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グリーンウォッシングからグリーントラストへ -サステナブル企業は「人の言葉」で語るべき理由- by Antti Isokangas | NECSUS GREEN FILE

グリーンウォッシングからグリーントラストへ -サステナブル企業は「人の言葉」で語るべき理由- by Antti Isokangas

サスビズ時代のあらゆるステークホルダーとのコミュニケーションで気を付けるべきことは何か?第一人者が世界の潮流から最適解を示します。 環境やサステナビリティを企業がどう語るか? 人々の目はかつてないほど厳しい。あいまいな約束や派手な宣伝に人々は疲れ、耳を貸さない。今や、サステナビリティの伝え方は、企業にとって最大の武器とも、最速の失敗要因ともなりうるのである。 信頼の欠如は政治だけの問題ではない 世界中で人々は政府やメディアへの信頼を失っている。一方、企業は社会で最も信頼される存在へとなりつつある。ただこれは、企業が急に「聖なる存在」となったからではない。他の選択肢が弱体化しているからである。人々は依然として企業の実行力を信じている。企業は「行動する」だけではなく、「社会の信頼を生む方法で伝える」責任を負っているのである。 調査によれば、人々は政府やメディアよりも「自らの勤務先」を信頼する傾向が強い。人々が求めているのは、本物らしさ、行動、そして希望である。だからこそグリーンウォッシングは、倫理やマーケティング上の問題にとどまらず、経営戦略としても重大な失敗を招く要因である。 コミュニケーションはサステナビリティそのものである サステナビリティの発信は付け足しではない。一枚のパンフレットでも、一度きりのキャンペーンでもなく、それ自体が社会に与える影響の中核なのである。信頼を構築し、期待を形づくり、組織文化を育て、行動を社会へと広げる力を持つ。 重要なのは「感心させること」ではなく、「理解されること」である。過度な演出や巧妙さを狙うと、人々は離れ、あるいは批判するのである。 グリーンウォッシングからグリーンハッシングへ グリーンウォッシング(環境配慮を誇張すること)は広く知られている。しかし近年は、グリーンハッシングという新たな問題が広がっている。これは、企業が実際に持続可能な取り組みを行っていても、「批判されることを恐れて語らない」現象である。 その結果、信頼の空白が生じ、声だけ大きい表面的な企業が注目を集め、本来リーダーであるべき企業が沈黙してしまうのである。沈黙は中立ではなく、責任放棄である。 企業がなすべきこと では、企業はどのように行動すべきか。優れた実践から導かれる原則は以下の通りである。 【戦術ではなく真実から語る】 小さな取り組みであっても正直に伝える。ごまかしや誇張よりも誠実さが信頼をもたらす。 【約束ではなく成果を示す】 「2050年にカーボンニュートラル」といった未来目標だけでなく、「今期どのような成果を上げたか」を示す必要がある。意図より証拠、野心より実績である。 【人間の言葉で語る】 専門用語に満ちた表現ではなく、人々が日常で理解できる言葉を使う。ユーモアや謙虚さ、正直さの方がはるかに届きやすい。 【不完全さを認める】 すべてを解決したかのように装うよりも、試行錯誤や課題を共有する方が信頼を得られる。 【地域に根ざし、世界につなげる】 環境問題は地球規模だが、信頼は地域から築かれる。排出削減を語る際には、その成果が地域の生活にどう影響しているかを具体的に示すべきである。 結論 人々は不安や迷いを抱えているが、必ずしも冷笑的ではない。多くの人々は「変化は可能だ」と信じたいのである。 企業がサステナビリティを誠実に伝えれば、単に信頼を得るだけでなく、社会全体の自信を取り戻すことに貢献できる。 完璧である必要はない。しかし、自社が「何を大切にし、何を守るのか」を明確にし、誠実に発信することが不可欠である。静かだが確かなコミュニケーションの力は、単なる戦略ではなく、リーダーシップそのものである。 環境やサステナビリティを企業がどう語るか?人々の目はかつてないほど厳しい。あいまいな約束や派手な宣伝に人々は疲れ、耳を貸さない。今や、サステナビリティの伝え方は、企業にとって最大の武器とも、最速の失敗要因ともなりうるのである。

