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まだ“芽生え”の写真でサステナビリティを語ってる? ーそろそろ、ビジュアルをアップデートしようー by Thomas Kolster | NECSUS GREEN FILE

まだ“芽生え”の写真でサステナビリティを語ってる? ーそろそろ、ビジュアルをアップデートしようー by Thomas Kolster

もしサステナビリティがマッチングアプリのTinderにプロフィールを作るとしたら、そこに並ぶのはいつもの三点セットだろう。 風力発電のタービン、ホッキョクグマ、そして―もちろん―しっとりした手に包まれた小さな芽。 ……左にスワイプ。一択だ。 想像力はどこへ行った? よりよい世界を「思い描けない」まま、どうやってそれを「創り出す」ことができるだろうか。 この20年、私たちのサステナビリティのビジュアル表現は、悲劇的な破滅か、夢のような抽象表現に偏ってきた。 だが、そのどちらも、もはや人の心を動かせていない。 Getty Imagesの最新レポート『Sustainability at the Crossroads』は、この問題に真正面から取り組んでいる。 年間27億件の画像検索データ、25市場・10万人超の回答者、60名を超えるビジュアル専門家の知見を分析した結果、気候変動の「イメージ」がどのように進化し、どこで停滞しているのかが見えてきた。 2000年代初頭、環境を象徴するビジュアルといえば、煙突、油流出、融ける氷河といった“災厄の絵”が定番だった。 そして今――私たちは「手のひらの芽」に囚われている。 2025年のいま、誰もが「気候」を語りたがる一方で、「何を見せるか」については沈黙している。 見せ方が、未来の想像力を形づくる これは、ただのデザイン論ではない。 ヨーロッパでは74%の人が「実際の進展を感じられるビジュアル」を求めている。 それでも業界は、記号的なイメージに頼り続けている。 現実味のない物語に、人々はもう共感しない。 では、どうすればいいのか。 Gettyのレポートは、ビジュアルストーリーテリングを再構築するための5つの戦略を提示している。それは、現実の行動を促す新しい“見せ方”のヒントでもある。 完璧よりも、本物を。 人々が求めているのは「無傷の理想」ではなく「誠実な現実」だ。 傷や汚れ、葛藤を含めた“ありのまま”のビジュアルこそ信頼を生む。 進歩とともに、そこにある苦労も見せよう。 PRの完成形ではなく、“いま進行中の挑戦”を讃えるのだ。 不安だけでなく、希望を。 気候危機は深刻だ。だが、恐怖だけでは人は動かない。 研究でも、「危機感」と「実現可能な行動」を組み合わせた方がはるかに効果的だと示されている。不安をあおるより、解決への道を照らそう。課題と、それに立ち向かう姿を並べて見せよう。 テクノロジーの“グリーンな力”を伝える。 AIによるリサイクルや発電窓など、グリーンテックはすでに現実の産業を変えつつある。それなのに、その映像はどこか無機質で遠い。 テクノロジーを“人の手”の中に取り戻そう。 ソーラーパネルを設置する人、廃棄物を分別する人、エネルギーを節約する人―― その動きこそが未来を映す。 「持続可能」は、我慢の物語ではない。 人々は、“犠牲”よりも“実現可能な変化”に心を動かされる。 日常の延長にある行動―コンポスト、再利用、節電。 そんな身近な実践をリアルに描くことが鍵だ。 完璧な理想ではなく、「自分にもできる」と思える行動を見せよう。 サステナビリティを“組み込む”。 優れたブランドは、環境への取り組みを「付け足し」ではなく「基盤」として考える。製品設計から顧客体験まで、静かに一貫して流れる価値観として。 そのビジュアルは、派手でも誇張でもない。 自信と誠実さを湛えたトーンこそが、長期的な信頼を築く。 私たちは、物語ではなく「可能性」を見せているか? 画像は飾りではない。 それは、私たちの思考と感情、そして行動を形づくる。 だが今のサステナビリティ・ビジュアルは、恐怖か、あるいは使い古された象徴で人を麻痺させている。 いまこそ、新しいビジュアル言語を。 理想ではなく、現実を。 無機質なアイコンではなく、生きた人間を。 “伝える”だけでなく、“招き入れる”表現を。 次に、あなたが「光に包まれた芽」や「夕日に映える風車」の画像を投稿しようとしたとき、自問してみよう。 ―この一枚は、誰かを動かすだろうか? それとも、ただ流されていくだけか? もう比喩は十分だ。 今こそ、「変化の現実」を見せよう。

「待ったなし!サステナビリティ経営への変革」 特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラム 理事・特別顧問 後藤敏彦氏インタビュー | NECSUS GREEN FILE

「待ったなし!サステナビリティ経営への変革」 特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラム 理事・特別顧問 後藤敏彦氏インタビュー

