インタビュー

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1.GXリーダー必須「あいまいさに強くなれる思考法」 日本マンパワー会長が語る「ネガティブ・ケイパビリティ」 田中稔哉 | NECSUS GREEN FILE

1.GXリーダー必須「あいまいさに強くなれる思考法」 日本マンパワー会長が語る「ネガティブ・ケイパビリティ」 田中稔哉

2025年11月29日は、「曖昧さに強くなる思考法ーネガティブ・ケイパビリティから学ぶ持続可能な成長のヒント」と題し、株式会社日本マンパワーの田中稔哉・代表取締役会長にご登壇いただきました。 以下は、ご講演終了後、本ニュースレター読者に向けミニインタビューにお答えいただいたものです。 Q1.ネガティブ・ケイパビリティとは何でしょうか? ネガティブ・ケイパビリティとはあいまいで不確実な状況の中で、 「わからなさ」を受け入れ、それに耐えながら、あきらめず、観察や 思考を続ける力(あり方)です。 私があてた訳語は、希望を内包した「保留状態維持力」です。 誰でもどこでも発揮するものですが、ポジティブ・ケイパビリティ(効率的な問題解決力)とのバランスで、優位になったり劣位になったりします。 特に対人支援は理解しきれない存在である人間を相手にしますので、必要になります。ただ数学など答えがあるように見える課題だとしても「本当にそうか」「他の答えはないか」と考え続ける姿勢は持っているべきだと思います。 Q2.環境経営を学ぶ人達が、ネガティブ・ケイパビリティという問題解決のためのアプローチを手に入れる必要性についてお答えください。 長期的視点を持つことが必要な環境問題と、それに比べて短期的な成果が求められがちな経営という、一見相反するテーマに対して、答えが見えない中でも、あきらめて思考停止になることなく、考え続け、試行錯誤し続けるには、ネガティブ・ケイパビリティが必要です。 また、SDGsなどもそれぞれの目標間にジレンマ、トリレンマがあり、企業経営でももはや「こうすればいい」という経営課題はあまりありません。 経営上の選択についても、いったんポジティブ・ケイパビリティを発揮して意思決定したとしても、それを妄信して進むのではなく、変更や修正をする構えを持ち続ける方が、VUCAの環境下では有効だと考えます。

