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サステナ経営戦略を財務とつなぐ -本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション- アフターセミナー紙上インタビュー&解説   講師:柏原岳人(柏原総合環境会計事務所 代表 税理士 コンサルタント) | NECSUS GREEN FILE

サステナ経営戦略を財務とつなぐ -本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション- アフターセミナー紙上インタビュー&解説   講師:柏原岳人(柏原総合環境会計事務所 代表 税理士 コンサルタント)

【編集部】この度の企画は、第1回2月7日開催の導入編、第2回3月7日開催の実践編、今回の第3回4月25日の応用編を開催してきました。 第1回(2月7日:導入編)サステナ戦略と財務をつなぐインターナルカーボンプライシング(ICP) 第2回(3月7日:実践編)GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く 第3回(4月25日:応用編)本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション 今回の第3回(4月25日:応用編)「本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション」を開催しました。 【編集部】サステナビリティに関する事象は国際的動向と連動し不確実性が高く、また制度面も評価が定まるまでに時間を要すると認識しています。このような状況下で、サステナビリティ要素を経営分析・意思決定に反映することは、実務上かなりの複雑性を伴うと考えます。どのように捉えるべきでしょうか。 【柏原】個別の企業経営を好転させる、個人のスキルアップを図る、ために今回のような講義を受けてみようと考える際に、どうしても特定のスキルなど近視眼的に役に立つ内容だけに目が行きがちです。しかし、深い理解で長期的な成果を獲得する主体は、長期的な背景を深く理解し、本質的な潮流を掴んで付加価値を継続的に産み出しています。今回の講義でより深い理解をしていただきたい背景は、「実体経済の景気循環とインフラとしての開示基準」という論点です。景気循環について基礎知識としては、下記のような学説区分をまずはご理解ください。ネーミングは主要な学説提言者に因ります。 キチン・サイクル (短期・在庫循環) 期間: 約3〜4年(約40ヶ月) 要因:企業の在庫投資の増減。需要増に応じた積み増しと、過剰在庫による削減。 ジュグラー・サイクル (中期・設備投資循環) 期間: 約10年 要因:企業の機械・工場などへの設備投資。企業の業績変動に大きな影響を与える。 クズネッツ・サイクル (長期・建設循環) 期間: 約20年 要因: 住宅やオフィスの建設投資。人口動態や都市化に関連する。 コンドラチェフ・サイクル (超長期・技術革新循環) 期間: 約50〜60年 要因: イノベーション(技術革新)。新しい産業の創出が経済を牽引する。 気候変動の例を採りますと、1997年に開催された京都議定書からパリ協定で設定されている2050年のカーボンニュートラル目標は、GHG(温室効果ガス)やエネルギー問題に関する超長期の技術革新を想定したコンドラチェフ・サイクルを前提としたプロセスです。この循環では、数回の紆余曲折を想定しなければなりません。 この超長期循環の中には、クズネッツ・サイクルが2~3回入ります。1996年に環境ISOが開始し環境マネジメントシステムを世界に普及させ今や当然の存在になりました。2013年にIIRCが国際統合報告フレームワークを提言し財務資本と非財務資本(自然/製造/社会関係/人的/知的資本)の概念を明確にしました。2023年にはIFRS財団がISSB基準を提示してサステナビリティ開示のグローバルスタンダードの形成に乗り出しました。 これから2050年までの期間で財務関連情報としてのサステナビリティ開示が成熟していくことが想定されています。この期間のプロセスイメージは、図解1「財務関連情報としてのサステナビリティ開示を成功させるための思考法」をご覧ください。 