえで世に出す、というモデルである。 しかし、ECGTの下では、このモデルは完全に機能しなくなる。 根拠のない一般的な環境主張は、小さな文字で但し書きを加えれば法務部門が修正できるようなものではない。そもそも使用できないのである。 したがって、「この表現を使えるのか。使えるとすれば、どのように使うのか」という問いへの正確な答えは、ストーリーボードが完成した後ではなく、クリエイティブコンセプトを組み立てる前に明らかにしておかなければならない。 具体的には、グリーンキャンペーンの制作方法に、次の六つの変化が生じる。 1.企画は感情ではなく、根拠から始める 従来のクリエイティブ・ブリーフは、消費者に訴えたい感情から始まり、その後でコピーを裏付ける事実を探すことが多かった。 今後は、その順序を逆にしなければならない。まず、実際に存在する認証、ライフサイクルデータ、測定された削減数値を確認し、そのうえで、そこからどのような感情的価値を誠実に構築できるかを考えるのである。 サステナビリティ関連の案件を扱う広告会社では、最初の草案を作成した後ではなく、最初のワークショップを行う前に、認証書や監査済みの数値を提出するよう求めるケースが増えている。 2.サステナビリティと法務の担当者は、承認の場ではなく企画の場に参加する 最も迅速に対応している組織は、ESGや法務の担当者を制作工程の最後に立ちはだかる関門として扱うことをやめ、企画書を共同で作成するメンバーとして位置付けている。 開始時に「実際に何を、どの程度の精度で証明できるのか」について5分間話し合うだけで、制作開始から3週間後に法務部門が中心的な主張を認めず、キャンペーン全体を作り直すために費やしていた2週間を節約できる。 3.ビジュアル・アイデンティティも、見出しと同様に厳しく審査される 欧州委員会のガイダンスは、緑の葉、水滴など自然を連想させる視覚的要素についても、一般的な消費者が、暗黙の環境主張や信頼性を示すマークとして受け取る可能性があると注意を促している。 これは自動的に禁止されるものではなく、個別の判断を要する。しかし規制当局は、すでに相当広い範囲にこの考え方を適用している。 これまで純粋に美的な判断と考えられてきたアートディレクション上の選択、例えばカラーパレット、アイコン、データでは十分に裏付けられない物語を暗示する自然写真などにも、広告コピーとほぼ同程度の根拠が求められるようになっている。 ブランドが実際には獲得していない環境上の評価を、「グリーンな視覚表現」によって暗示するキャンペーンは、単に表現を慎むべき問題ではなく、現実的な法的リスクとなる。 4.名称は恒久的な主張となるため、事前確認が必要になる 「エコ」「ピュア」「ニュートラル」「クリーン」といった言葉を含む製品名、商品ライン名、企業名は、一度限りのキャンペーン素材ではない。 発売時の広告キャンペーンが忘れられた後も、すべてのパッケージ、小売事業者の商品一覧、検索結果に表示され続ける。 欧州委員会のガイダンスは、2025年11月に初めて公表され、この点を明確にするため2026年5月に改訂された。そこでは、環境に関する用語を含む商標や企業名も、広告コピーと同様に規制の対象となることが確認されている。 これまで、表示管理とはある程度独立してブランド部門が担当してきたネーミングについても、名称を決定する時点で、広告コピーと同様の根拠確認が必要になる。数年後に確認するのでは遅いのである。 5.大きく、温かく、一つの事実だけを示す広告から、限定的で具体的な広告へ移行する 「カーボンニュートラルなパッケージ」「持続可能な方法で製造」といったキャンペーンが機能してきたのは、その表現が広範で、誰に対しても安心感を与えられたからである。 しかし、そのような表現領域は、ほぼ失われつつある。 代わって求められるのは、より具体的で、数値に基づき、率直に言えば感情的な魅力を生み出すことが難しい表現である。 例えば、「地球にもっとやさしく」ではなく、「2019年を基準としてパッケージ由来の排出量を38%削減。独立した第三者が検証」といった表現である。 2026年の適用開始を見据えて登場している興味深い欧州のキャンペーンの中には、この変化に抵抗するのではなく、正確性や第三者検証それ自体を感情的な訴求要素として活用するものもある。 曖昧な善意ではなく、「信頼」そのものをクリエイティブの中心に据えているのである。 6.将来目標を示す主張には、当初からモニタリング計画が必要になる 「2040年までのネットゼロ達成に向けて順調に進んでいます」「2028年までにすべてのパッケージをリサイクル可能にします」といった表現は、単なる将来への抱負として使用することができなくなる。 その主張を行う時点で、独立した検証が可能なロードマップが必要である。規制当局から要求された後に、防御的に作成すればよいものではない。 したがって、企業の将来方針を中心に構成するキャンペーンでは、開始当初からメディア計画の中に検証計画を組み込まなければならない。後から付け加えるのでは遅いのである。 具体例 この変化を、パッケージメーカーが新しいボトルを宣伝する場合で考えてみよう。 従来であれば、次のようなコピーを使用できた。 「私たちの新しいボトルは、よりグリーンで、環境にやさしい素材を使用し、よりクリーンな地球を実現します。」 ECGTの下では、この文章のすべての要素がリスクとなる。 「よりグリーン」は、比較の基準が示されていない無限定の比較表現である。「環境にやさしい素材」は、認証もなく、同じパッケージ上で具体的に説明されてもいない一般的な環境主張である。そして、「よりクリーンな地球」は、一つの製品だけでは裏付けることのできない、範囲の限定されていない企業全体に関する主張である。 適法性を確保した表現は、より限定的で、文学的な美しさには欠けるかもしれない。しかし、はるかに強固な根拠を持つ。 「このボトルには再生PETを40%使用しています。2022年を基準として検証済みです。認証書はご要望に応じて提示します。」 これは、従来とは本質的に異なる種類のコピーであり、コピーライターに渡す企画書も本質的に異なるものとなる。 だからこそ、変革は法務審査の段階ではなく、企画立案の段階から始めなければならないのである。 もう一つ、企業広告やBtoB向けのグリーンキャンペーンで多用される、将来目標に関する例を挙げよう。 従来であれば、企業は次のように表現できた。 