環境経営のビジネス英語も  「プロジェクト発信」でもっと強くなる 慶應義塾大学 鈴木佑治・名誉教授 紙上インタビュー | NECSUS GREEN FILE

環境経営のビジネス英語も  「プロジェクト発信」でもっと強くなる 慶應義塾大学 鈴木佑治・名誉教授 紙上インタビュー

Q1.そもそも「プロジェクト」とはなんでしょうか? プロジェクトは発信の原点。つまりプロジェクトとは、考えを発信すること、と言えます。私たちはいつでもどこでもコミュニケーションします。 言語によるコミュニケーションはその一部で、その更に一部が英語によるものです。 「英語がうまく話せない」とよく聞きますが、英語うんぬん以前に、コミュニケーションが分かっていないからだと言えるでしょう。コミュニケーションはメッセージを作り、発信し、受信し、解釈する行為の繰り返しです。日本の英語教育に欠けているのはこのサイクルです。 英語の語彙、発音、文法などをしっかり覚えてから、その後で聞いたり、話したりしようと考えるかもしれませんが、結局、覚えきれずにギブアップというのが現状です。 何を隠そう、かつての私自身がそうでした。 中学校、高等学校、大学、そして、大学院修士課程まで、合計12年間も英語の勉強、それも専攻は英語・英文学。それで1968年にアメリカに行くのですが、着いた瞬間から全然聞きとれないは話せない。英語で コミュニケーションしたことがなかったから当然です。 シェークスピア作品を何冊読んだことか。その他の英文学作品も原書で200冊ぐらい読みました。相当の語彙力があると自負していたのに、カフェテリアcaferiaに入ったところ、注文しようとしても一言も聞きとれない話せないで情けないことに立ち往生です。 コーヒー(coffee)もまともに注文できない。クリーム(cream)は?と聞かれても答えられない。 ケースの中に並んでいる食べ物も何もかも分からない。 例えばマッシュドポテト(mashed potato)、グレービー(gravy)、なんのことやらお手上げ。ショックを受けました。 日本での12年間の英語の勉強は現地の日常生活で役立たず、その瞬間、これはダメだと思い、アメリカでもう一回やり直そうと決心したのです。そこからコミュニケーションするということはどういうことか、そして、英語でコミュニケーションをするということはどういうことかなどなど、究明する長い道のりが始まったわけです。アメリカで気づいたのは、大学でも普段の生活でもすべてがプロジェクトの連続だということです。 ちなみに、プロジェクト(project)のpro-は「前方に」という意味で、-jectは「投げ出す/投影する」という意味のラテン語です。自分の考えを「前方に投げ出す/投影する」、これぞまさしくコミュニケーションと考え、帰国し、それを英語でやってみようと決意しました。 Q2.「プロジェクト発信型英語プログラムとは」具体的にどういうことでしょうか? 私の考えた「プロジェクト発信型英語プログラム」は、ほかでもありません、アメリカ10年間のいわばプロジェクト生活のノウハウを英語プログラムに持ち込んだだけのことです。 プログラムは2つのモジュール(連動する部分構造)で構成されています。1つは英語スキルをブラッシュアップするためのワークショップと称するモジュールです。これは若手のネイティブ講師の先生たちにお願いしました。もう一つが中心的プロジェクトと称するもう一つのモジュールです。担当は私です。コミュニケーションとは関心事を巡って展開されます。それで学生さんには自分が今抱いている関心事につき、日本語であれ、英語であれ、徹底的に調べさせ、その結果を英語で発信させます。例えば野球部の学生さんは、野球が好きなので、野球を調べ始めるといった具合です。 最初は野球が好きくらいしか言えなかったのですが、例えば、キャッチャーがうまくなるにはどうしたらいいかとか、一生懸命調べるわけです。毎週毎週調べたことを英語で発表します。 要は、まず徹底的にリサーチすることを学ぶわけです。 こうして調べた成果を英語で発表するのですが、聴衆もただ聞くだけではありません。 自分の友達の関心事に関心を向けるようになり、 受信(プロジェクト/投影)する側もすぐさまコメントするなど発信モードに変わります。 これを1年生、そして2年生までやると、アカデミック・レベルの発信に変わっていきます。挨拶に毛が生えたくらいのインフォーマルな英会話ならこのプログラムでは2週間もあれば出来るようになります。6年も8年も英語を勉強するのですからその先のアカデミック英語も目指すべきです。本プログラムでは全員出来るようになります。このように、コミュニケーションはプロジェクトの連続です。この意味での英語で発信するための場づくりを目指します。 Q3.伝えるための英語、その発信は日本語でも難しいと思いますが、それを英語でどうして習得するのでしょうか? (学びは一生=Lifelong English)知識はなんであれ生涯かけて(lifelong)学習し積み重ねて行くものだと思うのです。プロジェクト科目では英語とか日本語とか分けたりしません。リサーチの段階で日本語の資料も使います。日本語でリサーチしてオーケーです。同時に英語で行うわけですから。 英語スキルをブラッシュアップするワークショップはさすがにすべて英語でやります。 プロジェクトでは、私たちは日本人ですから日本についてのコンテンツをしっかり世界に向けて発信しなければなりません。日本で日本語で伝承されてきた文化価値観は私たちにとって宝なのです。世界が知りたがっているわけですから。その日本語の情報を英訳すれば貴重な情報になります。 ただし、英語だけでは無理です。例えば、「義理」とか「人情」なんて言葉は英語に見当たりません。 近いのはobligationとかcompassionなどでしょうが少々違います。日本にきて体験しなければ分かりません。よって、英語に訳さず、giriとかninjoとして発信する、それもプロジェクトの目標とするところです。 これこそがグローバル英語、そこに入りどんどん日本の文化などを発信しなければなりません。こうして本プログラムは英語のみならず日本語プロジェクト発信型プログラムでもあり得ます。 Q4.本学大学院には様々な景をもつ社会人が集われますが、どのような内容の特別授業をお考えでしょうか? コミュニケーションは森羅万象すべての活動・事象を含みます。まずみんなでコミュニケーションとは何かを考えます。英語とか日本語とかは問いません。外国からも来られでしょうから、彼らの言語で良いのです。それぞれ個人の関心に従い、それぞれがそれぞれのテーマにつきプロジェクトを行います。リサーチの成果を英語はもちろん、日本語、その他諸々の言語で世界に発信します。ChatGPTなど最新のAIソフトは積極的に使います。テクノロジーも含めコミュニケーションとは何かを考えます。授業はオンライン上で行うのでリアルタイムで世界に発信し、世界中の友達と交流し意見を交わします。社会人ですから自己責任です。 危険を察知しながら適宜対応できる能力もグローバル・コミュニケーションでは問われるからです。内容が深ければ深いほど注目を浴びるでしょう。過去の体験から中には特許を申請できる成果も出て来る可能性大です。 様々な方々が、様々な良いテーマ良い成果を発信する、これは生涯長く続くものとなります。良いものを発信できるコミュニケーションの場であり、同時にそれについて多角的な思索の場を目指します。 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス18年間のコミュニケーション論では毎年100名以上が素晴らしいプロジェクトを行い各界で活躍しています。コミュケーションですから、受講される方々も担当する私もみんながコミュニケーターで全員が主役です。 全員が全員から学び教え合える、 そういうコミュニケーションの循環ができるような授業を考えています。きっとクラスのWebsiteは多くの成果で埋まり、世界交流の場となることでしょう。