スクリーンショット 2026-05-15 01.12.27 2026年の現状は、上場企業が発行する「統合報告」と「財務報告」という異なる報告内容を並列して関連性を説明していく段階です。統合:Integrationの段階は、財務関連情報の範囲は限定的でサステナビリティを実現すべき当事者としての報告責任を果たしている範囲も限定的です。この統合段階からISSB-SSBJ基準などの諸改革をクリアしながら、サステナビリティ開示に関連する各要素を再構築していく段階に突入していきます。 この再構築の際に必要な要素が、気候変動関連の取組みにおける触媒としてのICPです。各取り組みテーマにおける「触媒」たる存在についてマスターしていくことがこれからのカギになります。この段階は、触媒を用いて各要素を再構成して結合させていく合成:Syntheticのプロセスと捉えられています。最終的に「統合報告」と「財務報告」とを明確に区別しない報告形態の状態を融合:Fusionの段階と捉え、この着地点に向けたプロセスが、実体経済のクズネッツ・サイクルとリンケージして進行していく想定をしておいてください。 【編集部】本来は全社的な中長期経営計画の中で統合すべきテーマと理解しておりますが、現実的にはまず情報開示の整備・高度化を起点として、「サステナ経営戦略と財務の接続」を段階的に進めていくアプローチが有効と考えます。この理解について見解をお伺いできますでしょうか。 【柏原】2026年の段階をどのように捉えるかは、企業の規模と背負うべき責任によって異なってくると考えます。プライム上場で時価総額も大きく、数多の、多種多様なステークホルダー、に対して責任を負う巨大企業は、図解1で示した「統合:Integration」から「合成:Synthetic」へ移行しなければならない段階に立脚しています。サステナビリティ開示のテーマを各々財務とどのようにリンケージしていくべきか分析し段階的に再構築していくことが求められ、各テーマにおける「触媒」たる存在を突き止め、「融合:Fusion」の段階に進む準備を見定めておくことが最も理想的です。気候変動におけるICPは、触媒として先行して構築されつつあるので他のテーマにとってマスターすべき項目です。 上場企業でも巨大企業ほどではない存在においても「統合:Integration」の段階に長々と停滞することは様々な損失を産みます。企業の規模と背負うべき責任の違いに基づき、段階的に「合成:Synthetic」へ移行することを準備しなければなりません。 【編集部】サステナビリティ関連の投資判断において、「ROIC>WACC(ハードルレート)」を基準とする考え方は非常にシンプルで有用と理解しています。一方で、ROICを精緻に算出できる単位は実務上、事業部レベルが限界ではないかとも感じておりますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。 また、仮に事業部または全社単位で評価する場合、ROICとWACCの差(スプレッド)については、企業や事業のライフステージによって求められる水準が異なるとの理解でよろしいでしょうか。 【柏原】「事業部レベルが限界ではないか」という感覚は非常に的を射ています。生態系から得る資源に関する制約が益々顕在している経済環境が暫く続く予想の中では、事業内容を見直すプロセスでROICをきめ細かく適用していくことが成功のカギになります。上場企業では東証からの要請もあるので是非ともきめ細かく取り組んで欲しいです。事業規模を拡大する、上場する、持続可能な成長を目指す、ならば、事業部レベルで留まる感覚では未来に大きな足枷となることでしょう。 図解2「企業のライフステージ/事業セグメントの成長プロセス」をご覧いただくと、現状が成長助走期に位置していたとしても、先々のステージではROICを自由自在に使いこなしていかなければなりません。また、図解2をご覧いただけると、ライフステージ/成長プロセスに応じて求められる分析項目と分析ポジションは異なります。上場企業に対する東証からの要請である「ROE:自己資本利益率8%、PBR:株価純資産倍率1倍以上」というラインは最低目標であり、ここで立ち止まらず、高みを目指してもらわなければなりません。 【編集部】聴講された皆さんにとっても、基本と実務とを往来しながら理解を深めていく、どなたにも満足度の高いセッションだったのではないでしょうか?ご参加にお礼申し上げます。