「宇宙から考えるサステナ経営」 UchuBiz編集長 藤井涼氏紙上インタビュー | NECSUS GREEN FILE

「宇宙から考えるサステナ経営」 UchuBiz編集長 藤井涼氏紙上インタビュー

年率9%で急成長の宇宙市場。10年後の2035年には270兆円規模(2023年の約3倍)になるといいます。 8月2日土にNECSUSが開催したオンライン特別セミナーは、「ロケットだけじゃない 宇宙ビジネス最前線 ~宇宙ゴミ対策や衛星データで守る地球環境~」と題し、宇宙ビジネスのトレンド、そして「宇宙×環境」をフィーチャーした話を特別に盛り込んだものとしました。 講師の藤井涼氏は宇宙ビジネスへの参入を後押しするメディアUchuBizの編集長。 「宇宙って、地上何kmから?」といった基本的な事柄から(答えは100km)、最新の動向、特にイーロン・マスクやジェフ・ベゾスなど、IT業界の巨人の台頭や米中競争の過熱、ポストISS(国際宇宙ステーション) を睨んだ民間企業の動き等、詳細な紹介がありました。 以下、セッション後の紙上インタビューをお届けします。 Q1:宇宙産業(ビジネス)は、人類の最先端の知識や技能をもとに推進されている点で、環境にも配慮した取り組みが多いと聞きますが、具体的には? 藤井:従来の宇宙開発は、むしろ宇宙ゴミを大量に生み出しながら発展をしてきました。現在は環境に配慮した方向に変わりつつあり、打ち上げ後に使い捨てずに戻ってくる再使用型ロケットや、軌道上に飛ぶ無数の宇宙ゴミをロボットアームやレーザーで除去するための宇宙機の開発が進められています。 Q2:宇宙産業(ビジネス)の今後の広がりは、どのような分野で顕著にみられるでしょうか?現在の規模や今後の成長についても教えてください。 藤井:現在は衛星サービスが大きなシェアを占めていますが、今後は宇宙空間を使った実験やエンタメ、月や火星などの探査領域での発展が期待されています。世界経済フォーラムによれば、2023年は6300億ドルだった世界の宇宙市場は、2030年に1.1兆ドル、2035年に1.8兆ドルまで成長すると期待されています。 Q3:宇宙産業(ビジネス)と私たちの普段のビジネスとは、どのようにかかわってくるでしょうか? 藤井:分かりやすいところで言えば、やはり衛星データ活用になります。地球観測衛星のデータや通信衛星を活用して、農業やインフラ点検、防災、離島などでのデジタル教育などに活かせます。ただし、まだ宇宙を飛んでいる衛星の機数が少ないため、十分な頻度で撮影ができていないことが課題です。将来的には10分ごとの準リアルタイム撮影も可能になると言われており、そうなれば地上のリアルタイムデータとのシームレスな連携などもできそうです。 Q4:宇宙ビジネスに従事する方々や、目指す方々にとって、環境経営を学ぶ必要性をどのように考えていますか? 藤井:宇宙産業の中でも特に「衛星」は、地球のさまざまなデータを広域かつ定点で取得できる数少ない領域であり、環境改善に役立てる義務があると考えています。すでに衛星データを使って、森林伐採を監視したり、温室効果ガス排出量を把握したり、海洋汚染を早期発見したりするといった取り組みが各国で進んでいます。 ありがとうございました。