9月20日にオンライン開催したNECSUS特別セミナーでは、「待ったなし!サステナビリティ経営への変革」と題し、特定非営利活動法人サステナビリティ日本フォーラムの後藤敏彦=理事・特別顧問にご登壇頂きました。 以下、セミナー後の紙上インタビューです。ご覧ください。 Q1. 日本でサステナブル経営が広まる中で、今後課題となりそうなのは何でしょうか? 海外との比較を含め、お気づきのことがあれば教えて下さい。 A1. 経営層とマネジメントに関わる課題に関しては2.にまとめます。以下は今後課題になりそうなことを例記してみました。 ①日本社会での「人権」認識と世界の「人権」認識にかなりズレがあること。良し悪しの問題ではないので、認識にずれがあることの認識の普及が課題。 ② 日本は「失われた30年」といわれるように産業資本主義からポスト・インダストリアル社会への対応が遅れている。個々の企業の業種・業態で対応は異なるが待ったなしの状況にある。経済システムのダイナミックな動きの認識向上が必要。 ③ サステナビリティ課題はダイナミック(流動的)である。世界が動くにつれ次々に新しい課題が生まれてくる。あえて2つだけあげておく。 ひとつは、平和への対応課題。世界が益々平和でなくなりそうなとき、個々の企業では如何ともしがたい課題であるが、状況が悪くなればなるほど何らかの対応が求められる。 もうひとつはAIの問題。生成AIは単なるコンピューター(ツール・道具)では無い、既にこの1~2年でツールからパートナーというかメンバーというか人間に替わって仕事の中核になりつつある。日本はDXと言いながら単なるデジタル化に止まっており、トランスフォーメーションとはほど遠く、生成AIどころではないといってもよい状況かもしれない。AIとの付き合いは米国や中国とは大きく遅れているようである。 Q2. 企業がサステナブル経営にプロアクティブに取り組むため、ビジネスリーダーにはどのような資質、スキル、態度が求められるか? A1. 経営層・ビジネスリーダーの課題と、マネジメントの課題を分けます。 ① 経営層、ビジネスリーダーの資質、スキル、態度 これには無数の経営指南書が出ている。それを読むとスーパーマンにしか経営ができないことになってしまいかねない。あえて2つだけあげておく。 ひとつは、歴史に関する深い認識・洞察力である、哲学ともつながるが。歴史は同じ通りには繰り返さないが、変化の時代には洞察力の基盤には歴史観と哲学は必須である。 ふたつめは多様な人材を束ねて成果に結びつけるマネジメント力である。束ねる組織の業種・業態、その組織の歴史などにより必要とされるマネジメント力は一様ではない。いずれにせよ多様性マネジメントがキーである。ティール・グリーン・オレンジ・アンバー・レッド組織、どれもあり得るし、一つの企業の中でも目的により何が良いかは簡単なことではない。 ② マネジメントの課題 最初に、マネジメントは管理(コントロール)とは違う。ガバナンスの原義は「舵取り」であって「統治」ではない。ましてやマニュアルに従った管理(コントロール)はマネジメントの最下層部分にすぎない。 2つだけ例示。 ひとつは、バリューチェーン・マネジメント(VCM)。日本企業はこれまで単体(よくて連結)のマネジメントで過ごしてきたが、これからはVCMが必須になる。この場合、従来型のマネジメント=超生真面目な微細なマネジメントは百害になる。どうマネジメントするか。 ふたつめは、トップにスーパーマンを期待することは殆どできないとすれば、ミドルアップ・トップダウン型を徹底することが肝要と思われる。そのためにもミドルのスキル・アップ、リスキリングが極めて重要になる。キャリア採用ということだけで済まされる課題ではない。