1.「サステナビリティと経営戦略」ー環境課題を自社の競争力に変えるー アフターセミナー 紙上インタビュー 雨宮寛 | NECSUS GREEN FILE

1.「サステナビリティと経営戦略」ー環境課題を自社の競争力に変えるー アフターセミナー 紙上インタビュー 雨宮寛

「サステナビリティと経営戦略ー環境課題を自社の競争力に変えるー」と題し、3月17日(火)にNECSUSオンライン特別セミナーにて講演した雨宮寛先生に、紙上インタビューをお願いしました。 Q1 日本のサステナブル経営(環境経営)意識や取組の様子を他国と比較し、特徴があれば教えてください。 日本企業のサステナブル経営に対する意識や取組みは、国際的に見ても非常に高い水準にあると考えています。その背景には、地震や台風をはじめとする自然災害が多発する国土特性があり、企業経営の中に自然環境リスクをあらかじめ織り込まざるを得ない事情があります。 先日、ベネズエラの優勝で幕を閉じたワールドベースボールクラシックにおいて、日本がベスト8で敗退した要因の一つとして、試合球やピッチクロックといった国際基準への対応が挙げられました。この例になぞらえるならば、日本企業も同様に、すでに自然環境リスクを経営に組み込み、高度な対応を行っているにもかかわらず、国際的な取り決めやルールへの適応に多大な時間と労力を要し、その結果、取り組みの本質的な価値が正当に評価されていない側面があるのではないかと感じています。 さらに、日本は1960年代から70年代にかけて高度経済成長期を経験し、その過程で生じた公害など、経済成長がもたらす負の外部性への対応にも真剣に取り組んできました。すなわち、日本企業は、自然災害という外部環境からのリスクへの対応のみならず、自らの事業活動によって生じ得る負の外部性への対応も積み重ねてきたと言えます。こうした歴史を踏まえれば、日本企業は環境経営の分野において、世界に先駆けた役割を果たしてきたと評価してよいのではないでしょうか。 Q2 サステナブル経営(環境経営)を長きに渡り研究しておられる先生の視点では、今、日本でサステナブル経営の普及・発展の課題となっていることは何だとお考えですか? 欧米主導で形成されてきたグローバルスタンダードへの対応に対する躊躇や、それに伴う「ガラパゴス化」の問題は、日本企業にしばしば指摘される課題です。その大きな要因として、言語の壁や文化的な違いが挙げられることが多いですが、まさにこうした日本企業の「苦手領域」は、AIの活用によって克服できる可能性があると考えています。 多くの日本企業はすでに環境経営やサステナブル経営を実践、あるいは少なくともその重要性を十分に認識した上で経営を行っています。今後は、こうした企業の実際の行動や価値観を、投資家や取引先、地域社会など多様なステークホルダーと効果的に対話・発信していくことが重要になります。その際にAIを積極的に活用することで、言語や文化の障壁を超えたコミュニケーションが可能となり、日本企業の取り組みがより正確に、かつ公正に評価されるようになるのではないでしょうか。 結果として、AIは単なる効率化の手段にとどまらず、日本企業の国際的な評価を高めるための重要な戦略ツールになり得ると考えています。 (以上)

