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「サステナ経営と財務をつなぐ」GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く アフターセミナー紙上インタビューPart2 柏原岳人 | NECSUS GREEN FILE

「サステナ経営と財務をつなぐ」GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く アフターセミナー紙上インタビューPart2 柏原岳人

2026年3月7日開催、「サステナ経営戦略と財務をつなぐ」「GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く」を担当した柏原岳人です。柏原総合環境会計事務所を主宰し、企業のサステナビリティ開示をサポートしています。 この度の企画は、今回を実践編として3回開催していきます。 第1回(2月7日:導入編)サステナ戦略と財務をつなぐインターナルカーボンプライシング(ICP) 第2回(3月7日:実践編)GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く 第3回(4月25日:応用編)本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション 次回、第3回(4月25日:応用編)「本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション」の募集を行っています。ご希望の方には、第1-2回のアーカイブ動画及び資料を提供いたします。第3回からの受講でも理解できますのでお気軽にお申し込みください。 第1回(2月7日:導入編)では、内部炭素価格(インターナルカーボンプライシング:ICP)の基礎知識について理解を深め、環境経営-サステナビリティ経営を経営戦略の中に融合していくために必要な財務と環境-サステナビリティの連携を実現していくための技法を紹介しました。このインタビューで登場する専門用語については、第1回のインタビュー記事を参照して理解を深めてください。 第2回(3月7日:実践編)「GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く」では、内部炭素価格(ICP)を適用することで見えてくる、損益計算書及び貸借対照表などの財務諸表に与える影響分析、財務諸表に影響を与えるESG要素との関係を明示する財務影響経路の重要性、など内部炭素価格(ICP)が導入されることにより進展が期待される財務情報とサステナビリティ情報のリンケージについて解説しました。 2026年以降の大きな動きとして、SSBJ基準を開示規範として証券市場におけるサステナビリティ開示が法制度化される予定です。プライム上場企業に対して5年平均の時価総額に応じて段階的に対象企業を増やしながら、有価証券報告書上を起点とした開示が進展することを想定してプライム上場各社も取り組みを進めています。(最短で2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム上場企業から段階的に義務化される見通し) サステナビリティ開示の制度化による影響は、義務化された企業に連なるサプライチェーンを通じて波及することが想定され、サプライチェーンの中で持続的に重要な一員としてあり続けるためのツールとして、義務化対象であるかを問わず、気候変動マネジメントの重要分析思考としてICPをマスターしていただきたいです。   【質問1】 SSBJが義務化された企業に連なるサプライチェーンを通じて「財務と環境-サステナビリティのリンケージ」の影響が波及することが想定されますが、小規模な事業者がサプライチェーンの中で持続的に重要な一員としてあり続けるためには、どのように経営革新を進めていけばよいでしょうか?   【回答1】 SSBJが義務化された企業に連なるサプライチェーンは、Tier1…2…3というように多層化しています。Tier1はSSBJ義務社が打ち出すサステナビリティ戦略を理解し、その戦略に貢献する製品及びサービスを提供していくことで、サプライチェーン全体で持続可能なビジネスを展開していくことに寄与していきます。ビジネスにおいて、自社が位置する経済圏と社会全体の持続可能性を更新し続ける以外にサステナビリティに貢献し、末永く自社を存続させることは出来ません。歴史上でその実例は枚挙に暇がありません。Tier2以降も基本的な認識は同様ですが、規模によって取り組み方に差異が生じます。 < SSBJ義務社 > GHGの例を見ると、カーボンニュートラル戦略を提示し、短期-中期-長期-超長期の各々の視点でサステナビリティと経営戦略とをリンケージさせ、GHG及びエネルギー効率に関する対策と企業価値の向上が矛盾せずに進展し、移行計画の様相を開示し、その計画を想定通りにクリアしているという実績報告が必要とされます。 < Tier1該当社 > 義務社のサステナビリティ開示に格納される情報(GHGにおけるScope3情報など)を提供し、戦略を理解して貢献力のある製品及びサービスを通して、自社の企業価値とサプライチェーンの強化を目指します。小規模事業者がサプライチェーン上位企業の構想力や意向で振り回される事態は、ビジネスの世界では日常茶飯事です。サステナビリティのテーマは多岐に亘り、義務社とTier1の構想力の違いが、Tier2以下のサプライチェーン各社に大きな影響を与えてしまいます。 GHGの例をとりますと、「売上内訳を低炭素な状態に向上されるための研究投資」「現行の生産状態を改善するためのGX投資」「GHG及びエネルギー需給の状況、市場の動向、などを勘案して財務計画から悪い方向に逸脱した資産・事業等の減損処理」「カーボンニュートラルに向けた移行計画を構成するシナリオと現実がどの程度乖離しているか評価するシナリオ分析の更新」という要素が少なくとも、義務社とTier1からアナウンスされない限り、Tier2以下のサプライチェーン各社は、短期-中期-長期-超長期の各々の視点でサステナビリティと経営戦略とをリンケージさせた経営戦略を練り上げていくことは出来ません。サプライチェーンの構成員が持続可能な経営を行うためには、義務社とTier1の構想力、提示力、が必要なことをご理解ください。 < Tier2以下に該当するサプライチェーン構成社 > サプライチェーンの構成員たる小規模事業者に関しては、義務社とTier1の構想によって提示されている内容を理解し、自社の製品及びサービスがどのように貢献し評価されるかを意図して経営戦略を練ることが求められます。サステナビリティと経営戦略とをリンケージさせることは、財務関連情報として開示する義務がなくとも、サプライチェーンの構成員として戦略立案から実行、そして実績報告及び上位企業とのコミュニケーションに至るまで、逃れることができない要素になるでしょう。 法規制をクリアするということは当然ですが、これらの戦略を先読みで織り込むことが企業価値を長期視点で向上させることに繋がります。単一グループのサプライチェーンに依存するリスクが認識させる状況では、複数にコミットしていることが容易に想定でき、複数の構想を参照する経営戦略が必要になるでしょう。ICPのコンセプトを理解することは、サプライチェーンの構成員としての能力を上げるために必要となるでしょう。   【質問2】 カーボンニュートラルの視点を取り入れた経営計画への移行には、財務の視点とリンケージした視点で、短期から長期の目標と計画を設定して活動する必要について理解しました。ICPを取り入れた将来的な利益の試算、その逆算による短期目標設定などを組み込むとなると、従来の環境経営のイメージでは、経営企画部門とサステナビリティ関連部門との連携にかなり時間を要するように感じられます。スピード感をもって進めるうえでのポイントがあれば教えてください。   【回答2】 SSBJではサステナビリティ開示を「財務関連情報」として有価証券報告書に掲載することを求められているので、経営企画部門とサステナビリティ関連部門との連携はかなり密に行う必要があります。SSBJを十分に反映して優良な財務関連情報とするには、サステナビリティ関連のリスク及び機会を把握し、ビジネスモデル及びバリューチェーン・サプライチェーンに対する短/中/長期の影響を分析して重要性が高いテーマを抽出し、財務諸表に数値的な影響を与え得る財務影響経路に関する要素を明らかにする必要があります。財務関連情報として開示までの手順を簡略に示すと以下のようになります。   サステナビリティ関連のリスク及び機会を把握 →ビジネスモデル及びバリューチェーン・サプライチェーンに対する短/中/長期の影響を分析して重要性が高いテーマを抽出 →カーボンニュートラルなどの中長期を前提とした移行計画を構成するシナリオ分析を行う →財務諸表に数値的な影響を与え得る財務影響経路を明確にする →財務関連情報としての移行計画を設定する →移行計画の遂行状況を実績情報と将来情報とを合わせて開示する 財務情報を生成する際には、日常処理から決算事務、そして外部開示まで内部統制として一定の手順が事前に決められている必要があります。サステナビリティ開示ではこれから開示までの手順が確立されていく予定であり、先行して開示が義務化された会社を中心として実務が明確化されていくでしょう。特に、これらの要素間の影響プロセスを概略的に示す「財務影響経路」として整理されます。 GHGの例をとると、   考え得る多様なテーマについて、このような整理をした上で、開示までに必要な作業を明確化して開示手順を整備し、開示業務をスピードアップしていく必要があります。