「私たちはネットゼロへの道を歩み、すべての人にとってより良い未来を築いています。」 ECGTの下では、この表現には二つの問題がある。 第一に、実施計画や中間目標を伴わない将来に関する主張である。第二に、「すべての人にとってより良い未来」は、指令が規制対象とする、範囲の限定されていない企業全体に関する主張そのものである。 より確かな根拠を持つ表現は、次のようになる。 「当社は2020年以降、Scope 1およびScope 2の排出量を22%削減しました。また、外部機関による検証を受けたロードマップに基づき、2027年および2030年の中間目標を公表しています。」 引用しやすい文章ではないかもしれない。しかし、ジャーナリスト、規制当局、競合他社が容易に論破できる文章でもない。 変わらないもの ECGTが何を禁止していないのかについても、明確に理解しておく必要がある。企業が取るべき対応は、環境情報の発信を控える「グリーンハッシング」ではないからである。 欧州の規制当局は、その目的が、根拠のない主張を排除することであり、真正なサステナビリティ・コミュニケーションを妨げることではないと明言している。 EUエコラベルを実際に取得している企業、監査済みの排出削減実績を持つ企業、検証済みのライフサイクル改善を実現している企業は、その事実を積極的に発信する権利を引き続き有している。 むしろ、競合企業がこれまで用いてきた、声は大きいものの曖昧な主張が使えなくなることで、正確な根拠を持つ企業が発信から得られる利益は一層大きくなるだろう。 ECGTによって最も大きな影響を受けるのは、控えめであっても十分な根拠を持つサステナビリティ・ストーリーを発信してきた企業ではない。 「グリーン」「環境にやさしい」といった言葉を、根拠のあるストーリーそのものの代わりとして長年使い続けてきた企業なのである。 発注側と制作側の双方で組織再編が進んでいる 同様の再編は、広告会社の内部だけでなく、クライアント企業側でも進んでいる。 従来、サステナビリティに関する表示を一人の法務担当者に一括して確認させていたマーケティング部門では、最初の企画段階からマーケティングチームに加わる専門担当者を置く動きが広がっている。 その担当者には、企業が実際に保有する認証、個々のライフサイクル数値が対象とする範囲と対象としない範囲、正当化できる比較表現の限界を詳細に把握することが求められる。 その人材の価値は、制作の最後に「できない」と判断することではない。審査を通過できない企画に制作費が投入される前に、実現可能なクリエイティブ領域を形成することにある。 理屈は単純である。 実現不可能な主張をクライアントへの提案前に企画から取り除くことができれば、制作開始から3週間後に法務部門が中心的なアイデアを認めず、キャンペーン全体を解体して作り直す必要はなくなる。 この能力を示すことのできる広告会社は、それを単なるリスク管理上の補足事項ではなく、新規顧客への提案における真の差別化要素として活用し始めている。 現在EU市場で販売していない企業にも重要である理由 ECGTは、本社所在地にかかわらず、EUの消費者に対してマーケティングを行うすべての企業に適用される。 日本、英国、米国からEUへ商品を出荷する企業も、ミラノに本社を置く企業とまったく同じ条件で規制の対象となる。 主要市場が欧州以外にある企業にとって、直接的な法的リスクは限定的かもしれない。しかし、この動きが示す実務上の意味は決して小さくない。 欧州の規制当局、裁判所、広告会社は、他の多くの市場が同じ課題に直面する数か月前から、「根拠を起点とするサステナビリティ・マーケティング」が日々のクリエイティブ実務に何を求めるのかについて、大規模な実証実験を行っている。 欧州のブランドが今後1年間で企画や承認のプロセスをどのように変えていくのかを観察することは、グローバルなサステナビリティ・マーケティング基準が次にどこへ向かうのかを知るうえで、極めて有益な先行事例となる。 かつて欧州のデータ保護規則が、法的には直接拘束されない市場の実務まで変えていったのと同じである。 五つの実践的ポイント 1.すでに世に出ている表現を監査する 何年も前に作成されたパッケージのコピー、製品名、常設のウェブコンテンツ、小売事業者の商品一覧も、制作したキャンペーンがすでに終了しているという理由で適用を免れることはない。 2026年9月以降、既存在庫を販売し切るまでの適用除外は認められない。 2.根拠の確認を、審査の最後ではなく企画の最初に移す スケジュールが大幅に遅れる最大の原因は、制作開始から3週間後になって、キャンペーンの中心的な主張を裏付けられないと判明することである。 最初のワークショップを行う前に、認証書や数値を確認すべきである。 3.ビジュアル・アイデンティティとネーミングを、コピーと同じ厳密さで扱う 文章による主張が認められない場合でも、緑色を基調としたデザインや、「エコ」を冠した製品名が安全な代替手段になるわけではない。 それ自体が環境主張と判断される可能性がある。 4.企画段階から部門横断型チームを編成する 2026年9月に向けて最もよく準備できている企業は、キャンペーンがほぼ完成してからではなく、企画書を作成する段階で、サステナビリティと法務の専門家をチームに加えている。 5.正確さを制約ではなく、クリエイティブ上の資産として活用する 競合企業が曖昧で耳当たりのよい表現を削除せざるを得なくなる中、範囲が限定され、独立した第三者によって検証され、具体的な数値に基づく主張を行えるブランドは、むしろ際立つことになる。 それは、従来の広告らしく聞こえないからこそ、消費者が実際に確認できる情報として強い存在感を持つのである。 結論 ECGTは、グリーンマーケティングそのものを禁止するものではない。 禁止するのは、根拠ではなく形容詞によって成り立ってきたグリーンマーケティングである。そして、このような手法は、過去20年間、業界の標準として静かに定着してきた。 それに代わるマーケティングは、より限定的で、より技術的であり、魅力的な文章に仕上げることは確かに難しい。 しかし、制作工程を「最後にコンプライアンスを確認する方式」から「最初に根拠を確認する企画方式」へと再構築する意思のある企業にとって、これはマーケティングの世界では珍しい機会でもある。 消費者が求めていると答えながら、実際にはほとんど提供されてこなかった、根拠があり、具体的で、信頼できるストーリーテリングに報いる規制改革なのである。