マーケティングの再定義:主役の座を人々へ by トーマス・コルスター | NECSUS GREEN FILE

マーケティングの再定義:主役の座を人々へ by トーマス・コルスター

長年にわたり、マーケターはまるで王のように振る舞ってきた。 進むべき道を決め、メッセージを統制し、媒体を買い、ファネルを最適化し、人々が黙って助手席に座ることを期待してきたのである。 しかし、その時代は終わった。 いま人々は、参加し、形づくり、リミックスし、影響を与え、創り出し、貢献したいと考えている。 にもかかわらず、多くのマーケティングはいまだに人々を「才能」ではなく「ターゲット」として扱っている。 そしてそれこそが、ブランドが見逃している最大の成長機会なのかもしれない。 拙著『The Hero Trap』で述べた通り、ブランドは「物語のヒーロー」であろうとすることに執着してきた。 地球を救い、世界を変え、自らについて語るキャンペーンを次々と打ち出す。 だが、人々は朝起きて「ブランドの目的達成を手伝いたい」とは思わない。 自分自身の人生をより良くしたいと考えているのである。 だからこそ今、見直すべきは単なるメッセージではなく、マーケティング全体である。 産業時代のマーケティングからの転換 従来のマーケティングは、産業時代に設計されたものである。 ・製品は企業がつくる ・価格は企業が決める ・流通は企業が管理する ・プロモーションは企業が押し出す しかしプラットフォーム時代において、人々はもはや受動的ではない。 TikTokでオーディエンスを築き、Etsyで副業を行い、商品を公開レビューし、あらゆるものをカスタマイズし、ブランドに対して影響力を持つことを当然と考えている。 一方で、エンゲージメントは低下し、信頼は脆弱になり、広告費は上昇し、差別化はますます困難になっている。 多くのブランドはいまだに問い続けている。 「どうすれば人にもっと売れるか」と。 しかし本来問うべきは、 「どうすれば人とともに、より多くを創れるか」である。 人を中心に据えた「ホイール」型マーケティング 従来の4Pに代わり、「ホイール(輪)」として再構成する。 そこでは人々が、すべての要素において主体的に関与する。 Product(製品)— 共創する 最も優れたブランドは、もはや孤立してイノベーションを起こさない。 LEGOは「Ideas」により顧客をデザイナーに変え、GoProはユーザーをコンテンツの担い手にした。 人々は単なる製品ではなく、「関与と所有」を求めている。 Promotion(プロモーション)— 人が広げる 旧来:ブランドが語り、顧客が聞く 現在:ブランドが始め、人が増幅する Nikeはランナー同士が進捗を共有し、互いに励まし合う場を築いた。 コミュニケーションは広告ではなく「参加」へと変わったのである。 いま最も強力なメディアは、「関与していると感じている一人の人」である。 Place(流通)— コミュニティをつくる かつて流通とは棚とウェブサイトを意味した。 いまは人々が集う「場」そのものを指す。 Sephoraは小売とコミュニティ、クリエイター、学び、帰属感を融合させた。 チャネルだけで考えるブランドは、現代の「感情の地理」を見落としている。 Price(価格)— 行動を設計する 価格は単なる支払いではなく、行動設計になり得る。 Discoveryは健康的な生活を報酬と価格で後押しし、 顧客の成長と企業の成功を一致させた。 無限の値引きよりも、はるかに賢い交換モデルである。 人が成長すれば、ブランドも成長する 人は自ら関与したものに、より高い価値を見出す。 IKEAの本棚を自分で組み立てたとき、それは単なる家具ではなく「自分のもの」になるのと同じである。 ブランドも同様である。 人が関与し、創り、影響を与えたとき、その価値は飛躍的に高まる。 だからエンゲージメントは簡単に「買う」ことはできない。 それは獲得するものだ。 人は関与し、所有感を持ち、「自分が関わった」と言えるときに時間と注意を注ぐ。 ロイヤルティも変わる。 共創し、コミュニティに関わり、ストーリーを広げた顧客は、もはや消費者ではない。参加者である。 そして参加は、単なる取引よりもはるかに代替されにくい。 成長の仕組みも変わる。 参加者はやがて支持者となり、支持者は新たな人々を呼び込み、 さらに創り手へと進化する。 貢献はやがて「流通」そのものになる。 変革の経済が到来している。 次の時代は「変容」を軸にした経済である。 人々をより健康にし、より有能にし、より創造的にし、より自信を持たせ、よりつながりを生む。 優れたブランドはすでに理解している。 ブランドを信じさせるのではなく、人が自分自身を信じられるようにするのだ。 そこにこそ「存在意義」がある。 Nikeは靴を売っているのではない。進歩を売っている。 Duolingoはレッスンではなく、自信と能力を売っている。 Airbnbは部屋ではなく、帰属を売っている。 いまやブランドが自分のやり方を押し付けることは、むしろ侮辱に感じられる。 どんな関係にも言えるように、「木は他の木の影では育たない」。 最も速く成長するブランドとは、自ら運転することをやめ、人々にハンドルを委ねる勇気を持つブランドである。

「サステナ経営と財務をつなぐ」GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く アフターセミナー紙上インタビューPart2 柏原岳人 | NECSUS GREEN FILE

「サステナ経営と財務をつなぐ」GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く アフターセミナー紙上インタビューPart2 柏原岳人

