投稿日:2025.11.30 最終更新日:2025.11.30
COP30で緊急提言! -分断は、立て直せるのか- by Thomas Kolster
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NECSUS STAFF
COP30(2025年11月10日から21日までブラジルのベレンで開催の「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(Conference of the Parties 30)」)を受け、NECSUS Green Fileで好評のサステナビジネス伝道師トーマス・コルスター氏のコラム緊急提言です。
気候運動はなぜ停滞したのか ― そしてどう立て直すのか
“道徳的優越”が招いた分断
私たちは地球を救おうとした。だが、結果的に世界を分断してしまった。
ブラジルでCOP30が開かれる今、かつての楽観は消えつつある。
「簡単なサステナビリティ」の時代は終わった。
企業は声を大きくするどころか、静かになっている。気候疲れは現実だ。予算は縮小し、成長は鈍化し、「サステナビリティ」という言葉の輝きも失われている。世界中の会議室で問いはこう変わった──
「何が正しいか?」から「リターンはあるのか?」へ。
それは冷笑ではなく、生存戦略だ。
今やサステナビリティは、倫理的な正しさだけでなく、測定可能な成果を示さなければならない。「良いことを掲げる時代」から「成果を出す良いことをする時代」へと変わりつつある。そしてこの転換には、私たちがなぜ大多数を巻き込めなかったのか──企業・社会・政治のすべてにおいて──正直に向き合う必要がある。
“純粋さ”が招いた失敗
長年、私たちは企業に「もっと速く、もっとグリーンに、もっと高く」と求めてきた。航空会社や自動車メーカーの仕事を拒否する“倫理的アライアンス”を作りながら、自分たちは平然と飛行機に乗っていた。
矛盾を抱えたまま企業に変革を迫っていたのだ。
家族をトルコ旅行に連れていくシングルマザーに「飛行機を諦めろ」と本気で言えるだろうか。航空券の値上げは富裕層ではなく、彼女のような人々を直撃する。
私たちは先頭に立って改革を進めようとしたが、しばしば
「非難」という形でリードしてしまった。
サステナビリティを“参加の連帯”ではなく、“純粋さの競争”に変えてしまった。
「十分に良い」は、いつも「不十分」とされた。
企業や人が理想に届かないと、私たちは声高に非難した。
だが、指さしは変革の燃料にはならない──むしろ凍らせる。
多くのブランドが静かに後退している。不完全な取り組みが炎上することを恐れ、第一歩すら踏み出せなくなっている。
市民レベルでも同じだ。
常に「もっとリサイクルしろ」「飛行機に乗るな」「消費するな」。
“常に不十分だ”という圧力。
大半の人も、企業も、自分を小さく感じさせる運動には参加しない。
広がってしまった分断
その結果、サステナビリティ文化は二つに割れた。
片方には、B Corp、活動家、熱心な信奉者たち。
もう片方には、傍観者のように見える“サイレントマジョリティ”──あるいは反発しはじめた人々。
炭鉱労働者や農家にとっては、サステナビリティは“エリートの議題”に見えてしまう。
彼らは土地とともに生き、私たちに食を届ける人々だ。
敵ではなく、むしろ同盟者であるべきではないか?
共感は、非難よりはるかに強い。
正義よりも“共感”が動かす
市場を本当に動かしている企業は、説教しない。
彼らはつながりを作る。
行動を決めるのは倫理ではなく、感情だと理解している。
朝食大手に挑むHollie’sは、「砂糖を減らそう」というシンプルで前向きな約束で市場を揺らしている。
オートミルクのOatlyは、植物ベースの選択を“犠牲”ではなく、文化的なウィンクにした。「簡単だよ、やってみよう」と。
これらのブランドが成功する理由は、
完璧だからではない。共感できるからだ。
善い行動を「気持ちよく」「お得に」感じさせている。
罪悪感で人を動かすのではなく、招き入れているのだ。
未来はそこにある。
説教ではなく、ストーリー。
道徳的優越ではなく、市場での関連性。
ビジネスは“価値”で動く
価値観は大事だ。だが、価値創造も同じくらい大事だ。
企業がサステナビリティへ投資するには、それが成長、ロイヤルティ、レジリエンスを生むと示さなければならない。
「パーパス」は後光ではなく、
商業的な力を証明する必要がある。
倫理だけでは、もはや企業を誘惑できない。
必要なのは、「良いことが良いビジネスになる」という確かな報酬だ。
証拠のないパーパスでは不十分。
責めるのではなく、伴走する
では、ここからどこへ向かうべきか?
✔ 純粋さではなく、参加を増やす。
進歩は大きなジャンプではなく、小さな一歩の積み重ねで生まれる。
「十分にグリーンじゃない」と嘲笑すれば、その第一歩すら止まる。
不完全でも前進を称えよう。
✔ 非難ではなく、支援に変える。
企業を変えたいなら、罪悪感ではなく“エビデンス”で導くべきだ。
高みからの説教ではなく、実践的な解決策を。
✔ もっと“人間的”に。
サステナビリティは生活とつながった時に力を持つ。
「より良い朝食」「きれいな空気」「安全な未来」──
人々が“自分ごと”として感じられるように。
正直さと包摂への呼びかけ
COP30の議論に、世界はもう高尚な約束だけを求めていない。
必要なのは証拠だ。
結局、それは「より良い暮らし」についての話なのだから。
私たちは“いじめ”をやめ、“構築”を始めなければならない。
美しい言葉の影に隠れるのではなく、その商業的な根拠を示すべきだ。
知識があるのなら、他者を閉め出すためではなく、持ち上げるために使うべきだ。
サステナビリティは“道徳的に優れている”ことで勝つのではない。
商業的にも、文化的にも、人間的にも、“魅力的”であることで勝つのだ。