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グリーン・ハッシングの本当のコスト ― 効果測定データが明らかにするもの ― by トーマス・コルスター | NECSUS GREEN FILE

グリーン・ハッシングの本当のコスト ― 効果測定データが明らかにするもの ― by トーマス・コルスター

サステナ経営の伝道師 トーマス・コルスターによる好評コラムです。 2026年、サステナビリティがうまく機能していない理由は、企業が行動していないからではない。 あまりにも多くの企業が「語ること」をやめてしまったからである。 取締役会では、どこも同じ論理が共有されている。 「やるべきことは静かにやろう。発言すれば反発を招く」。 米国では、サステナビリティや多様性に言及しただけで、大統領から「ウォーク(意識高い系)」と名指しで批判されることすらある。 何も言わなければ、標的になることは避けられる。 この現象には名前がある。 グリーン・ハッシング(Green Hushing)だ。 だが、経営者の多くがあえて向き合おうとしない、不都合な問いがある。 沈黙は、実際にはどれほどのコストを生んでいるのか。 この問いに答えるため、私たちは最新の効果測定データを見ていく必要がある。 分析対象は2025年に評価された取り組みで、その多くは2024年に企画・実行されたキャンペーンだ。 確かにタイムラグはある。だが、その距離があるからこそ、恐怖や政治的ノイズが取り払われ、より有益なもの――パターン――が見えてくる。 そして、2024年のパターンは明確だった。 サステナビリティが後退すると予測されていたにもかかわらず、2024年は、サステナビリティを軸にしたブランド活動が、過去最高の効果を上げた年となった。 企業が沈黙すると見られていたその年に、明確で信頼性のある形で発信したブランドほど、高い成果を上げていたのである。 グリーン・ハッシングは「慎重さ」として語られがちだ。 しかし実際には、それは戦略的な選択であり、しかも中立的な選択ではない。 データが示すのはこうだ。 サステナビリティをブランドストーリーの中心に据えた企業は、不利益を被るどころか、話題を避けた企業を上回る成果を出していた。 最大のリスクは、批判や監視ではない。距離を置いてしまうこと(irrelevance)である。 価値観を軸にしたコミュニケーションから退いたブランドは、消えるわけではない。「どれでも同じ存在」になる。 選択肢が溢れる市場において、それは反発よりもはるかに大きな脅威だ。 効果を生むサステナビリティとは何か 二つの重要な示唆が浮かび上がる。 第一に、社会的サステナビリティは、環境メッセージ単独よりも高い効果を示した。尊厳、包摂、ウェルビーイング、自信、公正さといったテーマに焦点を当てたキャンペーンは、環境課題のみを扱うものよりも頻繁に見られ、かつ効果的だった。 これは気候変動対策を否定するものではない。 人々はまず「自分の生きた経験」を通じてサステナビリティと向き合う、という事実を思い出させるものだ。 抽象的な問題は行動を変えにくい。人の物語こそが、人を動かす。 第二に、短期的なアピールよりも、長期的なコミットメントが効果を生む。 最も成果を上げた取り組みは、場当たり的なキャンペーンや単発の声明ではなかった。数年、時には数十年にわたって同じテーマに向き合い続けてきた活動だった。 同じ課題に継続して取り組むことで、ブランドは信頼、感情的なつながり、そして累積的なインパクトを築いていった。 サステナビリティは、戦略に組み込まれたときに機能する。 都合のよいときに後付けされるものではない。 なぜこれが2026年に重要なのか 今日のサステナビリティを巡る議論は、「恐れ」によって形づくられている。 規制への恐れ、訴訟への恐れ、誤解されることへの恐れ、政治的な争点にされることへの恐れ。 だが、恐れは最悪の戦略である。 データが示しているのは、サステナビリティについて語るのをやめても、信頼は守られないという事実だ。むしろ、静かに侵食されていく。 関連性(レレバンス)は、沈黙ではなく、明確さと一貫性によって築かれる。 長期的思考を誇る文化や組織にとって、これは特に重要だ。 人を中心に据えた、忍耐強いサステナビリティの取り組みは、効果と強く結びついている――ただし、それが可視化されている場合に限る。 良いことをして、何も語らない。 それは美徳に見えるかもしれない。 だが、価値を生むことはほとんどない。 サステナビリティ担当者が直視すべき、三つの厳しい真実 1. グリーン・ハッシングにはコストがある 沈黙は短期的な不快感を避けるかもしれないが、差別化と長期的なブランド力を弱める。データは明確だ。慎重さよりも明瞭さが成果を生む。 2. 問題よりも、人が先にある サステナビリティは、人間の尊厳や日常生活に語りかけたときに共鳴する。 専門用語や遠い目標の背後に隠れたときではない。 3. コミットメントそのものがメッセージである 信頼は、完璧に言葉を選んだ声明ではなく、時間をかけた一貫性によって築かれる。継続は、本気度の証だ。 最後に 2024年から得られる教訓は、過去の話ではない。未来を予測するものだ。 サステナビリティが静まり返ると予想された年に、効果は「沈黙を拒んだブランド」に報酬を与えた。 グリーン・ハッシングは自己防衛のように感じられるかもしれない。 しかし実際には、それは関連性からの静かな撤退である。 社会への貢献によってブランドが評価される時代において、 もはや最も危険なのは「間違ったことを言う」ことではないのかもしれない。 何も言わないことこそが、最大のリスクになりつつある。