これが信頼を築くサステナ発信だ -社内広報戦略5つの方法- by Antti Isokangas | NECSUS GREEN FILE

これが信頼を築くサステナ発信だ -社内広報戦略5つの方法- by Antti Isokangas

多くの企業はすでに、サステナビリティ・コミュニケーションが単なる広報活動ではなく、経営戦略の一部であり、信頼を築き、企業の評価を形づくるものであることを理解している。 しかし、多くの企業が見落としていることがある。それは「社内の発信が働き方そのものを変える」という点である。 社員は最初にして最も重要な受け手である キャンペーンを展開し、報告書を出し、新たな取り組みを始める前に、自問すべきは「社員は理解しているか」である。 理解していれば、社員は企業の強力な応援団となり、質問に答え、リスクを見抜き、自分の言葉でストーリーを広げることができる。 理解していなければ、混乱、部門間の不一致、懐疑的な管理職、そして顧客にまで伝わる不信感を生む。 内から外への発信は必須である 強い社内コミュニケーションとは、社内報での小さな記事ではない。時間をかけて「どこへ向かうのか」「なぜ重要なのか」「自分の役割にどう関わるのか」を共有することである。 例えばデンマークの海運大手マースクは、環境移行を進めるにあたり「My Learning Academy」などの学習プラットフォームを通じ、継続的学習文化を社員に提供している。さらに、低炭素燃料を扱うための「Maritime Decarbonization Suite」など専門的研修を行い、社員が変化に対応できるよう支えている。 フィンランドのマリメッコは、素材や循環型の取り組みに関して社員を早い段階から議論に参加させ、デザイナー、調達担当、店舗スタッフをパイロットプログラムやワークショップに巻き込んでいる。誰もが自分の仕事と企業の長期的な環境目標とのつながりを理解している。 Sグループでは、日常業務そのものにサステナビリティを組み込み、食品廃棄削減や生物多様性への理解を全店舗や物流、接客にまで広げている。 サステナビリティは雇用ブランドの一部である 10年前、サステナビリティは採用において「あると良いもの」だった。しかし今では基準そのものであり、とくに若い世代にとって重要である。応募者は企業の気候や社会的責任への姿勢を「入社するか否か」の判断材料としている。 フィンランドのネステ(再生燃料大手)やアウトクンプ(低炭素ステンレス大手)は、採用活動においてサステナビリティを中心に据えている。彼らはエネルギーや鉄鋼の未来を形づくるうえで「移行」「課題」「社員一人ひとりの役割」を率直に語っている。サステナビリティは「事業の一部」ではなく「事業そのもの」である。 調査によれば、Z世代の就職希望者は環境責任、透明性、目的意識を最重要視している。この傾向は創造的職種やNGOに限らず、物流、技術、金融、生産部門にまで広がっている。 社員体験に裏付けられないサステナビリティ主張は、無意味どころか信頼を損なうリスクである。 メッセージは一様ではなく調整が必要である 社外向け発信を投資家、顧客、パートナーに応じて変えるように、社内発信も多様な社員に合わせる必要がある。価値観を変えるのではなく、役割に即した例や形式に翻訳するのである。 例えばフィンランドの食品大手ファッツェルは、パン職人や販売員といった現場社員に対して、食品廃棄や地域への影響、チーム単位の指標など、日常に直結するテーマを用いてサステナビリティを伝えている。 風力大手ヴェスタスでは、サステナビリティを生産や保守、開発にまで組み込み、役割ごとの指標や協働計画を通じて浸透させている。 また、調整とは「聞くこと」でもある。部門や地域によって信頼度や関心は異なる。相手を理解すればするほど、効果的に巻き込むことができる。 社員ネットワークの活用 効果的でありながら十分に活用されていない手段の一つが、社員によるリソースグループ(ERG)である。サステナビリティ分野では、社員が自発的に組織内で活動するネットワークが存在する。 フィンランドのコネ社では、社員主導のサステナビリティ・ネットワークが、グローバル目標を地域の行動へと落とし込んでいる。スウェーデンでは建設パートナーシップ、トゥルクでは物流包装の廃棄削減など、地域ごとに活動している。これらは企業のサステナビリティ部門や広報部門と連携し、社員の主体性と信頼を高めている。 北欧の他企業でも、正式なERGに限らず、横断的なプロジェクトチームや「サステナビリティ大使」プログラムとして機能している。社員主導の取り組みは、価値を部門横断的に広げ、責任を上層部だけでなく全社で共有することにつながる。こうしたグループは「内部の健全な圧力」としても働き、経営陣が見落とす視点を突きつけ、組織全体を正直に保つ役割を果たす。 社内コミュニケーションを強化する5つの方法 ・サステナビリティを事業そのものに結びつける。価値観だけでなく成長や効率、強靭性と関連づける。 ・役割に合わせた発信をする。購買担当と整備士は求める情報が異なる。 ・本物の声を使う。社員自身の語りやチーム単位の物語が信頼を築く。 ・一方通行ではなく対話に投資する。アンケートやワークショップで本音を理解する。 ・小さな成功を祝う。店舗やチーム単位の前進を評価することで勢いが生まれる。 文化こそが真のブランドである 情報があふれ、約束が疑われる時代において、信頼できる社内文化こそ最大の武器であり資産である。社員が使命を理解すれば、彼らは最も強力な発信者となる。 逆に社員が理解していなければ、どれほど立派なキャンペーンも意味をなさないのである。