COP30で緊急提言! -分断は、立て直せるのか- by Thomas Kolster | NECSUS GREEN FILE

COP30で緊急提言! -分断は、立て直せるのか- by Thomas Kolster

  COP30(2025年11月10日から21日までブラジルのベレンで開催の「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(Conference of the Parties 30)」)を受け、NECSUS Green Fileで好評のサステナビジネス伝道師トーマス・コルスター氏のコラム緊急提言です。   気候運動はなぜ停滞したのか ― そしてどう立て直すのか   “道徳的優越”が招いた分断   私たちは地球を救おうとした。だが、結果的に世界を分断してしまった。 ブラジルでCOP30が開かれる今、かつての楽観は消えつつある。   「簡単なサステナビリティ」の時代は終わった。 企業は声を大きくするどころか、静かになっている。気候疲れは現実だ。予算は縮小し、成長は鈍化し、「サステナビリティ」という言葉の輝きも失われている。世界中の会議室で問いはこう変わった──     「何が正しいか?」から「リターンはあるのか?」へ。   それは冷笑ではなく、生存戦略だ。   今やサステナビリティは、倫理的な正しさだけでなく、測定可能な成果を示さなければならない。「良いことを掲げる時代」から「成果を出す良いことをする時代」へと変わりつつある。そしてこの転換には、私たちがなぜ大多数を巻き込めなかったのか──企業・社会・政治のすべてにおいて──正直に向き合う必要がある。   “純粋さ”が招いた失敗 長年、私たちは企業に「もっと速く、もっとグリーンに、もっと高く」と求めてきた。航空会社や自動車メーカーの仕事を拒否する“倫理的アライアンス”を作りながら、自分たちは平然と飛行機に乗っていた。   矛盾を抱えたまま企業に変革を迫っていたのだ。   家族をトルコ旅行に連れていくシングルマザーに「飛行機を諦めろ」と本気で言えるだろうか。航空券の値上げは富裕層ではなく、彼女のような人々を直撃する。   私たちは先頭に立って改革を進めようとしたが、しばしば 「非難」という形でリードしてしまった。   サステナビリティを“参加の連帯”ではなく、“純粋さの競争”に変えてしまった。 「十分に良い」は、いつも「不十分」とされた。 企業や人が理想に届かないと、私たちは声高に非難した。   だが、指さしは変革の燃料にはならない──むしろ凍らせる。   多くのブランドが静かに後退している。不完全な取り組みが炎上することを恐れ、第一歩すら踏み出せなくなっている。   市民レベルでも同じだ。 常に「もっとリサイクルしろ」「飛行機に乗るな」「消費するな」。   “常に不十分だ”という圧力。   大半の人も、企業も、自分を小さく感じさせる運動には参加しない。   広がってしまった分断 その結果、サステナビリティ文化は二つに割れた。   片方には、B Corp、活動家、熱心な信奉者たち。   もう片方には、傍観者のように見える“サイレントマジョリティ”──あるいは反発しはじめた人々。   炭鉱労働者や農家にとっては、サステナビリティは“エリートの議題”に見えてしまう。 彼らは土地とともに生き、私たちに食を届ける人々だ。 敵ではなく、むしろ同盟者であるべきではないか?   共感は、非難よりはるかに強い。   正義よりも“共感”が動かす 市場を本当に動かしている企業は、説教しない。   彼らはつながりを作る。   行動を決めるのは倫理ではなく、感情だと理解している。   朝食大手に挑むHollie’sは、「砂糖を減らそう」というシンプルで前向きな約束で市場を揺らしている。   オートミルクのOatlyは、植物ベースの選択を“犠牲”ではなく、文化的なウィンクにした。「簡単だよ、やってみよう」と。   これらのブランドが成功する理由は、 完璧だからではない。共感できるからだ。   善い行動を「気持ちよく」「お得に」感じさせている。 罪悪感で人を動かすのではなく、招き入れているのだ。   未来はそこにある。   説教ではなく、ストーリー。 道徳的優越ではなく、市場での関連性。   ビジネスは“価値”で動く 価値観は大事だ。だが、価値創造も同じくらい大事だ。 企業がサステナビリティへ投資するには、それが成長、ロイヤルティ、レジリエンスを生むと示さなければならない。   「パーパス」は後光ではなく、 商業的な力を証明する必要がある。   倫理だけでは、もはや企業を誘惑できない。 必要なのは、「良いことが良いビジネスになる」という確かな報酬だ。   証拠のないパーパスでは不十分。   責めるのではなく、伴走する では、ここからどこへ向かうべきか?   ✔ 純粋さではなく、参加を増やす。 進歩は大きなジャンプではなく、小さな一歩の積み重ねで生まれる。 「十分にグリーンじゃない」と嘲笑すれば、その第一歩すら止まる。 不完全でも前進を称えよう。   ✔ 非難ではなく、支援に変える。 企業を変えたいなら、罪悪感ではなく“エビデンス”で導くべきだ。 高みからの説教ではなく、実践的な解決策を。   ✔ もっと“人間的”に。 サステナビリティは生活とつながった時に力を持つ。 「より良い朝食」「きれいな空気」「安全な未来」── 人々が“自分ごと”として感じられるように。   正直さと包摂への呼びかけ COP30の議論に、世界はもう高尚な約束だけを求めていない。   必要なのは証拠だ。   結局、それは「より良い暮らし」についての話なのだから。 私たちは“いじめ”をやめ、“構築”を始めなければならない。 美しい言葉の影に隠れるのではなく、その商業的な根拠を示すべきだ。 知識があるのなら、他者を閉め出すためではなく、持ち上げるために使うべきだ。   サステナビリティは“道徳的に優れている”ことで勝つのではない。 商業的にも、文化的にも、人間的にも、“魅力的”であることで勝つのだ。