2026年3月7日開催、「サステナ経営戦略と財務をつなぐ」「GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く」を担当した柏原岳人です。柏原総合環境会計事務所を主宰し、企業のサステナビリティ開示をサポートしています。 この度の企画は、今回を実践編として3回開催していきます。 第1回(2月7日:導入編)サステナ戦略と財務をつなぐインターナルカーボンプライシング(ICP) 第2回(3月7日:実践編)GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く 第3回(4月25日:応用編)本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション 次回、第3回(4月25日:応用編)「本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション」の募集を行っています。ご希望の方には、第1-2回のアーカイブ動画及び資料を提供いたします。第3回からの受講でも理解できますのでお気軽にお申し込みください。 第1回(2月7日:導入編)では、内部炭素価格(インターナルカーボンプライシング:ICP)の基礎知識について理解を深め、環境経営-サステナビリティ経営を経営戦略の中に融合していくために必要な財務と環境-サステナビリティの連携を実現していくための技法を紹介しました。このインタビューで登場する専門用語については、第1回のインタビュー記事を参照して理解を深めてください。 第2回(3月7日:実践編)「GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く」では、内部炭素価格(ICP)を適用することで見えてくる、損益計算書及び貸借対照表などの財務諸表に与える影響分析、財務諸表に影響を与えるESG要素との関係を明示する財務影響経路の重要性、など内部炭素価格(ICP)が導入されることにより進展が期待される財務情報とサステナビリティ情報のリンケージについて解説しました。 2026年以降の大きな動きとして、SSBJ基準を開示規範として証券市場におけるサステナビリティ開示が法制度化される予定です。プライム上場企業に対して5年平均の時価総額に応じて段階的に対象企業を増やしながら、有価証券報告書上を起点とした開示が進展することを想定してプライム上場各社も取り組みを進めています。(最短で2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム上場企業から段階的に義務化される見通し) サステナビリティ開示の制度化による影響は、義務化された企業に連なるサプライチェーンを通じて波及することが想定され、サプライチェーンの中で持続的に重要な一員としてあり続けるためのツールとして、義務化対象であるかを問わず、気候変動マネジメントの重要分析思考としてICPをマスターしていただきたいです。   【質問1】 SSBJが義務化された企業に連なるサプライチェーンを通じて「財務と環境-サステナビリティのリンケージ」の影響が波及することが想定されますが、小規模な事業者がサプライチェーンの中で持続的に重要な一員としてあり続けるためには、どのように経営革新を進めていけばよいでしょうか?   【回答1】 SSBJが義務化された企業に連なるサプライチェーンは、Tier1…2…3というように多層化しています。Tier1はSSBJ義務社が打ち出すサステナビリティ戦略を理解し、その戦略に貢献する製品及びサービスを提供していくことで、サプライチェーン全体で持続可能なビジネスを展開していくことに寄与していきます。ビジネスにおいて、自社が位置する経済圏と社会全体の持続可能性を更新し続ける以外にサステナビリティに貢献し、末永く自社を存続させることは出来ません。歴史上でその実例は枚挙に暇がありません。Tier2以降も基本的な認識は同様ですが、規模によって取り組み方に差異が生じます。 < SSBJ義務社 > GHGの例を見ると、カーボンニュートラル戦略を提示し、短期-中期-長期-超長期の各々の視点でサステナビリティと経営戦略とをリンケージさせ、GHG及びエネルギー効率に関する対策と企業価値の向上が矛盾せずに進展し、移行計画の様相を開示し、その計画を想定通りにクリアしているという実績報告が必要とされます。 < Tier1該当社 > 義務社のサステナビリティ開示に格納される情報(GHGにおけるScope3情報など)を提供し、戦略を理解して貢献力のある製品及びサービスを通して、自社の企業価値とサプライチェーンの強化を目指します。小規模事業者がサプライチェーン上位企業の構想力や意向で振り回される事態は、ビジネスの世界では日常茶飯事です。サステナビリティのテーマは多岐に亘り、義務社とTier1の構想力の違いが、Tier2以下のサプライチェーン各社に大きな影響を与えてしまいます。 GHGの例をとりますと、「売上内訳を低炭素な状態に向上されるための研究投資」「現行の生産状態を改善するためのGX投資」「GHG及びエネルギー需給の状況、市場の動向、などを勘案して財務計画から悪い方向に逸脱した資産・事業等の減損処理」「カーボンニュートラルに向けた移行計画を構成するシナリオと現実がどの程度乖離しているか評価するシナリオ分析の更新」という要素が少なくとも、義務社とTier1からアナウンスされない限り、Tier2以下のサプライチェーン各社は、短期-中期-長期-超長期の各々の視点でサステナビリティと経営戦略とをリンケージさせた経営戦略を練り上げていくことは出来ません。サプライチェーンの構成員が持続可能な経営を行うためには、義務社とTier1の構想力、提示力、が必要なことをご理解ください。 < Tier2以下に該当するサプライチェーン構成社 > サプライチェーンの構成員たる小規模事業者に関しては、義務社とTier1の構想によって提示されている内容を理解し、自社の製品及びサービスがどのように貢献し評価されるかを意図して経営戦略を練ることが求められます。サステナビリティと経営戦略とをリンケージさせることは、財務関連情報として開示する義務がなくとも、サプライチェーンの構成員として戦略立案から実行、そして実績報告及び上位企業とのコミュニケーションに至るまで、逃れることができない要素になるでしょう。 