嵐の中で揺るがない姿勢 -分断社会におけるサステナビリティ・コミュニケーション- by Antti Isokangas | NECSUS GREEN FILE

嵐の中で揺るがない姿勢 -分断社会におけるサステナビリティ・コミュニケーション- by Antti Isokangas

サステナビリティ・コミュニケーションの第一のルールが「信頼を築くこと」であるならば、第二のルールは「風が強まってもバランスを保つこと」である。 そして今日、その風は確実に強まっている。 気候は温暖化し、経済は冷え込み、社会は分断されつつある。エネルギー政策から植物性ミルクに至るまで、あらゆる事柄に文化的な対立の溝が走っている。この状況下では、企業が行うサステナビリティに関する穏やかな声明でさえ、過剰な反応を引き起こす可能性がある。 しかし、沈黙は選択肢ではない。 文化戦争の時代へようこそ 分断はもはや一部の現象ではない。気候変動対策、多様性、国際的責任への見方は、国々でアイデンティティの象徴となっている。単なる「意見の違い」ではなく、相手を否定しなければならない空気がある。 米国では、バドライト、ターゲット、パタゴニアのキャンペーンが強い反発や不買運動を招いた。問題は彼らが何をしたかではなく、「何を象徴している」と受け取られたかにあった。 こうした動きは米国に限られない。安定と高信頼で知られる北欧でも見られる。例えばオーツ麦飲料のオートリーは、植物性食品を推進しすぎて「急進的だ」と批判される一方、大手食品企業と提携したことで「価値を妥協した」と非難されるなど、両側から攻撃を受けている。 ノルウェーやスウェーデンでは電気自動車への優遇策が対立の焦点となり、必要な気候政策とみる人と、エリート向けの特権とみる人に分かれている。フィンランドでは、乳業大手ヴァリオが「カーボンニュートラル牛乳」を掲げたキャンペーンで反発を受けた。「炭素中立の牛」という言葉はすぐにネットミームとなり、意図したメッセージは広がる前に失われた。 圧力の下で:DEIが政治の標的になるとき 米国では近年、一部企業が政治的圧力を受け、多様性・公平性・包摂(DEI)の取り組みを縮小したり、表に出さなくなった。特に保守派の政策立案者や法的な挑戦が強まり、投資ファンドや大手小売業者までもが言葉を和らげ、活動を目立たなくしたのである。 目標が変わったのではなく、政治的コストが高まったからである。 この流れは大きく報道され、企業が「価値に基づく活動」から退くのではないかという懸念を生んだ。 しかし実際は、多くの企業がDEIを放棄してはいない。むしろ、才能の確保や革新性、長期的な持続性に不可欠と考え、取り組みを強めている企業も多い。 北欧では状況は異なるが、同じ教訓が当てはまる。世論は急に変化し、社会的期待が攻撃の道具にされることもある。しかし、サステナビリティや包摂から「論争を避けるために」退くことは、内外に誤ったメッセージを送ることになる。圧力が高まるときこそ、価値観に根ざし、一貫して語り、行動し続ける企業が強くなるのである。 ビジネスは中立ではない 「どちらの立場もとらない」として沈黙を守る企業もある。しかし、サステナビリティや平等について語ること自体が、すでに「未来は大切である」「証拠は重要である」「公平さは必要である」と立場を示しているのである。 中立を装って反応を避けようとすることは、たいていうまくいかない。人々は恐れを嗅ぎ分ける。そして恐れはブランドにとって大きな弱点である。 従業員は企業がどこに立つのかを知りたい。投資家は企業が何を重視しているのかを知りたい。沈黙は盾ではなく、空白である。 声を大きくするのではなく、明確に語ること サステナビリティ・コミュニケーションの目的は、ネット上の議論に勝つことではない。人々を行動に動かし、企業が「どのような未来をつくろうとしているか」を示すことである。 そのためには勇気と明確さ、そして少しの謙虚さが必要である。 フィンランドのエネルギー企業ヘレンは、石炭廃止を明確に打ち出しつつ、再生可能エネルギーへの移行の難しさも率直に語っている。ノルウェーのエクイノールもまた、化石燃料を守る論理から、移行の現実を正直に語る姿勢へと変化している。 嵐の中でバランスを保つためのヒント ・言いたいことを明確に述べること あいまいな表現は誰の心にも響かない。具体的な数字や事実を示すことが重要である。 ・複雑さを認めること サステナビリティはトレードオフに満ちている。その事実を正直に共有することが信頼を生む。 ・自らの声を知ること すべてにコメントする必要はないが、企業の戦略や価値に関わる課題には明確な立場を示すべきである。 ・反発に備えること 本気で取り組めば必ず反対も起こる。それは避けられない。重要なのは事前に準備し、一貫した立場を持つことである。 ・信頼は勇気から生まれる 分断はすぐには消えない。むしろ悪化する可能性すらある。 しかし、明確さと自信をもってこの嵐を乗り越える企業は、より強くなる。信頼は沈黙からではなく、目的を示し、嵐の中でも揺るがずに立つことから生まれるのである。

世界気候エネルギー首長誓約/日本 杉山範子事務局長 紙上インタビュー | NECSUS GREEN FILE

世界気候エネルギー首長誓約/日本 杉山範子事務局長 紙上インタビュー

Q1 気候変動により予測される悪影響と、それに対する地域の対応につき、具体例を教えてください。 悪影響は、地域の気候や産業など、地域性があるため、一様ではありませんが、最も一般的に実施されているのは、熱中症予防対策と防災対策です。 予測される悪影響は、例えば熱中症の場合は、暑熱による健康影響を受ける、最悪の場合は死亡する。これを避けるため、地方自治体は「クーリングシェルター」を設置することとなっており、住民が日中の暑さを避けて過ごすことができる場所を提供しています。ほとんどすべての自治体で実施しています。 このページに様々な事例が紹介されています。 https://adaptation-platform.nies.go.jp/data/index.html#data01 他に、グリーンカーテンの設置を推奨し、コンテストを実施しているところなどがあります。 Q2 上記に係り、世界首長誓約の意義、現状と課題を教えてください。 誓約自治体は、規模の大小にかかわらず、緩和策である脱炭素の取組だけでなく、適応策にも取り組まなければならないため、地域の適応策が進みます。 世界首長誓約では、地域のリスクと脆弱性の評価をしてから目標や具体的な対策を決めることとしており、地域性を把握した取組を進めることができます。リスクと脆弱性評価は事務局がアドバイスなど支援することもあります。 気候変動の影響は全ての分野に及びますが、行政の縦割りが弊害になっています。 適応計画は環境の部署が担当ということになり、他の部署との連携が課題です。 防災や農業などすでに適応策と言える施策を実施しているところが多いなか、どのように既存の施策を適応策と位置づけるか、地域の脆弱性から施策の優先順位をどのように決めるのかなど、課題が多くあります。 一般の方々の認知度が、緩和策に比較して、適応策の方が低いことも課題です。