今、サステナ人材に問われる「感じる力」by Thomas Kolster | NECSUS GREEN FILE

今、サステナ人材に問われる「感じる力」by Thomas Kolster

*6月にフランス・カンヌで開催された世界最大規模の広告とコミュニケーションの祭典「カンヌ・ライオンズ」で講演した同氏の寄稿です。 サステナ停滞は創造力で打ち破れ! -カンヌライオンズが教えてくれたこと- 今、サステナビリティには問題がある。それは「感情的に枯渇してしまっている」ことだ。多くのコミュニケーションは誠実ではあるが、生命力に欠けている――技術的には正確でも、平板なのだ。理解が足りないのではない。感じる力が足りないのだ。 今年のカンヌライオンズで、私は「感情」こそが欠けている重要な要素だと再認識した。世界最大の広告クリエイティビティの祭典は、感情をリセットする絶好の機会にもなった――すべてが手に余るように感じられる中で、私たちが本当に大切にすべきことと再びつながらせてくれたのだ。 そして、カンヌといえば華やかさで知られているが、同時に非常に真剣な競争の場でもある。93か国から26,900件のエントリーが集まり、34のグランプリが授与された。そのうち22作品がサステナビリティを中心に据えたものだった。これは偶然ではない。サステナビリティが、創造性と人間性を伴って語られたとき、人々の心を動かし、成果を生み出すという証なのだ。 笑いから課題解決へ 今年のキャンペーンの中には、実に笑えるものもあった。例えば、ニュージーランドのヘルペス財団による「世界で最もヘルペスを持つのに最適な場所」という作品。タブー視されがちなテーマを巧妙かつコミカルに切り取りつつ、スティグマの払拭に真剣に取り組んだ好例だ。 一方で、社会問題に真正面から取り組んだキャンペーンもあった。フランスのAXAによる「Three Words(3つの言葉)」という保険ポリシーの改定では、「家庭内暴力」という言葉を補償対象に加えることで、被害者への緊急支援や避難サービスの提供を可能にした。また、ブラジルの大手化粧品メーカーNaturaは、AIドローンを使ってアマゾンの樹木種をマッピングし、同地域最大規模の樹木インベントリを作成。地域住民はそのデータを活用して、持続可能な伐採を実践している。 そしてロレアルは、「Because I’m worth it(私はそれだけの価値がある)」という象徴的なコピーを再び取り上げた18分間のドキュメンタリーで、深い感情に訴える力を証明した。重みのあるメッセージには、人はしっかり耳を傾けるのだ。 語るだけでなく、行動も? 興味深いことに、気候変動への政治的反発(特に米国)を前にして、多くのブランドが沈黙している一方、カンヌではサステナビリティに関する議論が活発だった。業界は後退するどころか、むしろギアを上げていたのだ。 国連グローバル・コンパクトは「持続可能な成長のためのCMOブループリント」を新たに発表。フェスティバル自体も初となる「サステナビリティ・ハブ」を設置し、「Open House for Good」という取り組みを継続。これにより、重要な議論により広い参加を促し、多様な声を招き入れる姿勢を見せた。 しかし、楽観だけではなかった。 ロゼワインに浸されたリヴィエラでの現実チェック 活気に満ちた空気の裏では、不安の高まりがはっきりと感じられた。AIの台頭から気候変動の危機まで、壇上でも舞台裏でも会話は希望と不安の間を行き来していた。 Appleの副社長、トール・マイレン氏は「自動化時代における人間の創造力の価値」を強調したが、その言葉はやや現実とズレているようにも感じられた。テクノロジーはもはや「忍び寄って」いる段階ではない――すでにどっぷり浸かっているのだ。ビーチでのプロモーションからパネルの構成に至るまで、テックの存在感は圧倒的だった。そしてハリウッドのクリエイターたちが団結して立ち向かっているのとは対照的に、広告業界はどこに向かうかを問うことなく、ただ波に乗っているようにも見えた。 サステナビリティのループにとらわれた私たち ツールも、才能も、ソリューションも揃っている。それなのに、システムはどこか壊れているように感じられる。私たちは堂々巡りを続けている。グリーンウォッシングを論じながら、本質的な「行動しないこと」の問題を見過ごしているのだ。 現実には、多くの人が「サステナビリティの砂漠」の中に生きている。いわゆる「より良い選択肢」も、結局は化石燃料に大きく依存している。流通とメディアに権力が集中しているせいで、真に再生可能な解決策は一般にはなかなか届かない。 それでも、あらゆる分野に「より良い商品」は存在している。1.5℃以下に抑えるための解決策も、すでにある。なのに、なぜ私たちはそれらを拡大しないのか? 今こそ、舵を取るとき 広告は人が動かすビジネスだ。プラットフォームやフレームワークが変化を生むのではない。人が生み出すのだ。だからこそ、私たちはもはや傍観していてはならない。 この業界の未来――ひいては、私たちの「社会的な活動の正当性」を守るためにも、今こそ立ち上がるべきときだ。新たな「パーパスキャンペーン」ではなく、本物のリーダーシップで。 カンヌは、私たちに「可能性」を見せてくれた。次は、私たちがそのインスピレーションを「方向性」に変える番だ。 さあ、あなたは準備ができている?