寄稿「ふたつのテーマ、しかし物語はひとつ」 ―10年間のキャンペーンデータが経営者に示す、社会的インパクトと環境インパクトをつなぐ「失われた接点」- by ルチア・ダル・ネグロ | NECSUS GREEN FILE

寄稿「ふたつのテーマ、しかし物語はひとつ」 ―10年間のキャンペーンデータが経営者に示す、社会的インパクトと環境インパクトをつなぐ「失われた接点」- by ルチア・ダル・ネグロ

今回から連載がスタートするルチア・ダル・ネグロさんの特別寄稿です。 De-LAB設立者のルチアさんは、ミラノ・カトリック大学で国際関係学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で地理学を学び、ミラノ・カトリック大学大学院にて制度・グローバル政策分野の博士号を取得。複数の非営利団体や民間企業での勤務を経て、認証B Corp™であるDe-LAB(www.delab.it/en)を設立し、CSR(企業の社会的責任)、持続可能な開発、国際開発協力に取り組んでいます。 イタリア学術会議(CNR)およびジャンジャコモ・フェルトリネッリ財団の元研究員。現在は、ミラノ・カトリック大学の非常勤教授、ジャンニーノ・バセッティ財団サウンディングボード委員を務めるほか、ESG報告を専門とするCEPAS/Bureau Veritas認証のChief Value Officer(最高価値責任者)として活動しています。 >>> 世界の広告データを10年にわたって分析すると、サステナビリティがどのように発信されてきたのか、その実像が明確に浮かび上がる。そして、それは多くの人が想像している姿とは異なる。   Kantarが紹介したWARCの「Effective 100」データセットは、2013年から2024年までの世界で最も効果的なマーケティング・キャンペーンを追跡したものである。それによれば、サステナビリティをテーマとするキャンペーンは、2013年の33件から2024年の41件へと着実に増加している。しかし、この増加を牽引しているのは環境に関するコミュニケーションではない。ほぼ全面的に社会的テーマによるものである。   労働、地域社会、包摂、公平性を扱うキャンペーンは、2013年の24件から2024年には34件へと増加し、調査対象となったすべての年において、全体の中で一貫して最大の割合を占めている。環境をテーマとするキャンペーンも期間を通じて存在するものの、その数は少なく、比較的横ばいである(2013年8件、2024年5件)。概して全体の中では2番目に大きな区分であり、最多になったことは一度もない。   しかし、最も懸念すべきなのは第3の区分、すなわち社会と環境の両方を同時に扱うキャンペーンである。12年間の全期間を通じ、この区分が年間3件を超えた年は一度もない。2024年には全41件中わずか2件で、全体の5%にも満たない。   これは、一時的な現象ではなく、10年以上にわたって続く構造的な傾向である。サステナビリティに関するコミュニケーション全体は約25%増加したにもかかわらず、社会的メッセージと環境的メッセージが交わる領域は、期間を通じてほぼ一貫して極めて小さいままである。 出典: Sustainability in the WARC Effective 100(Kantar, 2024により紹介)   これは、クリエイティブチームだけで処理すればよい小さな技術的問題ではない。経営戦略上の重要なシグナルである。企業は社会的インパクトを語ることに習熟し、環境インパクトについても相応に語れるようになった。しかし、その二つを一つの整合したサステナビリティの物語として語ることはほとんどなく、互いに無関係な別々のテーマであるかのように扱っている。   二つのテーマを切り離すリスク 環境と社会に関するコミュニケーションを分けることは、単なる中立的な簡略化ではない。そこには、サステナビリティ戦略を構築するすべての経営者が真剣に受け止めるべき、二つの具体的なリスクがある。   第1は、グリーンウォッシングとみなされるリスクである。企業の実績について環境面だけを伝えること、あるいは社会面だけを伝えることは、構造的な死角を生み出す。そして、その死角こそが、都合のよい情報だけを選択的に開示する余地となる。排出量削減だけを語るキャンペーンは、その構造上、労働条件、賃金の公平性、地域社会への影響について何も語らない。一方、社会貢献活動だけを語るキャンペーンは、資源利用や環境負荷について何も語らない。規制当局や監視団体が、潜在的なグリーンウォッシングの一形態として注視を強めているのは、まさにこの仕組みである。問題は、必ずしも虚偽の主張にあるのではない。事実であっても、何を語らないかを選ぶことによって、部分的な真実にしてしまうことにある。   第2は、戦略の断片化である。環境課題と社会課題を別々のチームが担当し、異なるKPIで測定し、異なるチャネルを通じて発信すれば、企業は「なぜ自社が存在するのか」「地域社会全体にどのような価値を生み出すのか」を、一つの整合した物語として語る力を失う。ここでいう地域社会全体とは、人間を取り巻く環境と自然環境の総体にほかならない。この断片化は社内にも現れる。サステナビリティ戦略は、調達、人事、製品設計、マーケティングのすべてを貫く一つの事業運営原理ではなく、相互につながりのない施策の寄せ集めになってしまう。   この二つのリスクの背後には、さらに深い構造的な問題がある。二つのテーマを切り離す習慣そのものが、単独のコミュニケーション上の選択ではなく、経営者の思考様式の表れなのである。   サステナビリティは、企業の歴史の大半において、コンプライアンス機能として扱われてきた。それは、プロジェクト群ごとに整理されたチェック項目の集合であり、それぞれに独自の認証、監査サイクル、担当責任者が置かれてきた。これはシステム思考ではなく、管理事務的な論理である。つまり、企業はサステナビリティを、事業の成長そのものを設計するための統一的な視点としてではなく、税務申告や安全点検と同様に、一つずつ満たすべき個別の義務の連なりとして管理してきたのである。   認証制度も、数十年にわたってこの傾向を強めてきた。認証制度は、領域ごとに検証しやすい、個別かつ監査可能な基準を中心に構築されているからである。しかし、認証を取得していることと、真にサステナブルであることは同じではない。   サステナビリティは、定義上、領域横断的である ESGコミュニケーションの日常業務の中で見失われがちな点を、改めて確認しておきたい。サステナビリティは、もともと「環境」の同義語として生まれた概念ではない。ブルントラント報告書による当初の定義以来、サステナビリティという概念は、本質的に領域横断的なものとして構想されてきた。それは、生態系の限界と社会的公正、そして両者を仲介する経済・制度システムを結び付ける概念である。   したがって、環境または社会の一方の柱だけを扱うキャンペーン、方針、企業施策は、単に「焦点を絞ったサステナビリティ・コミュニケーション」なのではない。厳密に言えば、不完全なコミュニケーションである。サステナビリティの定義そのものが、環境と社会の二つの側面を、互いに付け加えても付け加えなくてもよい任意の要素として扱うことを許していない。もちろん、そのキャンペーンを支えるプロジェクト自体の設計が不十分であれば、話は別である。   社会面と環境面を、どのように一体化するか 問題が断片化にあるのなら、対応すべきは、サステナビリティ・マーケティングとコミュニケーションに対する全体的なアプローチの設計である。 キャンペーンを適切に設計するためには、次の問いが役立つ。   ・社会面と環境面の両方を同時に実証できる、一つのプロジェクトまたは取組は何か。   ・このキャンペーンでは何を伝えていないのか。そして、それはなぜか。   ・誰が恩恵を受け、ほかに誰が影響を受けるのか。   ・クリエイティブ・ブリーフから「グリーン」(または「ソーシャル」)という言葉を削除しても、キャンペーン全体の論理は成立するか。   ・私たちが発信しているのは、一つの成果なのか、それとも一つのモデルなのか。   これらの問いへの答えが部分的なものにとどまる場合、あるいは4番目の問いに「はい」と答えられる場合、二つのテーマは真に統合されていない。そのとき企業にとって、評判を損なうリスクは現実のものとなり得る。   経営者とクリエイターへの示唆 この断片化を避けることは、最終的にはクリエイティブ上の選択ではなく、組織上の選択である。その出発点は、キャンペーンを設計する場に誰が参加するかにある。企画が完成した後に外部チェックとして専門知識を加えるのではなく、サステナビリティの知見を備えた戦略担当者を、すべてのクリエイティブチームに加えることが有効である。   次に重要なのは、キャンペーン公開前に誰が意見を述べられるかである。メッセージを検証する際には、ターゲットとなる消費者だけでなく、キャンペーンが取りこぼすおそれのある立場を代表するステークホルダーにも参加してもらう必要がある。一方に環境の専門家やアドボカシー団体、もう一方に労働者や地域社会の代表者を置くといった方法である。そうすれば、語られていない論点は、公開後に社会や競合他社から批判として突き付けられる前に、レビューの場で問いとして表面化する。   さらに、評価すべきは単なる成果物ではなく、統合そのものである。キャンペーンの成功を評価するKPIが、リーチ数や環境メッセージの想起率だけを測るのであれば、メッセージを分断する誘因は残り続ける。複合的な指標を採用することが、その有効な解決策となり得る。   サステナビリティ戦略を構築し、あるいは見直そうとする経営者にとって、実務上の示唆は明快である。「このキャンペーンでは、どのサステナビリティ・テーマを前面に出すべきか」と問う前に、こう問うべきである。   「社会面と環境面の双方を内包する、サステナビリティのプロジェクト、取組、またはプログラムとは何か」   この問いに答えられる企業は、消費者や市民社会からの信頼を獲得できるだけでなく、急速に統合的な対応を不可欠なものとしつつある規制環境、そして日々の現実に対するレジリエンスも高めることができる。  

コラム新執筆者にルチア・ダル・ネグロさん就任! | NECSUS GREEN FILE

コラム新執筆者にルチア・ダル・ネグロさん就任!