グリーンウォッシングからグリーントラストへ -サステナブル企業は「人の言葉」で語るべき理由- by Antti Isokangas | NECSUS GREEN FILE

グリーンウォッシングからグリーントラストへ -サステナブル企業は「人の言葉」で語るべき理由- by Antti Isokangas

サスビズ時代のあらゆるステークホルダーとのコミュニケーションで気を付けるべきことは何か?第一人者が世界の潮流から最適解を示します。 環境やサステナビリティを企業がどう語るか? 人々の目はかつてないほど厳しい。あいまいな約束や派手な宣伝に人々は疲れ、耳を貸さない。今や、サステナビリティの伝え方は、企業にとって最大の武器とも、最速の失敗要因ともなりうるのである。 信頼の欠如は政治だけの問題ではない 世界中で人々は政府やメディアへの信頼を失っている。一方、企業は社会で最も信頼される存在へとなりつつある。ただこれは、企業が急に「聖なる存在」となったからではない。他の選択肢が弱体化しているからである。人々は依然として企業の実行力を信じている。企業は「行動する」だけではなく、「社会の信頼を生む方法で伝える」責任を負っているのである。 調査によれば、人々は政府やメディアよりも「自らの勤務先」を信頼する傾向が強い。人々が求めているのは、本物らしさ、行動、そして希望である。だからこそグリーンウォッシングは、倫理やマーケティング上の問題にとどまらず、経営戦略としても重大な失敗を招く要因である。 コミュニケーションはサステナビリティそのものである サステナビリティの発信は付け足しではない。一枚のパンフレットでも、一度きりのキャンペーンでもなく、それ自体が社会に与える影響の中核なのである。信頼を構築し、期待を形づくり、組織文化を育て、行動を社会へと広げる力を持つ。 重要なのは「感心させること」ではなく、「理解されること」である。過度な演出や巧妙さを狙うと、人々は離れ、あるいは批判するのである。 グリーンウォッシングからグリーンハッシングへ グリーンウォッシング(環境配慮を誇張すること)は広く知られている。しかし近年は、グリーンハッシングという新たな問題が広がっている。これは、企業が実際に持続可能な取り組みを行っていても、「批判されることを恐れて語らない」現象である。 その結果、信頼の空白が生じ、声だけ大きい表面的な企業が注目を集め、本来リーダーであるべき企業が沈黙してしまうのである。沈黙は中立ではなく、責任放棄である。 企業がなすべきこと では、企業はどのように行動すべきか。優れた実践から導かれる原則は以下の通りである。 【戦術ではなく真実から語る】 小さな取り組みであっても正直に伝える。ごまかしや誇張よりも誠実さが信頼をもたらす。 【約束ではなく成果を示す】 「2050年にカーボンニュートラル」といった未来目標だけでなく、「今期どのような成果を上げたか」を示す必要がある。意図より証拠、野心より実績である。 【人間の言葉で語る】 専門用語に満ちた表現ではなく、人々が日常で理解できる言葉を使う。ユーモアや謙虚さ、正直さの方がはるかに届きやすい。 【不完全さを認める】 すべてを解決したかのように装うよりも、試行錯誤や課題を共有する方が信頼を得られる。 【地域に根ざし、世界につなげる】 環境問題は地球規模だが、信頼は地域から築かれる。排出削減を語る際には、その成果が地域の生活にどう影響しているかを具体的に示すべきである。 結論 人々は不安や迷いを抱えているが、必ずしも冷笑的ではない。多くの人々は「変化は可能だ」と信じたいのである。 企業がサステナビリティを誠実に伝えれば、単に信頼を得るだけでなく、社会全体の自信を取り戻すことに貢献できる。 完璧である必要はない。しかし、自社が「何を大切にし、何を守るのか」を明確にし、誠実に発信することが不可欠である。静かだが確かなコミュニケーションの力は、単なる戦略ではなく、リーダーシップそのものである。 環境やサステナビリティを企業がどう語るか?人々の目はかつてないほど厳しい。あいまいな約束や派手な宣伝に人々は疲れ、耳を貸さない。今や、サステナビリティの伝え方は、企業にとって最大の武器とも、最速の失敗要因ともなりうるのである。