法規制をクリアするということは当然ですが、これらの戦略を先読みで織り込むことが企業価値を長期視点で向上させることに繋がります。単一グループのサプライチェーンに依存するリスクが認識させる状況では、複数にコミットしていることが容易に想定でき、複数の構想を参照する経営戦略が必要になるでしょう。ICPのコンセプトを理解することは、サプライチェーンの構成員としての能力を上げるために必要となるでしょう。   【質問2】 カーボンニュートラルの視点を取り入れた経営計画への移行には、財務の視点とリンケージした視点で、短期から長期の目標と計画を設定して活動する必要について理解しました。ICPを取り入れた将来的な利益の試算、その逆算による短期目標設定などを組み込むとなると、従来の環境経営のイメージでは、経営企画部門とサステナビリティ関連部門との連携にかなり時間を要するように感じられます。スピード感をもって進めるうえでのポイントがあれば教えてください。   【回答2】 SSBJではサステナビリティ開示を「財務関連情報」として有価証券報告書に掲載することを求められているので、経営企画部門とサステナビリティ関連部門との連携はかなり密に行う必要があります。SSBJを十分に反映して優良な財務関連情報とするには、サステナビリティ関連のリスク及び機会を把握し、ビジネスモデル及びバリューチェーン・サプライチェーンに対する短/中/長期の影響を分析して重要性が高いテーマを抽出し、財務諸表に数値的な影響を与え得る財務影響経路に関する要素を明らかにする必要があります。財務関連情報として開示までの手順を簡略に示すと以下のようになります。   サステナビリティ関連のリスク及び機会を把握 →ビジネスモデル及びバリューチェーン・サプライチェーンに対する短/中/長期の影響を分析して重要性が高いテーマを抽出 →カーボンニュートラルなどの中長期を前提とした移行計画を構成するシナリオ分析を行う →財務諸表に数値的な影響を与え得る財務影響経路を明確にする →財務関連情報としての移行計画を設定する →移行計画の遂行状況を実績情報と将来情報とを合わせて開示する 財務情報を生成する際には、日常処理から決算事務、そして外部開示まで内部統制として一定の手順が事前に決められている必要があります。サステナビリティ開示ではこれから開示までの手順が確立されていく予定であり、先行して開示が義務化された会社を中心として実務が明確化されていくでしょう。特に、これらの要素間の影響プロセスを概略的に示す「財務影響経路」として整理されます。 GHGの例をとると、   考え得る多様なテーマについて、このような整理をした上で、開示までに必要な作業を明確化して開示手順を整備し、開示業務をスピードアップしていく必要があります。整備を進める際に、財務数値としての影響を具体化する技法がICPです。短期の財務影響は、損益計算書に掲載される営業利益及び当期純利益と「GHG排出量×内部炭素価格」とを比較してどの程度の高税率に耐え得るまで利益が確保できているか、を分析します。よりGHGを排出せずに効率よく利益を確保できているかという傾向を明確化し、中長期に利益を確保し続ける企業体質であるか明確化するために貸借対照表に掲載されている資産・負債に関してICPを適用して再評価します。SSBJにおいてICPが業種横断的指標として開示を義務化された理由は、ICPの技法を適用しないと財務影響経路における数値化の作業ができないという事情があります。ICPの技法を使いこなすことで検討のスピードが加速します。 〔 算式イメージ 〕 損益計算書の営業利益(当期純利益) 貸借対照表に掲載されている生産資産の減価償却対象額 Vs  GHG排出量実績 × ICP(低税率:エネルギー効率が悪い、 グローバル水準でCP耐性が低い) Vs  GHG排出量実績 × ICP(中税率:エネルギー効率が平均的、グローバル水準でCP耐性が平均的) Vs  GHG排出量実績 × ICP(高税率:エネルギー効率が良い、 グローバル水準でCP耐性が高い)   貸借対照表に掲載されている生産資産の評価額 Vs GHG想定排出量 × ICP(先進国・EUに適用されるエネルギー価格推移のシナリオ)による再評価 Vs GHG想定排出量 × ICP(新興国に適用されるエネルギー価格推移のシナリオ)による再評価 Vs GHG想定排出量 × ICP(新興国に適用されるエネルギー価格推移のシナリオ)による再評価   また、生物多様性及び生態系サービス(≒自然から得られる資源など)に関する開示基準を目指す自然関連財務情報開示タスクフォース:TNFD及びその開示ガイドラインが、IFRS財団傘下のISSBに合流することを表明しました。2026年10月に予定されている生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)までに公開草案が提示される予定です。 ISSBが想定するルールでは、公開草案から2年間をめどに成案するプロセスが存在し、2029年3月期に5000億円以上の時価総額を5年平均で有する企業群については、開示準備をしながらTNFDのISSB化を注視する必要が出てきました。気候変動関連基準であるS2基準が注目される機運が強い現状ですが、TNFDがISSBに組み込まれると一般基準であるS1基準が強化され、生物多様性、生態系サービス(≒自然から得られる資源など)に関する詳細な開示が求められることが想定されます。 エネルギー及び資源を海外に大きく依存する日本国内企業では、TNFDがISSB化することでエネルギー及び資源戦略を価格面及び物量面の両面から詳細に記載する必要に迫られます。ここに至ると、サステナビリティと財務とは否応なしにリンケージしなければならず、リンケージした戦略意思決定プロセスを構築する必要に迫られることを予告されているわけです。この際にもICPで用いた「GHG排出量×ICP」が応用でき、GHG排出量を他の資源指標に入れ替えれば、同様に財務影響経路における数値化の作業を進めることができます。水資源投入量ならば、IWPとなり、単位当たり価格の指標を駆使して財務インパクトを計算していきます。多くの方々が考える以上にICPの技法は、今後のビジネスプロセスに影響してくることを今回は理解していただきたいです。 (以上)