異文化マネジメント最前線 挽野元=アイロボットジャパン合同会社代表執行役員社長(当時) | NECSUS GREEN FILE

異文化マネジメント最前線 挽野元=アイロボットジャパン合同会社代表執行役員社長(当時)

2025年10月25日にNECSUS特別セミナーに登壇した、本学教員予定者の挽野元・社長にショートインタビューをお願いしました。なお、講師の肩書は取材当時のものです。 Q1.理論及びそれに基づいた実践への応用で、サステナビリティを重視する時代だからこそ留意すべき事柄があれば教えてください。 「持続可能性を意味するサステイナビリティという言葉はいろいろな文脈を含んでいます。環境的要素、社会的要素、経済的要素が主なポイントです。最近の米中の覇権争いやグローバルサウスの台頭など、グローバリズムとナショナリズムが複雑に交わりあう現代においては、各国ごとに持続可能性の中のどの要素を重要視するかの濃度が微妙に異なってきているのではないかと思います。 サステイナビリティに関しては、One Fits Allにならないことを前提に、自分の中の定義であっているはずという暗黙の了解を是とせず、ローコンテキストを前提にしっかりと明文化したコミュニケーションを実施していくべきではないかと考えます。」 Q2.GX時代の戦略的変革リーダーが、異文化マネジメント力を高めるためには、どのような学びをするとよいでしょうか? 「まず、文化的背景に合わせて、指示・支援・委任のバランスを調整する適応型リーダーシップを実践できる能力を高める学びをすることが大事になってくるのではないでしょうか。これに加えて、明示的・暗示的なメッセージに使い分けや、相手のスタイルに応じた伝達方法の調整などの多層的コミュニケーションの習得もした方がいいかと思います。 また、異文化マネジメントは一度で完結することはなく継続的な学びの姿勢が求められます。実践と理論を往還し、相互尊重を前提に多様性を強みに変えていく意識を持ち、自分が置かれている状況に合わせた独自の解決策を創造していくスキルもマスターしていくと異文化マネジメントが楽しくなってくると考えます。」

「待ったなし!サステナビリティ経営への変革」 特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラム 理事・特別顧問 後藤敏彦氏インタビュー | NECSUS GREEN FILE

「待ったなし!サステナビリティ経営への変革」 特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラム 理事・特別顧問 後藤敏彦氏インタビュー

