2026.07.19
「誠実な企業が報われないのはなぜかーパーパスと競争優位から考える環境経営-」アフターセミナー 紙上インタビュー by 片山郁夫
6/25(土)のNECSUS特別セミナーに登壇した片山郁夫先生に、アフターセミナーインタビューを行ないました。 片山郁夫先生プロフィール ・立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 特任教授 ・特定非営利法人 環境経営学会 副会長 ・SOMPOビジネスサービス株式会社 常勤監査役 ・博士(サステナビリティ学) Q.環境経営の必要性が高まる中、「正しく」かつ「勝てる」経営理念の統合、浸透、実践のサイクルを回すには、今まで以上のスピードと大胆な方向転換が求められそうです。この状態で、経営者はどのような資質をどう高めるべきか、そしていかに組織をまとめていくかにつき、お考えをお聞かせください。 A.私は、これまでの企業人としてのキャリア、環境経営学会での活動、そして現在の常勤監査役としての視点を通じて、数多くの経営者の葛藤と意思決定の現場に向き合ってきました。その中で私が考える、これからの激動の時代を生き抜く経営者に求められる資質は、大きく三つあります。 第一に、「理念を『判断軸』として使う力」です。 不確実性が高まり、あちらを立てればこちらが立たないような複雑な経営環境では、「何を大切にする会社なのか」という経営理念やパーパスが判断の最後の拠り所になります。しかし、パーパスは掲げること自体が目的ではありません。日々の苦しい意思決定の現場で、それを具体的な「判断軸(拠り所)」として実際に使いこなすことが大事なのです。言葉が飾りではなく、組織を動かす実践的な判断軸になったとき、目指す方向はブレなくなります。 第二に、「矛盾や葛藤の中で、自らをアップデートし続ける力」です。 現代のビジネスには「一つの正解」などというものは存在しません。既存事業の維持と新規事業・新規投資のバランス、短期的な利益の確保と中長期的なサステナビリティへの対応など、経営者が直面する課題は常に矛盾をはらんでいるからです。「私は正しい」と過去の成功体験や正論に固執するのではなく、むしろ、変化する社会の要請や顧客、環境、そして現場の従業員との対話から学び続けること。自らの常識を疑い、思考をアップデートしていく柔軟な姿勢こそが不可欠です。変化する社会の要請や顧客、環境、そして現場の従業員との対話から学び続け、自らの常識を疑い、思考をアップデートしていく柔軟な姿勢こそが不可欠です。 第三に、「理念を現場の『行動』へと翻訳する力」です。 どれほど立派な経営理念や戦略を経営トップが唱えても、それが現場の日々の判断や評価制度、組織文化にまで落とし込まれなければ、社員の行動は変わりません。経営者の真の役割は、大義を語ること以上に、「利益が一時的に減るかもしれない、あるいはルールとの狭間で悩むこの泥臭い場面で、私たちはどう判断すべきか」という課題に対して経営者としての具体的な姿勢を示し続けることにあります。つまり、理念を「綺麗な言葉」から「一貫した組織の行動」へと翻訳することです。 先日のセミナーでもお話しした通り、「正しいこと(大義)」と「勝てること(利益)」は対立するものではなく、その矛盾や葛藤を抱えながらも、科学的思考、すなわち事実やデータ、対話を踏まえながら統合していくべきものです そして、私はここで一つ強調したいことがあります。企業の中で組織や部署を預かり、日々現場の矛盾や板挟みと戦っている多くのビジネスパーソン(ミドルマネジメント層)にこそ、全く同じことが言えます。トップの想いを深く汲み取りながら、それを現場の納得感ある「行動」へと翻訳していく役割こそが、実質的に組織を動かすからです。 経営者、そして現場のリーダーたちが葛藤の中で一貫した意思決定を積み重ね、その真摯な姿勢を組織に示し続けることが、環境経営、ひいては企業経営そのものを持続可能な「競争優位」へと昇華させていくことだと考えます。 最後に、環境経営は、単なる「環境のための特殊な経営」ではないと思います。それは、「100年後も、社会や顧客、環境、そして従業員から必要とされ続ける企業をつくるための経営」そのものです。言い換えれば、「正しいこと」と「勝てること」を統合し、持続可能な競争優位を実現していく経営です。そう考えると、環境経営とはサステナビリティ経営を実現するための実践そのものと言えるのではないでしょうか。 サステナ博士のビジネスラボ https://note.com/sustaina_hakase/n/n385d71678032 も合わせてお読みください。