「マーケティング」から「共に創る」へ by トーマス・コルスター | NECSUS GREEN FILE

「マーケティング」から「共に創る」へ by トーマス・コルスター

サステナ経営の伝道師 トーマス・コルスターによる好評コラムです。 人々に「マーケティングする」から「ともに創る」へ 私が『Goodvertising』(Thames & Hudson、2012年)を書いた頃、ソーシャルメディアはまだ黎明期であった。私は非常に楽観的であった。あるいは、少しナイーブであったのかもしれない。当時、初めて市民が公の場で声を持つようになったのである。 一つのツイートがCEOに疑問を投げかけることもできる。 Facebookのグループが多国籍企業に圧力をかけることもできる。 私は、いわゆる「ソファ・アクティビスト(couch activist)」――家にいながら企業の不誠実な行動を指摘する市民――が、ブランドを正直に保つ時代が到来するのではないかと考えていた。一つ一つの投稿が企業行動を監視する時代である。 しかし興味深いことが起きた。ブランドのほうが人々よりも速く適応したのである。確かに人々は声を上げる手段を得た。しかし企業との力の不均衡そのものは、ほとんど変わらなかった。情報の「ノイズ」は増えたが、必ずしも説明責任が強化されたわけではなかった。 ブランドの物語から「集合的な物語」へ 現在、私たちはまったく異なる転換点に立っている。 生成AIは、一般の人々――ここでは「市民」と呼ぶ――に、これまでにない規模の分析力・創造力・組織力を与えている。 市民は企業のサステナビリティレポートを数秒で分析できる。 競合企業の主張と比較することも可能である。 企業が制作した華やかなブランド映像がメディア露出のピークを迎える前に、それに対抗するキャンペーンを生成し、コミュニティを動員することさえできる。 それも情熱と創造性、そして圧倒的なスピードをもってである。 これは単なる「怒りの増幅」ではない。 集合的なナラティブ(物語)の主導権が市民側へ移りつつあるということである。 そしてそれは、ブランドのルールそのものを変える。 ターゲティングから、人々を「運転席」に 長年、ブランドはナラティブの主導権に依存してきた。 企業はしばしば、私が「ヒーロートラップ」と呼ぶ状態に陥る。 すなわちブランド自身を「変革の主人公」として位置づける傾向である。 企業はこう語る。 「私たちはムーブメントを牽引している」 「私たちは地球を救っている」 「私たちはコミュニティをエンパワーしている」 確かに印象的な表現である。 しかしそこではブランドが物語の中心に置かれている。 人々は拍手することを求められ、場合によっては商品を購入することも求められる。 しかしそれ以上の役割を与えられることは稀であった。 今日の環境において必要なのは、「人をターゲットにする」マーケティングから「人の参加を可能にする」仕組みへの創造的リセットである。 私はこれを「トランスフォーマティブ・プラットフォーム(Transformative Platform)」と呼んでいる。 これはゲームに似ている。 ルールは存在する。 方向性も存在する。 しかし魔法はルールブックから生まれるのではない。 プレイヤーから生まれるのである。 人々の選択から。 創造性から。 試行錯誤から。 そして人々が与えられた空間を思いがけない方法で使うことからである。 参加型ブランドの例 たとえばアウトドアブランド REI の「#OptOutside」イニシアティブである。 ブラックフライデーに店舗を閉め、人々に買い物ではなく自然を楽しむことを促した。 これは単なるキャンペーンではない。 「私たちの価値観を称賛してほしい」と言ったのではなく、「あなたも参加してほしい」と呼びかけたのである。 また American Express の「Small Business Saturday」も同様である。 これはクレジットカード機能を宣伝するものではなかった。 地域の起業家に消費を向けるコミュニティのための継続的な機会を創り出したのである。 これらの事例には共通点がある。 それはメッセージ主導ではなく、参加主導であること。 ブランドが物語を支配しようとするのではなく、人々がその物語に入る条件を設計しているのである。 テクノロジーの時代こそ、人間中心へ テクノロジーが強力になるほど、 ブランドはより人間的である必要がある。 それは柔らかくなることでも感傷的になることでもない。 真に人間中心であることである。 ブランドは主役の座を手放し、その代わりに人々の成長を支えるインフラを設計する必要がある。 健康、コミュニティ、能力、社会への貢献、、、こうした領域で、個人の成長を可能にする仕組みである。 AIは今後も集合的行動のコストを下げ続ける。 従業員、顧客、市民は、企業を分析し、比較し、動員するツールを手にする。 かつて企業側に有利であった情報の非対称性は急速に崩れている。 その代わりに新たな期待が生まれている。 もし私をあなたのブランドの物語に招き入れるのであれば、その物語の中で行動できる力も与えるべきである。 これから成功するブランド これから成功するブランドは、最も大きな「パーパス」を語るブランドではない。 成功するのは変革のための信頼できるプラットフォームを構築するブランドである。 そこでは商業的成功と人間の進歩が互いに強化し合う。 15年前、私は人々がツイートで企業に声を返す時代を想像していた。 しかし今日、人々はプロフェッショナルなマーケティング機能を手元に持った状態で声を上げる。 もはや問題は、ブランドが挑戦されるかどうかではない。 唯一持続可能な立場は、人々が前進することを支えることである。 トランスフォーマティブ・プラットフォームを構築する8つの特徴 Transformative 明確で共有された変革目標を設定する Guided 方向性やガイドラインを示す Motivational 行動を促す設計にする Creative 創造性の余地を残す Replicable 再現可能な仕組みにする Common 誰にでも開かれたものにする Accessible ツールや仕組みを容易に利用できるようにする Relevant ブランドの価値と関連付ける