9月20日にオンライン開催したNECSUS特別セミナーでは、「待ったなし!サステナビリティ経営への変革」と題し、特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラムの後藤敏彦=理事・特別顧問にご登壇頂きました。 以下、セミナー後の紙上インタビューです。ご覧ください。 Q1. 日本でサステナブル経営が広まる中で、今後課題となりそうなのは何でしょうか? 海外との比較を含め、お気づきのことがあれば教えて下さい。 A1. 経営層とマネジメントに関わる課題に関しては2.にまとめます。以下は今後課題になりそうなことを例記してみました。 ①日本社会での「人権」認識と世界の「人権」認識にかなりズレがあること。良し悪しの問題ではないので、認識にずれがあることの認識の普及が課題。 ② 日本は「失われた30年」といわれるように産業資本主義からポスト・インダストリアル社会への対応が遅れている。個々の企業の業種・業態で対応は異なるが待ったなしの状況にある。経済システムのダイナミックな動きの認識向上が必要。 ③ サステナビリティ課題はダイナミック(流動的)である。世界が動くにつれ次々に新しい課題が生まれてくる。あえて2つだけあげておく。 ひとつは、平和への対応課題。世界が益々平和でなくなりそうなとき、個々の企業では如何ともしがたい課題であるが、状況が悪くなればなるほど何らかの対応が求められる。 もうひとつはAIの問題。生成AIは単なるコンピューター(ツール・道具)では無い、既にこの1~2年でツールからパートナーというかメンバーというか人間に替わって仕事の中核になりつつある。日本はDXと言いながら単なるデジタル化に止まっており、トランスフォーメーションとはほど遠く、生成AIどころではないといってもよい状況かもしれない。AIとの付き合いは米国や中国とは大きく遅れているようである。 Q2. 企業がサステナブル経営にプロアクティブに取り組むため、ビジネスリーダーにはどのような資質、スキル、態度が求められるか? A1. 経営層・ビジネスリーダーの課題と、マネジメントの課題を分けます。 ① 経営層、ビジネスリーダーの資質、スキル、態度 これには無数の経営指南書が出ている。それを読むとスーパーマンにしか経営ができないことになってしまいかねない。あえて2つだけあげておく。 ひとつは、歴史に関する深い認識・洞察力である、哲学ともつながるが。歴史は同じ通りには繰り返さないが、変化の時代には洞察力の基盤には歴史観と哲学は必須である。 ふたつめは多様な人材を束ねて成果に結びつけるマネジメント力である。束ねる組織の業種・業態、その組織の歴史などにより必要とされるマネジメント力は一様ではない。いずれにせよ多様性マネジメントがキーである。ティール・グリーン・オレンジ・アンバー・レッド組織、どれもあり得るし、一つの企業の中でも目的により何が良いかは簡単なことではない。 ② マネジメントの課題 最初に、マネジメントは管理(コントロール)とは違う。ガバナンスの原義は「舵取り」であって「統治」ではない。ましてやマニュアルに従った管理(コントロール)はマネジメントの最下層部分にすぎない。 2つだけ例示。 ひとつは、バリューチェーン・マネジメント(VCM)。日本企業はこれまで単体(よくて連結)のマネジメントで過ごしてきたが、これからはVCMが必須になる。この場合、従来型のマネジメント=超生真面目な微細なマネジメントは百害になる。どうマネジメントするか。 ふたつめは、トップにスーパーマンを期待することは殆どできないとすれば、ミドルアップ・トップダウン型を徹底することが肝要と思われる。そのためにもミドルのスキル・アップ、リスキリングが極めて重要になる。キャリア採用ということだけで済まされる課題ではない。

世界気候エネルギー首長誓約/日本 杉山範子事務局長 紙上インタビュー | NECSUS GREEN FILE

世界気候エネルギー首長誓約/日本 杉山範子事務局長 紙上インタビュー

Q1 気候変動により予測される悪影響と、それに対する地域の対応につき、具体例を教えてください。 悪影響は、地域の気候や産業など、地域性があるため、一様ではありませんが、最も一般的に実施されているのは、熱中症予防対策と防災対策です。 予測される悪影響は、例えば熱中症の場合は、暑熱による健康影響を受ける、最悪の場合は死亡する。これを避けるため、地方自治体は「クーリングシェルター」を設置することとなっており、住民が日中の暑さを避けて過ごすことができる場所を提供しています。ほとんどすべての自治体で実施しています。 このページに様々な事例が紹介されています。 https://adaptation-platform.nies.go.jp/data/index.html#data01 他に、グリーンカーテンの設置を推奨し、コンテストを実施しているところなどがあります。 Q2 上記に係り、世界首長誓約の意義、現状と課題を教えてください。 誓約自治体は、規模の大小にかかわらず、緩和策である脱炭素の取組だけでなく、適応策にも取り組まなければならないため、地域の適応策が進みます。 世界首長誓約では、地域のリスクと脆弱性の評価をしてから目標や具体的な対策を決めることとしており、地域性を把握した取組を進めることができます。リスクと脆弱性評価は事務局がアドバイスなど支援することもあります。 気候変動の影響は全ての分野に及びますが、行政の縦割りが弊害になっています。 適応計画は環境の部署が担当ということになり、他の部署との連携が課題です。 防災や農業などすでに適応策と言える施策を実施しているところが多いなか、どのように既存の施策を適応策と位置づけるか、地域の脆弱性から施策の優先順位をどのように決めるのかなど、課題が多くあります。 一般の方々の認知度が、緩和策に比較して、適応策の方が低いことも課題です。