Sustainable Business Nordic 2025 開催(後編) | NECSUS GREEN FILE

Sustainable Business Nordic 2025 開催(後編)

Sustainable Business Nordic 2025 開催(後編) 5月7日、環境先進国・フィンランドの首都ヘルシンキで開催された「Sustainable Business Nordic 2025」。 サステナビリティを「理念」から「実践」へと進める各国企業の最新動向を、NECSUS Green Fileが現地取材しました。 トピックはCO₂削減制度の最新動向から欧州企業のリーダーシップ、技術活用、ESG戦略など多岐に渡り、関係者間のネットワーキングも盛んに行なわれていました。以下後編です。 「Technology Meets Nature」のタイトルで講演したのはコンサル・エンジニアリングのランボル社のサーラ・ヴァウラモ=ネイチャーユニット主任。破壊されつつある自然の状態を科学技術で測定し、戦略を練り、実行し、結果を確認していくプロセスについて、実例と共に説明しました。またネイチャーポジティブ投資の判断材料としての自然調査の必要性を強調しました。 エコバイオ社のアク・コーコネン=シニアコンサルタントは、自社のサステナビリティマネジメントと情報開示業務についてプレゼン。欧州が構築していくサステナレポートをデジタルなエコシステム構築と重ね合わせているところに、同社の提案の価値が見られます。 サステナ移行期の企業文化とリーダーシップについて語ったのはコネクレーンズ社のアンニーナ・ヴィルタ-トイッカ。「持続可能な未来に向けての企業文化醸成」(Corporate Culture for a Sustainable Future)と題した講演を行ない、本学の狙いとシンクロする発言をしています。 「サステナビリティを企業理念や方針の中核に据えるためには、社員ひとりひとりの意識が大切であるが、その醸成には、ひとりひとりの日々の活動にサステナ的意味合いがあることを認識させること、さらにそのためにはトップ層の強力なリーダーシップが必要」と同氏。コッターの変革の8段階説をイメージすると、危機意識の高い小グループからのスタートがひとつの方法であり、大企業であれば、中間管理職がその役も担うことになるでしょう。 小グルーブでのトップの成長も必要であり、かつ頻度の高いコミュニケーションが問われます。同じく登壇したPR専門家のアンティ・イソカンガスも「時代や内容に関わらず、とにかくコミュニケーションで信頼を得ること」と語っていたことと重なります。 ヴィルタ-トイッカの講演後、CSO(最高サステナビリティ責任者)の育成について尋ねたところ、「要はその立場の人が真剣に取り組むかどうか。これはマーケティングやファイナンスといった科目で教えられることではない」とのコメントでした。本学はこれを、教科内容のクロスオーバーのあり方、つまりリーダーシップは各教科で身に着ける考え方・実践手段と両睨みで育てることだと考えます。真剣さ、熱心さはことを成すに必要であり、それも学ぶ(教える、あるいはそうした雰囲気を作る)ことができるのも、また本学の姿でありたいと考えます。 ▼ (前編)現地レポートはこちらから Sustainable Business Nordic 2025 開催レポート CO₂削減制度の最新動向や、欧州企業のリーダーシップ・技術活用・ESG戦略など、注目ポイントを多数掲載しています。

【NECSUS Green File】インタビュー ピア・エルキンへイモ (May 7, 2025) | NECSUS GREEN FILE

【NECSUS Green File】インタビュー ピア・エルキンへイモ (May 7, 2025)