トーマス・コルスター、アンティ・イソカンガスに次ぐ、NECSUS GREEN FILEの新たなコラムニストとして、ルチア・ダル・ネグロ(Lucia dal Negro) さんが登場します。  ルチア・ダル・ネグロは、イタリア・ミラノを拠点とするサステナビリティ・コンサルタント。ソーシャルイノベーション企業「De-LAB」の共同創業者兼CEOとして企業や行政を支援するほか、TEDx登壇や大学での教育、国連関連プロジェクトにも携わるなど、欧州の第一線で活躍する実践派です。   どうぞご期待ください!

マーケティングの再定義:主役の座を人々へ by トーマス・コルスター | NECSUS GREEN FILE

マーケティングの再定義:主役の座を人々へ by トーマス・コルスター

長年にわたり、マーケターはまるで王のように振る舞ってきた。 進むべき道を決め、メッセージを統制し、媒体を買い、ファネルを最適化し、人々が黙って助手席に座ることを期待してきたのである。 しかし、その時代は終わった。 いま人々は、参加し、形づくり、リミックスし、影響を与え、創り出し、貢献したいと考えている。 にもかかわらず、多くのマーケティングはいまだに人々を「才能」ではなく「ターゲット」として扱っている。 そしてそれこそが、ブランドが見逃している最大の成長機会なのかもしれない。 拙著『The Hero Trap』で述べた通り、ブランドは「物語のヒーロー」であろうとすることに執着してきた。 地球を救い、世界を変え、自らについて語るキャンペーンを次々と打ち出す。 だが、人々は朝起きて「ブランドの目的達成を手伝いたい」とは思わない。 自分自身の人生をより良くしたいと考えているのである。 だからこそ今、見直すべきは単なるメッセージではなく、マーケティング全体である。 産業時代のマーケティングからの転換 従来のマーケティングは、産業時代に設計されたものである。 ・製品は企業がつくる ・価格は企業が決める ・流通は企業が管理する ・プロモーションは企業が押し出す しかしプラットフォーム時代において、人々はもはや受動的ではない。 TikTokでオーディエンスを築き、Etsyで副業を行い、商品を公開レビューし、あらゆるものをカスタマイズし、ブランドに対して影響力を持つことを当然と考えている。 一方で、エンゲージメントは低下し、信頼は脆弱になり、広告費は上昇し、差別化はますます困難になっている。 多くのブランドはいまだに問い続けている。 「どうすれば人にもっと売れるか」と。 しかし本来問うべきは、 「どうすれば人とともに、より多くを創れるか」である。 人を中心に据えた「ホイール」型マーケティング 従来の4Pに代わり、「ホイール(輪)」として再構成する。 そこでは人々が、すべての要素において主体的に関与する。 Product(製品)— 共創する 最も優れたブランドは、もはや孤立してイノベーションを起こさない。 LEGOは「Ideas」により顧客をデザイナーに変え、GoProはユーザーをコンテンツの担い手にした。 人々は単なる製品ではなく、「関与と所有」を求めている。 Promotion(プロモーション)— 人が広げる 旧来:ブランドが語り、顧客が聞く 現在:ブランドが始め、人が増幅する Nikeはランナー同士が進捗を共有し、互いに励まし合う場を築いた。 コミュニケーションは広告ではなく「参加」へと変わったのである。 いま最も強力なメディアは、「関与していると感じている一人の人」である。 Place(流通)— コミュニティをつくる かつて流通とは棚とウェブサイトを意味した。 いまは人々が集う「場」そのものを指す。 Sephoraは小売とコミュニティ、クリエイター、学び、帰属感を融合させた。 チャネルだけで考えるブランドは、現代の「感情の地理」を見落としている。 Price(価格)— 行動を設計する 価格は単なる支払いではなく、行動設計になり得る。 Discoveryは健康的な生活を報酬と価格で後押しし、 顧客の成長と企業の成功を一致させた。 無限の値引きよりも、はるかに賢い交換モデルである。 人が成長すれば、ブランドも成長する 人は自ら関与したものに、より高い価値を見出す。 IKEAの本棚を自分で組み立てたとき、それは単なる家具ではなく「自分のもの」になるのと同じである。 ブランドも同様である。 人が関与し、創り、影響を与えたとき、その価値は飛躍的に高まる。 だからエンゲージメントは簡単に「買う」ことはできない。 それは獲得するものだ。 人は関与し、所有感を持ち、「自分が関わった」と言えるときに時間と注意を注ぐ。 ロイヤルティも変わる。 共創し、コミュニティに関わり、ストーリーを広げた顧客は、もはや消費者ではない。参加者である。 そして参加は、単なる取引よりもはるかに代替されにくい。 成長の仕組みも変わる。 参加者はやがて支持者となり、支持者は新たな人々を呼び込み、 さらに創り手へと進化する。 貢献はやがて「流通」そのものになる。 変革の経済が到来している。 次の時代は「変容」を軸にした経済である。 人々をより健康にし、より有能にし、より創造的にし、より自信を持たせ、よりつながりを生む。 優れたブランドはすでに理解している。 ブランドを信じさせるのではなく、人が自分自身を信じられるようにするのだ。 そこにこそ「存在意義」がある。 Nikeは靴を売っているのではない。進歩を売っている。 Duolingoはレッスンではなく、自信と能力を売っている。 Airbnbは部屋ではなく、帰属を売っている。 いまやブランドが自分のやり方を押し付けることは、むしろ侮辱に感じられる。 どんな関係にも言えるように、「木は他の木の影では育たない」。 最も速く成長するブランドとは、自ら運転することをやめ、人々にハンドルを委ねる勇気を持つブランドである。