「宇宙から考えるサステナ経営」 UchuBiz編集長 藤井涼氏紙上インタビュー | NECSUS GREEN FILE

「宇宙から考えるサステナ経営」 UchuBiz編集長 藤井涼氏紙上インタビュー

年率9%で急成長の宇宙市場。10年後の2035年には270兆円規模(2023年の約3倍)になるといいます。 8月2日土にNECSUSが開催したオンライン特別セミナーは、「ロケットだけじゃない 宇宙ビジネス最前線 ~宇宙ゴミ対策や衛星データで守る地球環境~」と題し、宇宙ビジネスのトレンド、そして「宇宙×環境」をフィーチャーした話を特別に盛り込んだものとしました。 講師の藤井涼氏は宇宙ビジネスへの参入を後押しするメディアUchuBizの編集長。 「宇宙って、地上何kmから?」といった基本的な事柄から(答えは100km)、最新の動向、特にイーロン・マスクやジェフ・ベゾスなど、IT業界の巨人の台頭や米中競争の過熱、ポストISS(国際宇宙ステーション) を睨んだ民間企業の動き等、詳細な紹介がありました。 以下、セッション後の紙上インタビューをお届けします。 Q1:宇宙産業(ビジネス)は、人類の最先端の知識や技能をもとに推進されている点で、環境にも配慮した取り組みが多いと聞きますが、具体的には? 藤井:従来の宇宙開発は、むしろ宇宙ゴミを大量に生み出しながら発展をしてきました。現在は環境に配慮した方向に変わりつつあり、打ち上げ後に使い捨てずに戻ってくる再使用型ロケットや、軌道上に飛ぶ無数の宇宙ゴミをロボットアームやレーザーで除去するための宇宙機の開発が進められています。 Q2:宇宙産業(ビジネス)の今後の広がりは、どのような分野で顕著にみられるでしょうか?現在の規模や今後の成長についても教えてください。 藤井:現在は衛星サービスが大きなシェアを占めていますが、今後は宇宙空間を使った実験やエンタメ、月や火星などの探査領域での発展が期待されています。世界経済フォーラムによれば、2023年は6300億ドルだった世界の宇宙市場は、2030年に1.1兆ドル、2035年に1.8兆ドルまで成長すると期待されています。 Q3:宇宙産業(ビジネス)と私たちの普段のビジネスとは、どのようにかかわってくるでしょうか? 藤井:分かりやすいところで言えば、やはり衛星データ活用になります。地球観測衛星のデータや通信衛星を活用して、農業やインフラ点検、防災、離島などでのデジタル教育などに活かせます。ただし、まだ宇宙を飛んでいる衛星の機数が少ないため、十分な頻度で撮影ができていないことが課題です。将来的には10分ごとの準リアルタイム撮影も可能になると言われており、そうなれば地上のリアルタイムデータとのシームレスな連携などもできそうです。 Q4:宇宙ビジネスに従事する方々や、目指す方々にとって、環境経営を学ぶ必要性をどのように考えていますか? 藤井:宇宙産業の中でも特に「衛星」は、地球のさまざまなデータを広域かつ定点で取得できる数少ない領域であり、環境改善に役立てる義務があると考えています。すでに衛星データを使って、森林伐採を監視したり、温室効果ガス排出量を把握したり、海洋汚染を早期発見したりするといった取り組みが各国で進んでいます。 ありがとうございました。

【NECSUS Green File】インタビュー ピア・エルキンへイモ (May 7, 2025) | NECSUS GREEN FILE

【NECSUS Green File】インタビュー ピア・エルキンへイモ (May 7, 2025)