「宇宙から考えるサステナ経営」 UchuBiz編集長 藤井涼氏紙上インタビュー | NECSUS GREEN FILE

「宇宙から考えるサステナ経営」 UchuBiz編集長 藤井涼氏紙上インタビュー

年率9%で急成長の宇宙市場。10年後の2035年には270兆円規模(2023年の約3倍)になるといいます。 8月2日土にNECSUSが開催したオンライン特別セミナーは、「ロケットだけじゃない 宇宙ビジネス最前線 ~宇宙ゴミ対策や衛星データで守る地球環境~」と題し、宇宙ビジネスのトレンド、そして「宇宙×環境」をフィーチャーした話を特別に盛り込んだものとしました。 講師の藤井涼氏は宇宙ビジネスへの参入を後押しするメディアUchuBizの編集長。 「宇宙って、地上何kmから?」といった基本的な事柄から(答えは100km)、最新の動向、特にイーロン・マスクやジェフ・ベゾスなど、IT業界の巨人の台頭や米中競争の過熱、ポストISS(国際宇宙ステーション) を睨んだ民間企業の動き等、詳細な紹介がありました。 以下、セッション後の紙上インタビューをお届けします。 Q1:宇宙産業(ビジネス)は、人類の最先端の知識や技能をもとに推進されている点で、環境にも配慮した取り組みが多いと聞きますが、具体的には? 藤井:従来の宇宙開発は、むしろ宇宙ゴミを大量に生み出しながら発展をしてきました。現在は環境に配慮した方向に変わりつつあり、打ち上げ後に使い捨てずに戻ってくる再使用型ロケットや、軌道上に飛ぶ無数の宇宙ゴミをロボットアームやレーザーで除去するための宇宙機の開発が進められています。 Q2:宇宙産業(ビジネス)の今後の広がりは、どのような分野で顕著にみられるでしょうか?現在の規模や今後の成長についても教えてください。 藤井:現在は衛星サービスが大きなシェアを占めていますが、今後は宇宙空間を使った実験やエンタメ、月や火星などの探査領域での発展が期待されています。世界経済フォーラムによれば、2023年は6300億ドルだった世界の宇宙市場は、2030年に1.1兆ドル、2035年に1.8兆ドルまで成長すると期待されています。 Q3:宇宙産業(ビジネス)と私たちの普段のビジネスとは、どのようにかかわってくるでしょうか? 藤井:分かりやすいところで言えば、やはり衛星データ活用になります。地球観測衛星のデータや通信衛星を活用して、農業やインフラ点検、防災、離島などでのデジタル教育などに活かせます。ただし、まだ宇宙を飛んでいる衛星の機数が少ないため、十分な頻度で撮影ができていないことが課題です。将来的には10分ごとの準リアルタイム撮影も可能になると言われており、そうなれば地上のリアルタイムデータとのシームレスな連携などもできそうです。 Q4:宇宙ビジネスに従事する方々や、目指す方々にとって、環境経営を学ぶ必要性をどのように考えていますか? 藤井:宇宙産業の中でも特に「衛星」は、地球のさまざまなデータを広域かつ定点で取得できる数少ない領域であり、環境改善に役立てる義務があると考えています。すでに衛星データを使って、森林伐採を監視したり、温室効果ガス排出量を把握したり、海洋汚染を早期発見したりするといった取り組みが各国で進んでいます。 ありがとうございました。