整備を進める際に、財務数値としての影響を具体化する技法がICPです。短期の財務影響は、損益計算書に掲載される営業利益及び当期純利益と「GHG排出量×内部炭素価格」とを比較してどの程度の高税率に耐え得るまで利益が確保できているか、を分析します。よりGHGを排出せずに効率よく利益を確保できているかという傾向を明確化し、中長期に利益を確保し続ける企業体質であるか明確化するために貸借対照表に掲載されている資産・負債に関してICPを適用して再評価します。SSBJにおいてICPが業種横断的指標として開示を義務化された理由は、ICPの技法を適用しないと財務影響経路における数値化の作業ができないという事情があります。ICPの技法を使いこなすことで検討のスピードが加速します。 〔 算式イメージ 〕 損益計算書の営業利益(当期純利益) 貸借対照表に掲載されている生産資産の減価償却対象額 Vs  GHG排出量実績 × ICP(低税率:エネルギー効率が悪い、 グローバル水準でCP耐性が低い) Vs  GHG排出量実績 × ICP(中税率:エネルギー効率が平均的、グローバル水準でCP耐性が平均的) Vs  GHG排出量実績 × ICP(高税率:エネルギー効率が良い、 グローバル水準でCP耐性が高い)   貸借対照表に掲載されている生産資産の評価額 Vs GHG想定排出量 × ICP(先進国・EUに適用されるエネルギー価格推移のシナリオ)による再評価 Vs GHG想定排出量 × ICP(新興国に適用されるエネルギー価格推移のシナリオ)による再評価 Vs GHG想定排出量 × ICP(新興国に適用されるエネルギー価格推移のシナリオ)による再評価   また、生物多様性及び生態系サービス(≒自然から得られる資源など)に関する開示基準を目指す自然関連財務情報開示タスクフォース:TNFD及びその開示ガイドラインが、IFRS財団傘下のISSBに合流することを表明しました。2026年10月に予定されている生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)までに公開草案が提示される予定です。 ISSBが想定するルールでは、公開草案から2年間をめどに成案するプロセスが存在し、2029年3月期に5000億円以上の時価総額を5年平均で有する企業群については、開示準備をしながらTNFDのISSB化を注視する必要が出てきました。気候変動関連基準であるS2基準が注目される機運が強い現状ですが、TNFDがISSBに組み込まれると一般基準であるS1基準が強化され、生物多様性、生態系サービス(≒自然から得られる資源など)に関する詳細な開示が求められることが想定されます。 エネルギー及び資源を海外に大きく依存する日本国内企業では、TNFDがISSB化することでエネルギー及び資源戦略を価格面及び物量面の両面から詳細に記載する必要に迫られます。ここに至ると、サステナビリティと財務とは否応なしにリンケージしなければならず、リンケージした戦略意思決定プロセスを構築する必要に迫られることを予告されているわけです。この際にもICPで用いた「GHG排出量×ICP」が応用でき、GHG排出量を他の資源指標に入れ替えれば、同様に財務影響経路における数値化の作業を進めることができます。水資源投入量ならば、IWPとなり、単位当たり価格の指標を駆使して財務インパクトを計算していきます。多くの方々が考える以上にICPの技法は、今後のビジネスプロセスに影響してくることを今回は理解していただきたいです。 (以上)

「マーケティング」から「共に創る」へ by トーマス・コルスター | NECSUS GREEN FILE

「マーケティング」から「共に創る」へ by トーマス・コルスター

サステナ経営の伝道師 トーマス・コルスターによる好評コラムです。 人々に「マーケティングする」から「ともに創る」へ 私が『Goodvertising』(Thames & Hudson、2012年)を書いた頃、ソーシャルメディアはまだ黎明期であった。私は非常に楽観的であった。あるいは、少しナイーブであったのかもしれない。当時、初めて市民が公の場で声を持つようになったのである。 一つのツイートがCEOに疑問を投げかけることもできる。 Facebookのグループが多国籍企業に圧力をかけることもできる。 私は、いわゆる「ソファ・アクティビスト(couch activist)」――家にいながら企業の不誠実な行動を指摘する市民――が、ブランドを正直に保つ時代が到来するのではないかと考えていた。一つ一つの投稿が企業行動を監視する時代である。 しかし興味深いことが起きた。ブランドのほうが人々よりも速く適応したのである。確かに人々は声を上げる手段を得た。しかし企業との力の不均衡そのものは、ほとんど変わらなかった。情報の「ノイズ」は増えたが、必ずしも説明責任が強化されたわけではなかった。 ブランドの物語から「集合的な物語」へ 現在、私たちはまったく異なる転換点に立っている。 