-本日は「NECSUS Channel」にご参加いただき、ありがとうございます。まずは自己紹介をどうぞ。「ありがとうございます。ピアと申します。ノルディック・ナノという会社で、パートナー兼投資家対応およびESG担当をしています。ノルディック・ナノでは、薄型の太陽電池フィルムやソーラーパネル、それから無害な金属でできた固体塩電池などを製造しています。太陽エネルギーを効率よく吸収・活用しており、現在主流のシリコン製やペロブスカイト系の太陽電池に比べて、2倍近くの効率を実現しています。合わせて、LUT大学の理事も務めています。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」、特に目標13「気候変動対策」に貢献していることで、世界的に知られている大学です。私自身も、気候変動関連の投資を通じて、経済システムをより持続可能なものにすることを目指し、アドボケイト(提唱者)としても活動しています。」 -素晴らしいですね。大学では教えていらっしゃるのでしょうか?「いえ、現在は大学では教鞭をとっていません。理事としての関わりのみです。ただし、スタートアップへのコーチングは行っています。特に「クライメートテック(気候技術)」や「デジタル×気候テック」の領域ですね。私のキャリアはもともとデジタルやAIの分野から始まっているので、その知見を活かしています。サステナビリティとAIをどう融合するかという話も、とても面白いトピックですね。」 -ビジネスとしての成長も感じていますか?「はい、確実に成長していると感じます。ただし、それには3つの要素が必要です。1つ目は、「これはシステム全体の変化だ」と私たちが理解すること。つまり、消費者として、市民として、私たち一人ひとりが行動を変える必要があります。2つ目は、企業間取引の世界です。企業が責任を持つ必要があります。そして、すでに多くの企業が短期間で地球にとって非常に大きな貢献をしています。3つ目は、政府の役割です。政府は市民だけでなく、企業や社会のあらゆる主体に対して、行動を促すインセンティブを提供することができます。これは、次世代のために美しい地球を残すためにも欠かせません。」 -サステナビリティを促進する上で、どんなリーダーシップスタイルや組織文化が有効だとお考えですか?「北欧の国々に共通しているのは、フラットな組織構造です。特にスタートアップのような環境では、肩書きよりもアイデアが重視されます。とはいえ、北欧にも伝統的な組織は存在しています。ここヘルシンキでもそうですが、そうした組織では「誰が考えるリーダーになるか」が重要です。時には、取締役会からそうしたリーダーが生まれます。最近の傾向として、高いポジションに選ばれる人たちは、単なる経営のプロフェッショナルではなく、「サステナビリティへの理解が深い人」が多くなってきています。なぜなら、それが競争優位につながるからです。リーダーとは、まず自らが模範となる存在でなければなりません。自社がどのような製品を作っていようと、「環境に配慮している」といった虚偽の主張は絶対に避けるべきです。EUは「グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)」を規制し、罰則を設けようとしています。」 -なるほど。あらゆる面でリーダーシップが問われると。「その通りです。企業のリーダーは、多様な形で革新を起こし、あらゆる場面でリーダーシップを発揮する必要があります。たとえば、消費者向けのビジネスであれば、マーケティング手法を見直すべきです。ノベルティを配るにしても、それが持続可能な方法なのかを考えるべきです。さらにEUでは、2025年から大企業に対して「直接・間接的な排出量の報告」が義務化となりましたが、これは単なる規制ではなく、ビジネスモデルそのものを「持続可能で、かつ、未来に適応できる形」へと変えていく動きです。地球規模での視点が求められています。-それは、会社全体に浸透していなければ意味がないですね。「その通りです。サステナビリティを組織全体に根付かせ、すべての社員にとって信頼できるものでなければなりません。新入社員であれ、幹部であれ、リーダーが「口だけ」なのかどうかは、すぐに見抜かれてしまいます。だからこそ、「本気で実践している」姿勢が不可欠です。そして最後に強調したいのは、「サステナブルであることが、企業の独自の価値提案になる」という点です。これは単なる理想論ではなく、ビジネスチャンスでもあるのです。そのためには、こうした分野にきちんと教育を受けた人材が必要です。NECSUSのカリキュラムにも、その視点がしっかり含まれていると感じました。」