「マーケティング」から「共に創る」へ by トーマス・コルスター | NECSUS GREEN FILE

「マーケティング」から「共に創る」へ by トーマス・コルスター

サステナ経営の伝道師 トーマス・コルスターによる好評コラムです。 人々に「マーケティングする」から「ともに創る」へ 私が『Goodvertising』(Thames & Hudson、2012年)を書いた頃、ソーシャルメディアはまだ黎明期であった。私は非常に楽観的であった。あるいは、少しナイーブであったのかもしれない。当時、初めて市民が公の場で声を持つようになったのである。 一つのツイートがCEOに疑問を投げかけることもできる。 Facebookのグループが多国籍企業に圧力をかけることもできる。 私は、いわゆる「ソファ・アクティビスト(couch activist)」――家にいながら企業の不誠実な行動を指摘する市民――が、ブランドを正直に保つ時代が到来するのではないかと考えていた。一つ一つの投稿が企業行動を監視する時代である。 しかし興味深いことが起きた。ブランドのほうが人々よりも速く適応したのである。確かに人々は声を上げる手段を得た。しかし企業との力の不均衡そのものは、ほとんど変わらなかった。情報の「ノイズ」は増えたが、必ずしも説明責任が強化されたわけではなかった。 ブランドの物語から「集合的な物語」へ 現在、私たちはまったく異なる転換点に立っている。 生成AIは、一般の人々――ここでは「市民」と呼ぶ――に、これまでにない規模の分析力・創造力・組織力を与えている。 市民は企業のサステナビリティレポートを数秒で分析できる。 競合企業の主張と比較することも可能である。 企業が制作した華やかなブランド映像がメディア露出のピークを迎える前に、それに対抗するキャンペーンを生成し、コミュニティを動員することさえできる。 それも情熱と創造性、そして圧倒的なスピードをもってである。 これは単なる「怒りの増幅」ではない。 集合的なナラティブ(物語)の主導権が市民側へ移りつつあるということである。 そしてそれは、ブランドのルールそのものを変える。 ターゲティングから、人々を「運転席」に 長年、ブランドはナラティブの主導権に依存してきた。 企業はしばしば、私が「ヒーロートラップ」と呼ぶ状態に陥る。 すなわちブランド自身を「変革の主人公」として位置づける傾向である。 企業はこう語る。 「私たちはムーブメントを牽引している」 「私たちは地球を救っている」 「私たちはコミュニティをエンパワーしている」 確かに印象的な表現である。 しかしそこではブランドが物語の中心に置かれている。 人々は拍手することを求められ、場合によっては商品を購入することも求められる。 しかしそれ以上の役割を与えられることは稀であった。 今日の環境において必要なのは、「人をターゲットにする」マーケティングから「人の参加を可能にする」仕組みへの創造的リセットである。 私はこれを「トランスフォーマティブ・プラットフォーム(Transformative Platform)」と呼んでいる。 これはゲームに似ている。 ルールは存在する。 方向性も存在する。 しかし魔法はルールブックから生まれるのではない。 プレイヤーから生まれるのである。 人々の選択から。 創造性から。 試行錯誤から。 そして人々が与えられた空間を思いがけない方法で使うことからである。 参加型ブランドの例 たとえばアウトドアブランド REI の「#OptOutside」イニシアティブである。 ブラックフライデーに店舗を閉め、人々に買い物ではなく自然を楽しむことを促した。 これは単なるキャンペーンではない。 「私たちの価値観を称賛してほしい」と言ったのではなく、「あなたも参加してほしい」と呼びかけたのである。 また American Express の「Small Business Saturday」も同様である。 これはクレジットカード機能を宣伝するものではなかった。 地域の起業家に消費を向けるコミュニティのための継続的な機会を創り出したのである。 これらの事例には共通点がある。 それはメッセージ主導ではなく、参加主導であること。 ブランドが物語を支配しようとするのではなく、人々がその物語に入る条件を設計しているのである。 テクノロジーの時代こそ、人間中心へ テクノロジーが強力になるほど、 ブランドはより人間的である必要がある。 それは柔らかくなることでも感傷的になることでもない。 真に人間中心であることである。 ブランドは主役の座を手放し、その代わりに人々の成長を支えるインフラを設計する必要がある。 健康、コミュニティ、能力、社会への貢献、、、こうした領域で、個人の成長を可能にする仕組みである。 AIは今後も集合的行動のコストを下げ続ける。 従業員、顧客、市民は、企業を分析し、比較し、動員するツールを手にする。 かつて企業側に有利であった情報の非対称性は急速に崩れている。 その代わりに新たな期待が生まれている。 もし私をあなたのブランドの物語に招き入れるのであれば、その物語の中で行動できる力も与えるべきである。 これから成功するブランド これから成功するブランドは、最も大きな「パーパス」を語るブランドではない。 成功するのは変革のための信頼できるプラットフォームを構築するブランドである。 そこでは商業的成功と人間の進歩が互いに強化し合う。 15年前、私は人々がツイートで企業に声を返す時代を想像していた。 しかし今日、人々はプロフェッショナルなマーケティング機能を手元に持った状態で声を上げる。 もはや問題は、ブランドが挑戦されるかどうかではない。 唯一持続可能な立場は、人々が前進することを支えることである。 トランスフォーマティブ・プラットフォームを構築する8つの特徴 Transformative 明確で共有された変革目標を設定する Guided 方向性やガイドラインを示す Motivational 行動を促す設計にする Creative 創造性の余地を残す Replicable 再現可能な仕組みにする Common 誰にでも開かれたものにする Accessible ツールや仕組みを容易に利用できるようにする Relevant ブランドの価値と関連付ける

グリーン・ハッシングの本当のコスト ― 効果測定データが明らかにするもの ― by トーマス・コルスター | NECSUS GREEN FILE

グリーン・ハッシングの本当のコスト ― 効果測定データが明らかにするもの ― by トーマス・コルスター

サステナ経営の伝道師 トーマス・コルスターによる好評コラムです。 2026年、サステナビリティがうまく機能していない理由は、企業が行動していないからではない。 あまりにも多くの企業が「語ること」をやめてしまったからである。 取締役会では、どこも同じ論理が共有されている。 「やるべきことは静かにやろう。発言すれば反発を招く」。 米国では、サステナビリティや多様性に言及しただけで、大統領から「ウォーク(意識高い系)」と名指しで批判されることすらある。 何も言わなければ、標的になることは避けられる。 この現象には名前がある。 グリーン・ハッシング(Green Hushing)だ。 だが、経営者の多くがあえて向き合おうとしない、不都合な問いがある。 沈黙は、実際にはどれほどのコストを生んでいるのか。 この問いに答えるため、私たちは最新の効果測定データを見ていく必要がある。 分析対象は2025年に評価された取り組みで、その多くは2024年に企画・実行されたキャンペーンだ。 確かにタイムラグはある。だが、その距離があるからこそ、恐怖や政治的ノイズが取り払われ、より有益なもの――パターン――が見えてくる。 そして、2024年のパターンは明確だった。 サステナビリティが後退すると予測されていたにもかかわらず、2024年は、サステナビリティを軸にしたブランド活動が、過去最高の効果を上げた年となった。 企業が沈黙すると見られていたその年に、明確で信頼性のある形で発信したブランドほど、高い成果を上げていたのである。 グリーン・ハッシングは「慎重さ」として語られがちだ。 しかし実際には、それは戦略的な選択であり、しかも中立的な選択ではない。 データが示すのはこうだ。 サステナビリティをブランドストーリーの中心に据えた企業は、不利益を被るどころか、話題を避けた企業を上回る成果を出していた。 最大のリスクは、批判や監視ではない。距離を置いてしまうこと(irrelevance)である。 価値観を軸にしたコミュニケーションから退いたブランドは、消えるわけではない。「どれでも同じ存在」になる。 選択肢が溢れる市場において、それは反発よりもはるかに大きな脅威だ。 効果を生むサステナビリティとは何か 二つの重要な示唆が浮かび上がる。 第一に、社会的サステナビリティは、環境メッセージ単独よりも高い効果を示した。尊厳、包摂、ウェルビーイング、自信、公正さといったテーマに焦点を当てたキャンペーンは、環境課題のみを扱うものよりも頻繁に見られ、かつ効果的だった。 これは気候変動対策を否定するものではない。 人々はまず「自分の生きた経験」を通じてサステナビリティと向き合う、という事実を思い出させるものだ。 抽象的な問題は行動を変えにくい。人の物語こそが、人を動かす。 第二に、短期的なアピールよりも、長期的なコミットメントが効果を生む。 最も成果を上げた取り組みは、場当たり的なキャンペーンや単発の声明ではなかった。数年、時には数十年にわたって同じテーマに向き合い続けてきた活動だった。 同じ課題に継続して取り組むことで、ブランドは信頼、感情的なつながり、そして累積的なインパクトを築いていった。 サステナビリティは、戦略に組み込まれたときに機能する。 都合のよいときに後付けされるものではない。 なぜこれが2026年に重要なのか 今日のサステナビリティを巡る議論は、「恐れ」によって形づくられている。 規制への恐れ、訴訟への恐れ、誤解されることへの恐れ、政治的な争点にされることへの恐れ。 だが、恐れは最悪の戦略である。 データが示しているのは、サステナビリティについて語るのをやめても、信頼は守られないという事実だ。むしろ、静かに侵食されていく。 関連性(レレバンス)は、沈黙ではなく、明確さと一貫性によって築かれる。 長期的思考を誇る文化や組織にとって、これは特に重要だ。 人を中心に据えた、忍耐強いサステナビリティの取り組みは、効果と強く結びついている――ただし、それが可視化されている場合に限る。 良いことをして、何も語らない。 それは美徳に見えるかもしれない。 だが、価値を生むことはほとんどない。 サステナビリティ担当者が直視すべき、三つの厳しい真実 1. グリーン・ハッシングにはコストがある 沈黙は短期的な不快感を避けるかもしれないが、差別化と長期的なブランド力を弱める。データは明確だ。慎重さよりも明瞭さが成果を生む。 2. 問題よりも、人が先にある サステナビリティは、人間の尊厳や日常生活に語りかけたときに共鳴する。 専門用語や遠い目標の背後に隠れたときではない。 3. コミットメントそのものがメッセージである 信頼は、完璧に言葉を選んだ声明ではなく、時間をかけた一貫性によって築かれる。継続は、本気度の証だ。 最後に 2024年から得られる教訓は、過去の話ではない。未来を予測するものだ。 サステナビリティが静まり返ると予想された年に、効果は「沈黙を拒んだブランド」に報酬を与えた。 グリーン・ハッシングは自己防衛のように感じられるかもしれない。 しかし実際には、それは関連性からの静かな撤退である。 社会への貢献によってブランドが評価される時代において、 もはや最も危険なのは「間違ったことを言う」ことではないのかもしれない。 何も言わないことこそが、最大のリスクになりつつある。