今、サステナ人材に問われる「感じる力」by Thomas Kolster | NECSUS GREEN FILE

今、サステナ人材に問われる「感じる力」by Thomas Kolster

*6月にフランス・カンヌで開催された世界最大規模の広告とコミュニケーションの祭典「カンヌ・ライオンズ」で講演した同氏の寄稿です。 サステナ停滞は創造力で打ち破れ! -カンヌライオンズが教えてくれたこと- 今、サステナビリティには問題がある。それは「感情的に枯渇してしまっている」ことだ。多くのコミュニケーションは誠実ではあるが、生命力に欠けている――技術的には正確でも、平板なのだ。理解が足りないのではない。感じる力が足りないのだ。 今年のカンヌライオンズで、私は「感情」こそが欠けている重要な要素だと再認識した。世界最大の広告クリエイティビティの祭典は、感情をリセットする絶好の機会にもなった――すべてが手に余るように感じられる中で、私たちが本当に大切にすべきことと再びつながらせてくれたのだ。 そして、カンヌといえば華やかさで知られているが、同時に非常に真剣な競争の場でもある。93か国から26,900件のエントリーが集まり、34のグランプリが授与された。そのうち22作品がサステナビリティを中心に据えたものだった。これは偶然ではない。サステナビリティが、創造性と人間性を伴って語られたとき、人々の心を動かし、成果を生み出すという証なのだ。 笑いから課題解決へ 今年のキャンペーンの中には、実に笑えるものもあった。例えば、ニュージーランドのヘルペス財団による「世界で最もヘルペスを持つのに最適な場所」という作品。タブー視されがちなテーマを巧妙かつコミカルに切り取りつつ、スティグマの払拭に真剣に取り組んだ好例だ。 一方で、社会問題に真正面から取り組んだキャンペーンもあった。フランスのAXAによる「Three Words(3つの言葉)」という保険ポリシーの改定では、「家庭内暴力」という言葉を補償対象に加えることで、被害者への緊急支援や避難サービスの提供を可能にした。また、ブラジルの大手化粧品メーカーNaturaは、AIドローンを使ってアマゾンの樹木種をマッピングし、同地域最大規模の樹木インベントリを作成。地域住民はそのデータを活用して、持続可能な伐採を実践している。 そしてロレアルは、「Because I’m worth it(私はそれだけの価値がある)」という象徴的なコピーを再び取り上げた18分間のドキュメンタリーで、深い感情に訴える力を証明した。重みのあるメッセージには、人はしっかり耳を傾けるのだ。 語るだけでなく、行動も? 興味深いことに、気候変動への政治的反発(特に米国)を前にして、多くのブランドが沈黙している一方、カンヌではサステナビリティに関する議論が活発だった。業界は後退するどころか、むしろギアを上げていたのだ。 国連グローバル・コンパクトは「持続可能な成長のためのCMOブループリント」を新たに発表。フェスティバル自体も初となる「サステナビリティ・ハブ」を設置し、「Open House for Good」という取り組みを継続。これにより、重要な議論により広い参加を促し、多様な声を招き入れる姿勢を見せた。 しかし、楽観だけではなかった。 ロゼワインに浸されたリヴィエラでの現実チェック 活気に満ちた空気の裏では、不安の高まりがはっきりと感じられた。AIの台頭から気候変動の危機まで、壇上でも舞台裏でも会話は希望と不安の間を行き来していた。 Appleの副社長、トール・マイレン氏は「自動化時代における人間の創造力の価値」を強調したが、その言葉はやや現実とズレているようにも感じられた。テクノロジーはもはや「忍び寄って」いる段階ではない――すでにどっぷり浸かっているのだ。ビーチでのプロモーションからパネルの構成に至るまで、テックの存在感は圧倒的だった。そしてハリウッドのクリエイターたちが団結して立ち向かっているのとは対照的に、広告業界はどこに向かうかを問うことなく、ただ波に乗っているようにも見えた。 サステナビリティのループにとらわれた私たち ツールも、才能も、ソリューションも揃っている。それなのに、システムはどこか壊れているように感じられる。私たちは堂々巡りを続けている。グリーンウォッシングを論じながら、本質的な「行動しないこと」の問題を見過ごしているのだ。 現実には、多くの人が「サステナビリティの砂漠」の中に生きている。いわゆる「より良い選択肢」も、結局は化石燃料に大きく依存している。流通とメディアに権力が集中しているせいで、真に再生可能な解決策は一般にはなかなか届かない。 それでも、あらゆる分野に「より良い商品」は存在している。1.5℃以下に抑えるための解決策も、すでにある。なのに、なぜ私たちはそれらを拡大しないのか? 今こそ、舵を取るとき 広告は人が動かすビジネスだ。プラットフォームやフレームワークが変化を生むのではない。人が生み出すのだ。だからこそ、私たちはもはや傍観していてはならない。 この業界の未来――ひいては、私たちの「社会的な活動の正当性」を守るためにも、今こそ立ち上がるべきときだ。新たな「パーパスキャンペーン」ではなく、本物のリーダーシップで。 カンヌは、私たちに「可能性」を見せてくれた。次は、私たちがそのインスピレーションを「方向性」に変える番だ。 さあ、あなたは準備ができている?

Sustainable Business Nordic 2025 開催(後編) | NECSUS GREEN FILE

Sustainable Business Nordic 2025 開催(後編)

Sustainable Business Nordic 2025 開催(後編) 5月7日、環境先進国・フィンランドの首都ヘルシンキで開催された「Sustainable Business Nordic 2025」。 サステナビリティを「理念」から「実践」へと進める各国企業の最新動向を、NECSUS Green Fileが現地取材しました。 トピックはCO₂削減制度の最新動向から欧州企業のリーダーシップ、技術活用、ESG戦略など多岐に渡り、関係者間のネットワーキングも盛んに行なわれていました。以下後編です。 「Technology Meets Nature」のタイトルで講演したのはコンサル・エンジニアリングのランボル社のサーラ・ヴァウラモ=ネイチャーユニット主任。破壊されつつある自然の状態を科学技術で測定し、戦略を練り、実行し、結果を確認していくプロセスについて、実例と共に説明しました。またネイチャーポジティブ投資の判断材料としての自然調査の必要性を強調しました。 エコバイオ社のアク・コーコネン=シニアコンサルタントは、自社のサステナビリティマネジメントと情報開示業務についてプレゼン。欧州が構築していくサステナレポートをデジタルなエコシステム構築と重ね合わせているところに、同社の提案の価値が見られます。 サステナ移行期の企業文化とリーダーシップについて語ったのはコネクレーンズ社のアンニーナ・ヴィルタ-トイッカ。「持続可能な未来に向けての企業文化醸成」(Corporate Culture for a Sustainable Future)と題した講演を行ない、本学の狙いとシンクロする発言をしています。 「サステナビリティを企業理念や方針の中核に据えるためには、社員ひとりひとりの意識が大切であるが、その醸成には、ひとりひとりの日々の活動にサステナ的意味合いがあることを認識させること、さらにそのためにはトップ層の強力なリーダーシップが必要」と同氏。コッターの変革の8段階説をイメージすると、危機意識の高い小グループからのスタートがひとつの方法であり、大企業であれば、中間管理職がその役も担うことになるでしょう。 小グルーブでのトップの成長も必要であり、かつ頻度の高いコミュニケーションが問われます。同じく登壇したPR専門家のアンティ・イソカンガスも「時代や内容に関わらず、とにかくコミュニケーションで信頼を得ること」と語っていたことと重なります。 ヴィルタ-トイッカの講演後、CSO(最高サステナビリティ責任者)の育成について尋ねたところ、「要はその立場の人が真剣に取り組むかどうか。これはマーケティングやファイナンスといった科目で教えられることではない」とのコメントでした。本学はこれを、教科内容のクロスオーバーのあり方、つまりリーダーシップは各教科で身に着ける考え方・実践手段と両睨みで育てることだと考えます。真剣さ、熱心さはことを成すに必要であり、それも学ぶ(教える、あるいはそうした雰囲気を作る)ことができるのも、また本学の姿でありたいと考えます。 ▼ (前編)現地レポートはこちらから Sustainable Business Nordic 2025 開催レポート CO₂削減制度の最新動向や、欧州企業のリーダーシップ・技術活用・ESG戦略など、注目ポイントを多数掲載しています。