-本日は「NECSUS Channel」にご参加いただき、ありがとうございます。まずは自己紹介をどうぞ。「ありがとうございます。ピアと申します。ノルディック・ナノという会社で、パートナー兼投資家対応およびESG担当をしています。ノルディック・ナノでは、薄型の太陽電池フィルムやソーラーパネル、それから無害な金属でできた固体塩電池などを製造しています。太陽エネルギーを効率よく吸収・活用しており、現在主流のシリコン製やペロブスカイト系の太陽電池に比べて、2倍近くの効率を実現しています。合わせて、LUT大学の理事も務めています。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」、特に目標13「気候変動対策」に貢献していることで、世界的に知られている大学です。私自身も、気候変動関連の投資を通じて、経済システムをより持続可能なものにすることを目指し、アドボケイト(提唱者)としても活動しています。」 -素晴らしいですね。大学では教えていらっしゃるのでしょうか?「いえ、現在は大学では教鞭をとっていません。理事としての関わりのみです。ただし、スタートアップへのコーチングは行っています。特に「クライメートテック(気候技術)」や「デジタル×気候テック」の領域ですね。私のキャリアはもともとデジタルやAIの分野から始まっているので、その知見を活かしています。サステナビリティとAIをどう融合するかという話も、とても面白いトピックですね。」 -ビジネスとしての成長も感じていますか?「はい、確実に成長していると感じます。ただし、それには3つの要素が必要です。1つ目は、「これはシステム全体の変化だ」と私たちが理解すること。つまり、消費者として、市民として、私たち一人ひとりが行動を変える必要があります。2つ目は、企業間取引の世界です。企業が責任を持つ必要があります。そして、すでに多くの企業が短期間で地球にとって非常に大きな貢献をしています。3つ目は、政府の役割です。政府は市民だけでなく、企業や社会のあらゆる主体に対して、行動を促すインセンティブを提供することができます。これは、次世代のために美しい地球を残すためにも欠かせません。」 -サステナビリティを促進する上で、どんなリーダーシップスタイルや組織文化が有効だとお考えですか?「北欧の国々に共通しているのは、フラットな組織構造です。特にスタートアップのような環境では、肩書きよりもアイデアが重視されます。とはいえ、北欧にも伝統的な組織は存在しています。ここヘルシンキでもそうですが、そうした組織では「誰が考えるリーダーになるか」が重要です。時には、取締役会からそうしたリーダーが生まれます。最近の傾向として、高いポジションに選ばれる人たちは、単なる経営のプロフェッショナルではなく、「サステナビリティへの理解が深い人」が多くなってきています。なぜなら、それが競争優位につながるからです。リーダーとは、まず自らが模範となる存在でなければなりません。自社がどのような製品を作っていようと、「環境に配慮している」といった虚偽の主張は絶対に避けるべきです。EUは「グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)」を規制し、罰則を設けようとしています。」 -なるほど。あらゆる面でリーダーシップが問われると。「その通りです。企業のリーダーは、多様な形で革新を起こし、あらゆる場面でリーダーシップを発揮する必要があります。たとえば、消費者向けのビジネスであれば、マーケティング手法を見直すべきです。ノベルティを配るにしても、それが持続可能な方法なのかを考えるべきです。さらにEUでは、2025年から大企業に対して「直接・間接的な排出量の報告」が義務化となりましたが、これは単なる規制ではなく、ビジネスモデルそのものを「持続可能で、かつ、未来に適応できる形」へと変えていく動きです。地球規模での視点が求められています。-それは、会社全体に浸透していなければ意味がないですね。「その通りです。サステナビリティを組織全体に根付かせ、すべての社員にとって信頼できるものでなければなりません。新入社員であれ、幹部であれ、リーダーが「口だけ」なのかどうかは、すぐに見抜かれてしまいます。だからこそ、「本気で実践している」姿勢が不可欠です。そして最後に強調したいのは、「サステナブルであることが、企業の独自の価値提案になる」という点です。これは単なる理想論ではなく、ビジネスチャンスでもあるのです。そのためには、こうした分野にきちんと教育を受けた人材が必要です。NECSUSのカリキュラムにも、その視点がしっかり含まれていると感じました。」