COP30で緊急提言! -分断は、立て直せるのか- by Thomas Kolster | NECSUS GREEN FILE

COP30で緊急提言! -分断は、立て直せるのか- by Thomas Kolster

  COP30(2025年11月10日から21日までブラジルのベレンで開催の「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(Conference of the Parties 30)」)を受け、NECSUS Green Fileで好評のサステナビジネス伝道師トーマス・コルスター氏のコラム緊急提言です。   気候運動はなぜ停滞したのか ― そしてどう立て直すのか   “道徳的優越”が招いた分断   私たちは地球を救おうとした。だが、結果的に世界を分断してしまった。 ブラジルでCOP30が開かれる今、かつての楽観は消えつつある。   「簡単なサステナビリティ」の時代は終わった。 企業は声を大きくするどころか、静かになっている。気候疲れは現実だ。予算は縮小し、成長は鈍化し、「サステナビリティ」という言葉の輝きも失われている。世界中の会議室で問いはこう変わった──     「何が正しいか?」から「リターンはあるのか?」へ。   それは冷笑ではなく、生存戦略だ。   今やサステナビリティは、倫理的な正しさだけでなく、測定可能な成果を示さなければならない。「良いことを掲げる時代」から「成果を出す良いことをする時代」へと変わりつつある。そしてこの転換には、私たちがなぜ大多数を巻き込めなかったのか──企業・社会・政治のすべてにおいて──正直に向き合う必要がある。   “純粋さ”が招いた失敗 長年、私たちは企業に「もっと速く、もっとグリーンに、もっと高く」と求めてきた。航空会社や自動車メーカーの仕事を拒否する“倫理的アライアンス”を作りながら、自分たちは平然と飛行機に乗っていた。   矛盾を抱えたまま企業に変革を迫っていたのだ。   家族をトルコ旅行に連れていくシングルマザーに「飛行機を諦めろ」と本気で言えるだろうか。航空券の値上げは富裕層ではなく、彼女のような人々を直撃する。   私たちは先頭に立って改革を進めようとしたが、しばしば 「非難」という形でリードしてしまった。   サステナビリティを“参加の連帯”ではなく、“純粋さの競争”に変えてしまった。 「十分に良い」は、いつも「不十分」とされた。 企業や人が理想に届かないと、私たちは声高に非難した。   だが、指さしは変革の燃料にはならない──むしろ凍らせる。   多くのブランドが静かに後退している。不完全な取り組みが炎上することを恐れ、第一歩すら踏み出せなくなっている。   市民レベルでも同じだ。 常に「もっとリサイクルしろ」「飛行機に乗るな」「消費するな」。   “常に不十分だ”という圧力。   大半の人も、企業も、自分を小さく感じさせる運動には参加しない。   広がってしまった分断 その結果、サステナビリティ文化は二つに割れた。   片方には、B Corp、活動家、熱心な信奉者たち。   もう片方には、傍観者のように見える“サイレントマジョリティ”──あるいは反発しはじめた人々。   炭鉱労働者や農家にとっては、サステナビリティは“エリートの議題”に見えてしまう。 彼らは土地とともに生き、私たちに食を届ける人々だ。 敵ではなく、むしろ同盟者であるべきではないか?   共感は、非難よりはるかに強い。   正義よりも“共感”が動かす 市場を本当に動かしている企業は、説教しない。   彼らはつながりを作る。   行動を決めるのは倫理ではなく、感情だと理解している。   朝食大手に挑むHollie’sは、「砂糖を減らそう」というシンプルで前向きな約束で市場を揺らしている。   オートミルクのOatlyは、植物ベースの選択を“犠牲”ではなく、文化的なウィンクにした。「簡単だよ、やってみよう」と。   これらのブランドが成功する理由は、 完璧だからではない。共感できるからだ。   善い行動を「気持ちよく」「お得に」感じさせている。 罪悪感で人を動かすのではなく、招き入れているのだ。   未来はそこにある。   説教ではなく、ストーリー。 道徳的優越ではなく、市場での関連性。   ビジネスは“価値”で動く 価値観は大事だ。だが、価値創造も同じくらい大事だ。 企業がサステナビリティへ投資するには、それが成長、ロイヤルティ、レジリエンスを生むと示さなければならない。   「パーパス」は後光ではなく、 商業的な力を証明する必要がある。   倫理だけでは、もはや企業を誘惑できない。 必要なのは、「良いことが良いビジネスになる」という確かな報酬だ。   証拠のないパーパスでは不十分。   責めるのではなく、伴走する では、ここからどこへ向かうべきか?   ✔ 純粋さではなく、参加を増やす。 進歩は大きなジャンプではなく、小さな一歩の積み重ねで生まれる。 「十分にグリーンじゃない」と嘲笑すれば、その第一歩すら止まる。 不完全でも前進を称えよう。   ✔ 非難ではなく、支援に変える。 企業を変えたいなら、罪悪感ではなく“エビデンス”で導くべきだ。 高みからの説教ではなく、実践的な解決策を。   ✔ もっと“人間的”に。 サステナビリティは生活とつながった時に力を持つ。 「より良い朝食」「きれいな空気」「安全な未来」── 人々が“自分ごと”として感じられるように。   正直さと包摂への呼びかけ COP30の議論に、世界はもう高尚な約束だけを求めていない。   必要なのは証拠だ。   結局、それは「より良い暮らし」についての話なのだから。 私たちは“いじめ”をやめ、“構築”を始めなければならない。 美しい言葉の影に隠れるのではなく、その商業的な根拠を示すべきだ。 知識があるのなら、他者を閉め出すためではなく、持ち上げるために使うべきだ。   サステナビリティは“道徳的に優れている”ことで勝つのではない。 商業的にも、文化的にも、人間的にも、“魅力的”であることで勝つのだ。