「サステナ経営と財務をつなぐ」 アフターセミナー紙上インタビュー 柏原岳人 | NECSUS GREEN FILE

「サステナ経営と財務をつなぐ」 アフターセミナー紙上インタビュー 柏原岳人

2026年2月7日開催のNECSUS特別セミナー、「GXの新常識:サステナビリティ開示が“経営分析の重要情報”になる時代-サステナ戦略と財務をつなぐインターナルカーボンプライシング(ICP)-」を担当した柏原岳人先生が紙上インタビューで再登場。柏原総合環境会計事務所を主宰し、企業のサステナビリティ開示をサポートしている方です。 3回シリーズの本初回は「そもそもサステナ経営と財務のつながりは?」から。この分野に詳しい方は復習記事としてご活用を、「財務はどうも、、、」という方は、丁寧な読み込みで理解が深まります(編集部Jは3回読みました笑)。 【編集部】「サステナ経営と財務」のセミナーは、3回に分けて学びを深める構成ですね。 【柏原】本企画は、今回を導入編として3回開催することを予定しています。 第1回(2月7日:導入編)サステナ戦略と財務をつなぐインターナルカーボンプライシング(ICP) 第2回(3月7日:実践編)GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く 第3回(4月25日:応用編)本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーションです。 【編集部】サステナ経営は財務との連動で初めて鼓動が始まります。財務の関わり方についてあらためてお話しください。 【柏原】多くの方々が、第一印象として、財務と環境がなぜ結びつくのか、と疑問に思われることでしょう。もう少し考えると、企業の視点からは、「環境対策は負担したくないコスト」という考え方が思い浮かぶでしょう。一方、社会の構成員である個々人の視点からは、環境問題やESGの主要テーマに関係する問題を社会的損失として認識し、解決すべき「社会的コスト」が存在すると確信している現実があります。 企業側が適切に社会的コストを負担して課題解決に貢献し、企業価値を確保向上し続けなければ、社会の構成員である個々人が幸せになれる素地は涵養できません。サステナビリティな社会に貢献し得る社会的コストを負担して企業価値を向上させる企業を、株式市場や責任ある企業社会、市民社会など社会側から評価する経済社会を早急に構築する必要があります。 【編集部】サステナ経営と財務の分野では、ICPやISSBといった略語が次々に生まれ、「アルファベットスープ」と称せられるほどです。少し整理して教えてください。 【柏原】上記のような経済社会を構築するために必要な企業評価のインフラとは、従来から流通する財務開示に基づく企業評価と連携できる世界共通のサステナビリティ開示基準です。2023年6月に国際的なIFRS財団によるサステナビリティ開示基準(以下、ISSB基準)が成立しました。IFRS財団は国際会計基準の制定団体であり、財務関連情報としてのサステナビリティ開示を充実させるために日々改善を進めています。 我が国でも、(公財)財務会計基準機構内に設置されたサステナビリティ基準委員会(SSBJ)によって2025年3月にサステナビリティ開示基準(以下、SSBJ基準)が制定されました。SSBJ基準はISSB基準と整合した基準として認定され、ユニバーサル基準、一般開示基準、気候関連開示基準、で構成されています。SSBJ基準で財務 関連情報として財務情報とサステナビリティ情報、特に気候変動問題が連携するテーマとして相関関係が明確な開示項目が、内部炭素価格:インターナル[Internal]カーボン[Carbon]プライシング[Pricing](以下、ICP)です。 内部炭素価格(ICP)という名称からも推察されるように、企業内部において炭素価格をどのように運用しているか開示が求められています。