【NECSUS Green File】インタビュー =雨宮寛の「先見」= | NECSUS GREEN FILE

【NECSUS Green File】インタビュー =雨宮寛の「先見」=

【NECSUS GREEN FILE】 インタビュー =雨宮寛の「先見」= 「Green MBA®」の商標を日本で登録し、その普及と向上に努める雨宮先生にお聞きしました。 略歴:慶應義塾大学経済学部卒業。コロンビア大学ビジネススクールで経営学修士号、ハーバード大学ケネディ行政大学院で行政学修士号を取得。クレディ・スイスやモルガン・スタンレーなどの外資系金融機関で活躍した後、DWMインカムファンズ日本事業代表、アラベスクS-Ray日本支店代表、RG Sciences日本事業担当として活動。2006年に有限会社コーポレートシチズンシップを設立し、起業と社会貢献を広めるための活動を展開。また、個人としても社会貢献に強い関心を持ち、NPO法人ハンズオン東京の顧問を務めている。さらに、法政大学現代福祉学部および明治大学公共政策大学院にて兼任講師として教鞭を執っている。ビジネス書の翻訳家としても活動中。 Q1. 経済学がご専門ですが、実務に関するご経歴についてお聞かせください。 実家が広告会社を営んでいた影響もあり、大学では経済学を学びました。経済を通じて世の中の仕組みを理解したいという思いからです。卒業した頃はバブル崩壊の直後で、広告業界も大変厳しい状況にありました。さらに父が病で倒れ、障害を持ったこともあり、家業を廃業する決断をしました。 その後、外資系の金融機関に就職し、ここが現在のキャリアの起点です。ただ単に投資による収益を追求するのではなく、投資を通じて社会に良い影響を与えたいという思いがありました。当時の金融業界では収益性が最優先で、社会的意義や環境への配慮はほとんど重視されていませんでしたが、私は独自に調査を重ね、環境にも社会にも良い投資商品を構想するようになりました。 Q2. 海外のサステナビリティ評価会社での活動について教えてください。 金融業界での経験を通して、さらに専門知識を深めたいという思いから、30代半ばでハーバード大学ケネディスクールに留学しました。行政や政策に特化したスクールですが、企業の社会的責任やコーポレート・ガバナンスといったテーマを扱うプログラムがありました。 そこで出会ったのが、国連「ビジネスと人権」指導原則を策定したジョン・ラギー教授です。彼のもとで、企業が人権に関する方針や救済制度を整備しているかを調査するプロジェクトに参加しました。 また、サステナビリティ評価の先駆者であるKLDを創業したスティーブン・ライデンバーグ氏のもと、同氏が設立したボストン・カレッジの責任投資研究所*にてインターンを経験し、サステナビリティ評価の実務に触れました。こうした出会いや学びが、今のキャリアに大きな影響を与えました。 *現在はハーバード大学ケネディスクールに移設 Q3. グローバル人材として必要な資質とは? 可愛がられる存在になること。これは私が若い人に伝えたいメッセージです。自信や実績は重要ですが、それだけでは周囲との信頼関係を築くのが難しいことがあります。素直に学ぶ姿勢、助けを求める勇気、感謝の気持ちを忘れないことが、グローバルな場でも大切です。 Q4. 環境経営における日本や世界の課題とは? 気候変動の影響は誰もが実感しているにもかかわらず、国や政治体制の違い、あるいは国内外の分断によって対応が進まないという構造的な問題があります。環境経営の課題は、企業単体の問題にとどまらず、地球規模の政策的・社会的課題と密接に関わっています。 Q5. 社会人が学び続ける意義とは? 仕事で直面する課題の中には、自分の力やネットワークだけでは解決できないものがあります。そうした時に、学び直しや知識の拡充が大きな力になります。学ぶことで、自分の可能性を再定義し、新たなキャリアの選択肢を得ることができます。 Q6. グリーンMBAを商標登録した経緯と、本学への提供について ハーバード大学留学中に出会った「グリーンMBA」という言葉に強く惹かれ、日本に帰国後、将来の活用を見据えて商標登録を行いました。当時は具体的な計画はありませんでしたが、その理念には強く共鳴していました。 今回、環境経営大学院大学の構想に触れたとき、その志と熱意に深く共感しました。特に、オンライン特化型で全国・世界の学び手を対象にした教育モデルは、私が抱いていた理想と重なるものでした。理事長の熱い思いに応えたいという気持ちから、グリーンMBAの名称を提供することにいたしました。 Q7. 雨宮先生が影響を受けた書籍について 「あなたのTシャツはどこから来たのか?」という書籍は、私が最初に翻訳した本であり、サステナビリティやグローバリゼーションの複雑な構造を理解するうえで非常に影響を受けました。原材料から生産、販売、廃棄までのプロセスを追うことで、グローバル経済のつながりを身近に感じることができます。グローバルな視点を持ちたい方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。 Q8. 環境経営大学院大学への共感と期待について 環境経営大学院大学の構想を初めて伺った際、理事長の熱意とビジョンに大変感銘を受けました。拠点は岐阜ながら、全国および世界の学び手を対象としたオンライン特化型の教育システムは、今後の高等教育のあり方を大きく変える可能性を秘めています。 私自身、かつてオンライン授業に対する不安を抱いていましたが、実際に教える立場になってその有効性を実感しています。環境問題というグローバルな課題に取り組むうえで、物理的距離を越えて学び合える場の重要性を強く感じています。本学の取り組みが、日本発の持続可能なビジネス教育の先進事例となることを心より期待しています。 Q9. 学び手へのメッセージ 学びは常に「知ること」だけでなく、「出会うこと」でもあります。書籍との出会い、人との出会い、未知のテーマとの出会い。その一つ一つが、人生の視野を広げてくれます。大学院での学びは、多様なバックグラウンドを持つ仲間と出会い、議論を通じて新たな価値観を創出していく場でもあります。 今を生きるビジネスパーソンにとって、変化の激しい社会をしなやかに生き抜く力を育むためにも、学び続ける姿勢こそが最も重要です。環境経営大学院大学での学びが、その大きな一歩になることを願っています。      

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