【NECSUS Green File】インタビュー =雨宮寛の「先見」= | NECSUS GREEN FILE

【NECSUS Green File】インタビュー =雨宮寛の「先見」=

【NECSUS GREEN FILE】 インタビュー =雨宮寛の「先見」= 「Green MBA®」の商標を日本で登録し、その普及と向上に努める雨宮先生にお聞きしました。 略歴:慶應義塾大学経済学部卒業。コロンビア大学ビジネススクールで経営学修士号、ハーバード大学ケネディ行政大学院で行政学修士号を取得。クレディ・スイスやモルガン・スタンレーなどの外資系金融機関で活躍した後、DWMインカムファンズ日本事業代表、アラベスクS-Ray日本支店代表、RG Sciences日本事業担当として活動。2006年に有限会社コーポレートシチズンシップを設立し、起業と社会貢献を広めるための活動を展開。また、個人としても社会貢献に強い関心を持ち、NPO法人ハンズオン東京の顧問を務めている。さらに、法政大学現代福祉学部および明治大学公共政策大学院にて兼任講師として教鞭を執っている。ビジネス書の翻訳家としても活動中。 Q1. 経済学がご専門ですが、実務に関するご経歴についてお聞かせください。 実家が広告会社を営んでいた影響もあり、大学では経済学を学びました。経済を通じて世の中の仕組みを理解したいという思いからです。卒業した頃はバブル崩壊の直後で、広告業界も大変厳しい状況にありました。さらに父が病で倒れ、障害を持ったこともあり、家業を廃業する決断をしました。 その後、外資系の金融機関に就職し、ここが現在のキャリアの起点です。ただ単に投資による収益を追求するのではなく、投資を通じて社会に良い影響を与えたいという思いがありました。当時の金融業界では収益性が最優先で、社会的意義や環境への配慮はほとんど重視されていませんでしたが、私は独自に調査を重ね、環境にも社会にも良い投資商品を構想するようになりました。 Q2. 海外のサステナビリティ評価会社での活動について教えてください。 金融業界での経験を通して、さらに専門知識を深めたいという思いから、30代半ばでハーバード大学ケネディスクールに留学しました。行政や政策に特化したスクールですが、企業の社会的責任やコーポレート・ガバナンスといったテーマを扱うプログラムがありました。 そこで出会ったのが、国連「ビジネスと人権」指導原則を策定したジョン・ラギー教授です。彼のもとで、企業が人権に関する方針や救済制度を整備しているかを調査するプロジェクトに参加しました。 また、サステナビリティ評価の先駆者であるKLDを創業したスティーブン・ライデンバーグ氏のもと、同氏が設立したボストン・カレッジの責任投資研究所*にてインターンを経験し、サステナビリティ評価の実務に触れました。こうした出会いや学びが、今のキャリアに大きな影響を与えました。 *現在はハーバード大学ケネディスクールに移設 Q3. グローバル人材として必要な資質とは? 可愛がられる存在になること。これは私が若い人に伝えたいメッセージです。自信や実績は重要ですが、それだけでは周囲との信頼関係を築くのが難しいことがあります。素直に学ぶ姿勢、助けを求める勇気、感謝の気持ちを忘れないことが、グローバルな場でも大切です。 Q4. 環境経営における日本や世界の課題とは? 気候変動の影響は誰もが実感しているにもかかわらず、国や政治体制の違い、あるいは国内外の分断によって対応が進まないという構造的な問題があります。環境経営の課題は、企業単体の問題にとどまらず、地球規模の政策的・社会的課題と密接に関わっています。 Q5. 社会人が学び続ける意義とは? 仕事で直面する課題の中には、自分の力やネットワークだけでは解決できないものがあります。そうした時に、学び直しや知識の拡充が大きな力になります。学ぶことで、自分の可能性を再定義し、新たなキャリアの選択肢を得ることができます。 Q6. グリーンMBAを商標登録した経緯と、本学への提供について ハーバード大学留学中に出会った「グリーンMBA」という言葉に強く惹かれ、日本に帰国後、将来の活用を見据えて商標登録を行いました。当時は具体的な計画はありませんでしたが、その理念には強く共鳴していました。 今回、環境経営大学院大学の構想に触れたとき、その志と熱意に深く共感しました。特に、オンライン特化型で全国・世界の学び手を対象にした教育モデルは、私が抱いていた理想と重なるものでした。理事長の熱い思いに応えたいという気持ちから、グリーンMBAの名称を提供することにいたしました。 Q7. 雨宮先生が影響を受けた書籍について 「あなたのTシャツはどこから来たのか?」という書籍は、私が最初に翻訳した本であり、サステナビリティやグローバリゼーションの複雑な構造を理解するうえで非常に影響を受けました。原材料から生産、販売、廃棄までのプロセスを追うことで、グローバル経済のつながりを身近に感じることができます。グローバルな視点を持ちたい方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。 Q8. 環境経営大学院大学への共感と期待について 環境経営大学院大学の構想を初めて伺った際、理事長の熱意とビジョンに大変感銘を受けました。拠点は岐阜ながら、全国および世界の学び手を対象としたオンライン特化型の教育システムは、今後の高等教育のあり方を大きく変える可能性を秘めています。 私自身、かつてオンライン授業に対する不安を抱いていましたが、実際に教える立場になってその有効性を実感しています。環境問題というグローバルな課題に取り組むうえで、物理的距離を越えて学び合える場の重要性を強く感じています。本学の取り組みが、日本発の持続可能なビジネス教育の先進事例となることを心より期待しています。 Q9. 学び手へのメッセージ 学びは常に「知ること」だけでなく、「出会うこと」でもあります。書籍との出会い、人との出会い、未知のテーマとの出会い。その一つ一つが、人生の視野を広げてくれます。大学院での学びは、多様なバックグラウンドを持つ仲間と出会い、議論を通じて新たな価値観を創出していく場でもあります。 今を生きるビジネスパーソンにとって、変化の激しい社会をしなやかに生き抜く力を育むためにも、学び続ける姿勢こそが最も重要です。環境経営大学院大学での学びが、その大きな一歩になることを願っています。      

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