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まだ“芽生え”の写真でサステナビリティを語ってる? ーそろそろ、ビジュアルをアップデートしようー by Thomas Kolster

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まだ“芽生え”の写真でサステナビリティを語ってる? ーそろそろ、ビジュアルをアップデートしようー by Thomas Kolster | NECSUS GREEN FILE

もしサステナビリティがマッチングアプリのTinderにプロフィールを作るとしたら、そこに並ぶのはいつもの三点セットだろう。

風力発電のタービン、ホッキョクグマ、そして―もちろん―しっとりした手に包まれた小さな芽。
……左にスワイプ。一択だ。

想像力はどこへ行った?

よりよい世界を「思い描けない」まま、どうやってそれを「創り出す」ことができるだろうか。

この20年、私たちのサステナビリティのビジュアル表現は、悲劇的な破滅か、夢のような抽象表現に偏ってきた。
だが、そのどちらも、もはや人の心を動かせていない。

Getty Imagesの最新レポート『Sustainability at the Crossroads』は、この問題に真正面から取り組んでいる。
年間27億件の画像検索データ、25市場・10万人超の回答者、60名を超えるビジュアル専門家の知見を分析した結果、気候変動の「イメージ」がどのように進化し、どこで停滞しているのかが見えてきた。

2000年代初頭、環境を象徴するビジュアルといえば、煙突、油流出、融ける氷河といった“災厄の絵”が定番だった。
そして今――私たちは「手のひらの芽」に囚われている。
2025年のいま、誰もが「気候」を語りたがる一方で、「何を見せるか」については沈黙している。

見せ方が、未来の想像力を形づくる

これは、ただのデザイン論ではない。
ヨーロッパでは74%の人が「実際の進展を感じられるビジュアル」を求めている。
それでも業界は、記号的なイメージに頼り続けている。
現実味のない物語に、人々はもう共感しない。

では、どうすればいいのか。
Gettyのレポートは、ビジュアルストーリーテリングを再構築するための5つの戦略を提示している。それは、現実の行動を促す新しい“見せ方”のヒントでもある。

完璧よりも、本物を。
人々が求めているのは「無傷の理想」ではなく「誠実な現実」だ。
傷や汚れ、葛藤を含めた“ありのまま”のビジュアルこそ信頼を生む。
進歩とともに、そこにある苦労も見せよう。
PRの完成形ではなく、“いま進行中の挑戦”を讃えるのだ。

不安だけでなく、希望を。
気候危機は深刻だ。だが、恐怖だけでは人は動かない。
研究でも、「危機感」と「実現可能な行動」を組み合わせた方がはるかに効果的だと示されている。不安をあおるより、解決への道を照らそう。課題と、それに立ち向かう姿を並べて見せよう。

テクノロジーの“グリーンな力”を伝える。
AIによるリサイクルや発電窓など、グリーンテックはすでに現実の産業を変えつつある。それなのに、その映像はどこか無機質で遠い。
テクノロジーを“人の手”の中に取り戻そう。
ソーラーパネルを設置する人、廃棄物を分別する人、エネルギーを節約する人――
その動きこそが未来を映す。

「持続可能」は、我慢の物語ではない。
人々は、“犠牲”よりも“実現可能な変化”に心を動かされる。
日常の延長にある行動―コンポスト、再利用、節電。
そんな身近な実践をリアルに描くことが鍵だ。
完璧な理想ではなく、「自分にもできる」と思える行動を見せよう。

サステナビリティを“組み込む”。
優れたブランドは、環境への取り組みを「付け足し」ではなく「基盤」として考える。製品設計から顧客体験まで、静かに一貫して流れる価値観として。
そのビジュアルは、派手でも誇張でもない。
自信と誠実さを湛えたトーンこそが、長期的な信頼を築く。

私たちは、物語ではなく「可能性」を見せているか?

画像は飾りではない。
それは、私たちの思考と感情、そして行動を形づくる。
だが今のサステナビリティ・ビジュアルは、恐怖か、あるいは使い古された象徴で人を麻痺させている。

いまこそ、新しいビジュアル言語を。
理想ではなく、現実を。
無機質なアイコンではなく、生きた人間を。
“伝える”だけでなく、“招き入れる”表現を。

次に、あなたが「光に包まれた芽」や「夕日に映える風車」の画像を投稿しようとしたとき、自問してみよう。
―この一枚は、誰かを動かすだろうか? それとも、ただ流されていくだけか?

もう比喩は十分だ。
今こそ、「変化の現実」を見せよう。

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