炭素価格とは、温室効果ガス(以下、GHG)をCO2に換算して単位当たりに課される金額であり、社会全体に租税として適用される場合は炭素税、GHGの排出量に関係させた取引市場では排出量取引(排出枠、排出権、など取引機構で名称は異なります)など、「炭素排出量×炭素価格」の基本原理に基づいて経済社会の各方面で応用が進んでいます。 内部炭素価格(ICP)を用いた開示を行うということは、財務会計で行われてきた企業内部における会計情報に基づく意思決定のプロセスに「炭素排出量×炭素価格」の基本原理がどのように組み込まれて、経営全体に気候変動対策が適切に配慮され、気候変動対策の財務影響が財務情報に反映され、財務情報及び気候変動対策の実数の双方で結果を残しているか、を開示することになります。企業経営における気候変動に関するリスクと機会、カーボンニュートラル(実質的なGHG排出ゼロ)に向けた長期視点の行動計画、を開示する際に、財務と気候変動対策の相関関係を示す重要な要素が内部炭素価格(ICP)なのです。 【編集部】業界の注目すべき最新トピックを教えてください。 【柏原】2026年以降の大きな動きとしては、SSBJ基準を開示規範として証券市場におけるサステナビリティ開示が法制度化される予定です。プライム上場企業に対して5年平均の時価総額に応じて段階的に対象企業を増やしながら、有価証券報告書上を起点とした開示が進展することを想定してプライム上場各社も取り組みを進めています(最短で2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム上場企業から段階的に義務化される見通し)。 サステナビリティ開示の制度化による影響は、義務化された企業に連なるサプライチェーンを通じて波及することが想定され、サプライチェーンの中で持続的に重要な一員としてあり続けるためのツールとして、義務化対象であるかを問わず、気候変動マネジメントの重要分析思考としてICPをマスターしていただきたいです。 【編集部】今後のセミナーの展開について、あらためて教えてください。 【柏原】第2回(3月7日:実践編)GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く、では内部炭素価格(ICP)を適用することで見えてくる損益計算書及び貸借対照表などの財務諸表に与える影響分析、財務諸表に影響を与えるESG要素との関係を明示する財務影響経路の重要性、など内部炭素価格(ICP)が導入されることによ り進展が期待される財務情報とサステナビリティ情報のリンケージについて解説していきます。 第3回(4月25日:応用編)本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション、では、東京証券取引所上場部から2023年3月31日に提示された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」に代表されるPBR問題と密接に絡むICP分析手法について解説します。既存の財務指標や分析手法とICP分析手法を組み合わせることで、PBR問題を進展させるために必要な非財務資本(製造資本、知的資本、社会関係資本、人的資本、自然資本)を充実させるプロセスを紐解くことが期待されており、内部炭素価格(ICP)が、財務関連情報として重要なサステナビリティ開示項目とされる理由となった応用範囲の広さも垣間見ていただきます。 内部炭素価格(ICP)について理解を深め、環境経営-サステナビリティ経営、を経営戦略の中に融合していくために必要な財務と環境-サステナビリティの連携を実現していくための一助になればと考えております。

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