【NECSUS Green File】インタビュー ピア・エルキンへイモ (May 7, 2025) | NECSUS GREEN FILE

【NECSUS Green File】インタビュー ピア・エルキンへイモ (May 7, 2025)

-本日は「NECSUS Channel」にご参加いただき、ありがとうございます。まずは自己紹介をどうぞ。「ありがとうございます。ピアと申します。ノルディック・ナノという会社で、パートナー兼投資家対応およびESG担当をしています。ノルディック・ナノでは、薄型の太陽電池フィルムやソーラーパネル、それから無害な金属でできた固体塩電池などを製造しています。太陽エネルギーを効率よく吸収・活用しており、現在主流のシリコン製やペロブスカイト系の太陽電池に比べて、2倍近くの効率を実現しています。合わせて、LUT大学の理事も務めています。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」、特に目標13「気候変動対策」に貢献していることで、世界的に知られている大学です。私自身も、気候変動関連の投資を通じて、経済システムをより持続可能なものにすることを目指し、アドボケイト(提唱者)としても活動しています。」 -素晴らしいですね。大学では教えていらっしゃるのでしょうか?「いえ、現在は大学では教鞭をとっていません。理事としての関わりのみです。ただし、スタートアップへのコーチングは行っています。特に「クライメートテック(気候技術)」や「デジタル×気候テック」の領域ですね。私のキャリアはもともとデジタルやAIの分野から始まっているので、その知見を活かしています。サステナビリティとAIをどう融合するかという話も、とても面白いトピックですね。」 -ビジネスとしての成長も感じていますか?「はい、確実に成長していると感じます。ただし、それには3つの要素が必要です。1つ目は、「これはシステム全体の変化だ」と私たちが理解すること。つまり、消費者として、市民として、私たち一人ひとりが行動を変える必要があります。2つ目は、企業間取引の世界です。企業が責任を持つ必要があります。そして、すでに多くの企業が短期間で地球にとって非常に大きな貢献をしています。3つ目は、政府の役割です。政府は市民だけでなく、企業や社会のあらゆる主体に対して、行動を促すインセンティブを提供することができます。これは、次世代のために美しい地球を残すためにも欠かせません。」 -サステナビリティを促進する上で、どんなリーダーシップスタイルや組織文化が有効だとお考えですか?「北欧の国々に共通しているのは、フラットな組織構造です。特にスタートアップのような環境では、肩書きよりもアイデアが重視されます。とはいえ、北欧にも伝統的な組織は存在しています。ここヘルシンキでもそうですが、そうした組織では「誰が考えるリーダーになるか」が重要です。時には、取締役会からそうしたリーダーが生まれます。最近の傾向として、高いポジションに選ばれる人たちは、単なる経営のプロフェッショナルではなく、「サステナビリティへの理解が深い人」が多くなってきています。なぜなら、それが競争優位につながるからです。リーダーとは、まず自らが模範となる存在でなければなりません。自社がどのような製品を作っていようと、「環境に配慮している」といった虚偽の主張は絶対に避けるべきです。EUは「グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)」を規制し、罰則を設けようとしています。」 -なるほど。あらゆる面でリーダーシップが問われると。「その通りです。企業のリーダーは、多様な形で革新を起こし、あらゆる場面でリーダーシップを発揮する必要があります。たとえば、消費者向けのビジネスであれば、マーケティング手法を見直すべきです。ノベルティを配るにしても、それが持続可能な方法なのかを考えるべきです。さらにEUでは、2025年から大企業に対して「直接・間接的な排出量の報告」が義務化となりましたが、これは単なる規制ではなく、ビジネスモデルそのものを「持続可能で、かつ、未来に適応できる形」へと変えていく動きです。地球規模での視点が求められています。-それは、会社全体に浸透していなければ意味がないですね。「その通りです。サステナビリティを組織全体に根付かせ、すべての社員にとって信頼できるものでなければなりません。新入社員であれ、幹部であれ、リーダーが「口だけ」なのかどうかは、すぐに見抜かれてしまいます。だからこそ、「本気で実践している」姿勢が不可欠です。そして最後に強調したいのは、「サステナブルであることが、企業の独自の価値提案になる」という点です。これは単なる理想論ではなく、ビジネスチャンスでもあるのです。そのためには、こうした分野にきちんと教育を受けた人材が必要です。NECSUSのカリキュラムにも、その視点がしっかり含まれていると感じました。」

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