ーまだ「サステナビリティは流行」だと思っている?ー by Thomas Kolster | NECSUS GREEN FILE

ーまだ「サステナビリティは流行」だと思っている?ー by Thomas Kolster

サステナビリティは、オーツミルクやフィジェットスピナー*のように、一過性のブームなのだろうか。 もし2025年にも同じ問いを投げかけているとしたら、すでに時代の文脈を見誤っているかもしれない。 私はWARCと協働し、2014年から2024年までの10年間にわたる「WARC Effective 100」のデータを分析した。10年分のデータが、まったく違う物語を語っている。これは、世界中の広告賞の中でもっとも効果的と評価されたキャンペーンを指標化したものだ。 そのランキングを精査し、社会的あるいは環境的メッセージを含むキャンペーンを抽出したところ――結果は明快だった。 全体の約3分の1が、そうしたテーマを扱っていた。年ごとの割合は2015年の19%から、2021年の39%まで変動していたが、注目すべきはその「波」ではなく、「継続的な存在感」そのものだった。 「審査員が“いい話”に弱いだけでは?」 そう思う人もいるだろう。しかし10年にわたって持続的に評価されてきた事実は、より深い構造変化を示している。 これは気まぐれなマーケティングの潮流ではない。広告産業のDNAが、根本から書き換わりつつあるのだ。 サステナビリティ、多様性、インクルージョン。 それらはもはや“クリエイティブな飾り”ではない。ブランド戦略の中核を形づくる要素である。 化石燃料から再生可能エネルギーへの移行が世界規模で進むように、広告もまた独自の進化を遂げている。 かつては急進的に見えたDoveの「Real Beauty」やBenettonの挑発的な広告が、いまではメインストリームの象徴になっている。 感情は機能を超える――結果もそれを裏づける ブランド構築において、感情に訴えるキャンペーンが機能訴求型を凌駕する――これは昔から知られてきた真理だ。そしてWARCの分析をはじめ、業界のあらゆる調査がそれを繰り返し確認している。 今日、もっとも効果的な広告は、製品機能ではなく「価値・アイデンティティ・目的」を語るものだ。 たとえば、Alwaysの「#LikeAGirl」キャンペーン。 羽の形状や吸収力を説明する代わりに、文化的な侮蔑表現をエンパワーメントのメッセージに変えた。 それは単に商品を売るだけでなく、社会の会話を変え、人々の感情とつながった。 一方で、技術的な製品デモを思い出せるだろうか? どちらが記憶に残り、共有され、何年も後に語り継がれるだろう? これは「タイムマシン」で戻れる瞬間ではない 今回の分析結果は、まさに転換点で明らかになった。 世界中――特に内向きになりつつあるアメリカ――では、社会的・環境的な進歩を巻き戻そうとする動きが見られる。 だが、データは別の物語を語っている。 消費者の意識は後退していない。 人々は依然として、自分たちの生活を形づくる課題に対して「企業が先導すること」を期待しているのだ。 そして、その多くはサステナビリティそのものに関わる。 食料品の価格、エネルギー費、交通の脱炭素、水質。 企業が「2035年までにネットゼロ」といった曖昧で遠い未来を語っても、人々の心には届かない。 いま、目に見える形で行動するブランドこそが共感を得ている。 今月初め、英ガーディアン紙が「89%プロジェクト」を立ち上げた。 これは、世界の8~9割の人々が気候対策の強化を支持しているという調査結果を紹介するものだ。 つまり、これは一部の過激派の声ではなく、“多数派の意思”である。 WARCで評価されたSK-IIやDoveなどのブランドは、こうした社会意識と歩調を合わせるだけでなく、長期的なインパクトを生み出している。 長期思考が勝利する 政治の風向きがファッショントレンドより速く変わる時代に、 マーケターは“今っぽさ”を追いかけたくなるかもしれない。 だが、持続するブランド価値は「文化のポケモン狩り」では築けない。 一貫性、明快さ、そして勇気によってこそ培われる。 サステナビリティはギミックではない。 それは、もっとも効果的なブランドが未来を定義するためのレンズである。 ――これは流行ではない。本物の「持続力」そのものである。 *ボールベアリングを利用した玩具。ハンドスピナー。 次回もどうぞお楽しみに。

まだ“芽生え”の写真でサステナビリティを語ってる? ーそろそろ、ビジュアルをアップデートしようー by Thomas Kolster | NECSUS GREEN FILE

まだ“芽生え”の写真でサステナビリティを語ってる? ーそろそろ、ビジュアルをアップデートしようー by Thomas Kolster

もしサステナビリティがマッチングアプリのTinderにプロフィールを作るとしたら、そこに並ぶのはいつもの三点セットだろう。 風力発電のタービン、ホッキョクグマ、そして―もちろん―しっとりした手に包まれた小さな芽。 ……左にスワイプ。一択だ。 想像力はどこへ行った? よりよい世界を「思い描けない」まま、どうやってそれを「創り出す」ことができるだろうか。 この20年、私たちのサステナビリティのビジュアル表現は、悲劇的な破滅か、夢のような抽象表現に偏ってきた。 だが、そのどちらも、もはや人の心を動かせていない。 Getty Imagesの最新レポート『Sustainability at the Crossroads』は、この問題に真正面から取り組んでいる。 年間27億件の画像検索データ、25市場・10万人超の回答者、60名を超えるビジュアル専門家の知見を分析した結果、気候変動の「イメージ」がどのように進化し、どこで停滞しているのかが見えてきた。 2000年代初頭、環境を象徴するビジュアルといえば、煙突、油流出、融ける氷河といった“災厄の絵”が定番だった。 そして今――私たちは「手のひらの芽」に囚われている。 2025年のいま、誰もが「気候」を語りたがる一方で、「何を見せるか」については沈黙している。 見せ方が、未来の想像力を形づくる これは、ただのデザイン論ではない。 ヨーロッパでは74%の人が「実際の進展を感じられるビジュアル」を求めている。 それでも業界は、記号的なイメージに頼り続けている。 現実味のない物語に、人々はもう共感しない。 では、どうすればいいのか。 Gettyのレポートは、ビジュアルストーリーテリングを再構築するための5つの戦略を提示している。それは、現実の行動を促す新しい“見せ方”のヒントでもある。 完璧よりも、本物を。 人々が求めているのは「無傷の理想」ではなく「誠実な現実」だ。 傷や汚れ、葛藤を含めた“ありのまま”のビジュアルこそ信頼を生む。 進歩とともに、そこにある苦労も見せよう。 PRの完成形ではなく、“いま進行中の挑戦”を讃えるのだ。 不安だけでなく、希望を。 気候危機は深刻だ。だが、恐怖だけでは人は動かない。 研究でも、「危機感」と「実現可能な行動」を組み合わせた方がはるかに効果的だと示されている。不安をあおるより、解決への道を照らそう。課題と、それに立ち向かう姿を並べて見せよう。 テクノロジーの“グリーンな力”を伝える。 AIによるリサイクルや発電窓など、グリーンテックはすでに現実の産業を変えつつある。それなのに、その映像はどこか無機質で遠い。 テクノロジーを“人の手”の中に取り戻そう。 ソーラーパネルを設置する人、廃棄物を分別する人、エネルギーを節約する人―― その動きこそが未来を映す。 「持続可能」は、我慢の物語ではない。 人々は、“犠牲”よりも“実現可能な変化”に心を動かされる。 日常の延長にある行動―コンポスト、再利用、節電。 そんな身近な実践をリアルに描くことが鍵だ。 完璧な理想ではなく、「自分にもできる」と思える行動を見せよう。 サステナビリティを“組み込む”。 優れたブランドは、環境への取り組みを「付け足し」ではなく「基盤」として考える。製品設計から顧客体験まで、静かに一貫して流れる価値観として。 そのビジュアルは、派手でも誇張でもない。 自信と誠実さを湛えたトーンこそが、長期的な信頼を築く。 私たちは、物語ではなく「可能性」を見せているか? 画像は飾りではない。 それは、私たちの思考と感情、そして行動を形づくる。 だが今のサステナビリティ・ビジュアルは、恐怖か、あるいは使い古された象徴で人を麻痺させている。 いまこそ、新しいビジュアル言語を。 理想ではなく、現実を。 無機質なアイコンではなく、生きた人間を。 “伝える”だけでなく、“招き入れる”表現を。 次に、あなたが「光に包まれた芽」や「夕日に映える風車」の画像を投稿しようとしたとき、自問してみよう。 ―この一枚は、誰かを動かすだろうか? それとも、ただ流されていくだけか? もう比喩は十分だ。 今こそ、「変化の現実」を見せよう。