生成AIは、一般の人々――ここでは「市民」と呼ぶ――に、これまでにない規模の分析力・創造力・組織力を与えている。 市民は企業のサステナビリティレポートを数秒で分析できる。 競合企業の主張と比較することも可能である。 企業が制作した華やかなブランド映像がメディア露出のピークを迎える前に、それに対抗するキャンペーンを生成し、コミュニティを動員することさえできる。 それも情熱と創造性、そして圧倒的なスピードをもってである。 これは単なる「怒りの増幅」ではない。 集合的なナラティブ(物語)の主導権が市民側へ移りつつあるということである。 そしてそれは、ブランドのルールそのものを変える。 ターゲティングから、人々を「運転席」に 長年、ブランドはナラティブの主導権に依存してきた。 企業はしばしば、私が「ヒーロートラップ」と呼ぶ状態に陥る。 すなわちブランド自身を「変革の主人公」として位置づける傾向である。 企業はこう語る。 「私たちはムーブメントを牽引している」 「私たちは地球を救っている」 「私たちはコミュニティをエンパワーしている」 確かに印象的な表現である。 しかしそこではブランドが物語の中心に置かれている。 人々は拍手することを求められ、場合によっては商品を購入することも求められる。 しかしそれ以上の役割を与えられることは稀であった。 今日の環境において必要なのは、「人をターゲットにする」マーケティングから「人の参加を可能にする」仕組みへの創造的リセットである。 私はこれを「トランスフォーマティブ・プラットフォーム(Transformative Platform)」と呼んでいる。 これはゲームに似ている。 ルールは存在する。 方向性も存在する。 しかし魔法はルールブックから生まれるのではない。 プレイヤーから生まれるのである。 人々の選択から。 創造性から。 試行錯誤から。 そして人々が与えられた空間を思いがけない方法で使うことからである。 参加型ブランドの例 たとえばアウトドアブランド REI の「#OptOutside」イニシアティブである。 ブラックフライデーに店舗を閉め、人々に買い物ではなく自然を楽しむことを促した。 これは単なるキャンペーンではない。 「私たちの価値観を称賛してほしい」と言ったのではなく、「あなたも参加してほしい」と呼びかけたのである。 また American Express の「Small Business Saturday」も同様である。 これはクレジットカード機能を宣伝するものではなかった。 地域の起業家に消費を向けるコミュニティのための継続的な機会を創り出したのである。 これらの事例には共通点がある。 それはメッセージ主導ではなく、参加主導であること。 ブランドが物語を支配しようとするのではなく、人々がその物語に入る条件を設計しているのである。 テクノロジーの時代こそ、人間中心へ テクノロジーが強力になるほど、 ブランドはより人間的である必要がある。 それは柔らかくなることでも感傷的になることでもない。 真に人間中心であることである。 ブランドは主役の座を手放し、その代わりに人々の成長を支えるインフラを設計する必要がある。 健康、コミュニティ、能力、社会への貢献、、、こうした領域で、個人の成長を可能にする仕組みである。 AIは今後も集合的行動のコストを下げ続ける。 従業員、顧客、市民は、企業を分析し、比較し、動員するツールを手にする。 かつて企業側に有利であった情報の非対称性は急速に崩れている。 その代わりに新たな期待が生まれている。 もし私をあなたのブランドの物語に招き入れるのであれば、その物語の中で行動できる力も与えるべきである。 これから成功するブランド これから成功するブランドは、最も大きな「パーパス」を語るブランドではない。 成功するのは変革のための信頼できるプラットフォームを構築するブランドである。 そこでは商業的成功と人間の進歩が互いに強化し合う。 15年前、私は人々がツイートで企業に声を返す時代を想像していた。 しかし今日、人々はプロフェッショナルなマーケティング機能を手元に持った状態で声を上げる。 もはや問題は、ブランドが挑戦されるかどうかではない。 唯一持続可能な立場は、人々が前進することを支えることである。 トランスフォーマティブ・プラットフォームを構築する8つの特徴 Transformative 明確で共有された変革目標を設定する Guided 方向性やガイドラインを示す Motivational 行動を促す設計にする Creative 創造性の余地を残す Replicable 再現可能な仕組みにする Common 誰にでも開かれたものにする Accessible ツールや仕組みを容易に利用できるようにする Relevant ブランドの価値と関連付ける

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