これが信頼を築くサステナ発信だ -社内広報戦略5つの方法- by Antti Isokangas | NECSUS GREEN FILE

これが信頼を築くサステナ発信だ -社内広報戦略5つの方法- by Antti Isokangas

多くの企業はすでに、サステナビリティ・コミュニケーションが単なる広報活動ではなく、経営戦略の一部であり、信頼を築き、企業の評価を形づくるものであることを理解している。 しかし、多くの企業が見落としていることがある。それは「社内の発信が働き方そのものを変える」という点である。 社員は最初にして最も重要な受け手である キャンペーンを展開し、報告書を出し、新たな取り組みを始める前に、自問すべきは「社員は理解しているか」である。 理解していれば、社員は企業の強力な応援団となり、質問に答え、リスクを見抜き、自分の言葉でストーリーを広げることができる。 理解していなければ、混乱、部門間の不一致、懐疑的な管理職、そして顧客にまで伝わる不信感を生む。 内から外への発信は必須である 強い社内コミュニケーションとは、社内報での小さな記事ではない。時間をかけて「どこへ向かうのか」「なぜ重要なのか」「自分の役割にどう関わるのか」を共有することである。 例えばデンマークの海運大手マースクは、環境移行を進めるにあたり「My Learning Academy」などの学習プラットフォームを通じ、継続的学習文化を社員に提供している。さらに、低炭素燃料を扱うための「Maritime Decarbonization Suite」など専門的研修を行い、社員が変化に対応できるよう支えている。 フィンランドのマリメッコは、素材や循環型の取り組みに関して社員を早い段階から議論に参加させ、デザイナー、調達担当、店舗スタッフをパイロットプログラムやワークショップに巻き込んでいる。誰もが自分の仕事と企業の長期的な環境目標とのつながりを理解している。 Sグループでは、日常業務そのものにサステナビリティを組み込み、食品廃棄削減や生物多様性への理解を全店舗や物流、接客にまで広げている。 サステナビリティは雇用ブランドの一部である 10年前、サステナビリティは採用において「あると良いもの」だった。しかし今では基準そのものであり、とくに若い世代にとって重要である。応募者は企業の気候や社会的責任への姿勢を「入社するか否か」の判断材料としている。 フィンランドのネステ(再生燃料大手)やアウトクンプ(低炭素ステンレス大手)は、採用活動においてサステナビリティを中心に据えている。彼らはエネルギーや鉄鋼の未来を形づくるうえで「移行」「課題」「社員一人ひとりの役割」を率直に語っている。サステナビリティは「事業の一部」ではなく「事業そのもの」である。 調査によれば、Z世代の就職希望者は環境責任、透明性、目的意識を最重要視している。この傾向は創造的職種やNGOに限らず、物流、技術、金融、生産部門にまで広がっている。 社員体験に裏付けられないサステナビリティ主張は、無意味どころか信頼を損なうリスクである。 メッセージは一様ではなく調整が必要である 社外向け発信を投資家、顧客、パートナーに応じて変えるように、社内発信も多様な社員に合わせる必要がある。価値観を変えるのではなく、役割に即した例や形式に翻訳するのである。 例えばフィンランドの食品大手ファッツェルは、パン職人や販売員といった現場社員に対して、食品廃棄や地域への影響、チーム単位の指標など、日常に直結するテーマを用いてサステナビリティを伝えている。 風力大手ヴェスタスでは、サステナビリティを生産や保守、開発にまで組み込み、役割ごとの指標や協働計画を通じて浸透させている。 また、調整とは「聞くこと」でもある。部門や地域によって信頼度や関心は異なる。相手を理解すればするほど、効果的に巻き込むことができる。 社員ネットワークの活用 効果的でありながら十分に活用されていない手段の一つが、社員によるリソースグループ(ERG)である。サステナビリティ分野では、社員が自発的に組織内で活動するネットワークが存在する。 フィンランドのコネ社では、社員主導のサステナビリティ・ネットワークが、グローバル目標を地域の行動へと落とし込んでいる。スウェーデンでは建設パートナーシップ、トゥルクでは物流包装の廃棄削減など、地域ごとに活動している。これらは企業のサステナビリティ部門や広報部門と連携し、社員の主体性と信頼を高めている。 北欧の他企業でも、正式なERGに限らず、横断的なプロジェクトチームや「サステナビリティ大使」プログラムとして機能している。社員主導の取り組みは、価値を部門横断的に広げ、責任を上層部だけでなく全社で共有することにつながる。こうしたグループは「内部の健全な圧力」としても働き、経営陣が見落とす視点を突きつけ、組織全体を正直に保つ役割を果たす。 社内コミュニケーションを強化する5つの方法 ・サステナビリティを事業そのものに結びつける。価値観だけでなく成長や効率、強靭性と関連づける。 ・役割に合わせた発信をする。購買担当と整備士は求める情報が異なる。 ・本物の声を使う。社員自身の語りやチーム単位の物語が信頼を築く。 ・一方通行ではなく対話に投資する。アンケートやワークショップで本音を理解する。 ・小さな成功を祝う。店舗やチーム単位の前進を評価することで勢いが生まれる。 文化こそが真のブランドである 情報があふれ、約束が疑われる時代において、信頼できる社内文化こそ最大の武器であり資産である。社員が使命を理解すれば、彼らは最も強力な発信者となる。 逆に社員が理解していなければ、どれほど立派なキャンペーンも意味をなさないのである。

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