グリーン・ハッシングの本当のコスト ― 効果測定データが明らかにするもの ― by トーマス・コルスター | NECSUS GREEN FILE

グリーン・ハッシングの本当のコスト ― 効果測定データが明らかにするもの ― by トーマス・コルスター

サステナ経営の伝道師 トーマス・コルスターによる好評コラムです。 2026年、サステナビリティがうまく機能していない理由は、企業が行動していないからではない。 あまりにも多くの企業が「語ること」をやめてしまったからである。 取締役会では、どこも同じ論理が共有されている。 「やるべきことは静かにやろう。発言すれば反発を招く」。 米国では、サステナビリティや多様性に言及しただけで、大統領から「ウォーク(意識高い系)」と名指しで批判されることすらある。 何も言わなければ、標的になることは避けられる。 この現象には名前がある。 グリーン・ハッシング(Green Hushing)だ。 だが、経営者の多くがあえて向き合おうとしない、不都合な問いがある。 沈黙は、実際にはどれほどのコストを生んでいるのか。 この問いに答えるため、私たちは最新の効果測定データを見ていく必要がある。 分析対象は2025年に評価された取り組みで、その多くは2024年に企画・実行されたキャンペーンだ。 確かにタイムラグはある。だが、その距離があるからこそ、恐怖や政治的ノイズが取り払われ、より有益なもの――パターン――が見えてくる。 そして、2024年のパターンは明確だった。 サステナビリティが後退すると予測されていたにもかかわらず、2024年は、サステナビリティを軸にしたブランド活動が、過去最高の効果を上げた年となった。 企業が沈黙すると見られていたその年に、明確で信頼性のある形で発信したブランドほど、高い成果を上げていたのである。 グリーン・ハッシングは「慎重さ」として語られがちだ。 しかし実際には、それは戦略的な選択であり、しかも中立的な選択ではない。 データが示すのはこうだ。 サステナビリティをブランドストーリーの中心に据えた企業は、不利益を被るどころか、話題を避けた企業を上回る成果を出していた。 最大のリスクは、批判や監視ではない。距離を置いてしまうこと(irrelevance)である。 価値観を軸にしたコミュニケーションから退いたブランドは、消えるわけではない。「どれでも同じ存在」になる。 選択肢が溢れる市場において、それは反発よりもはるかに大きな脅威だ。 効果を生むサステナビリティとは何か 二つの重要な示唆が浮かび上がる。 第一に、社会的サステナビリティは、環境メッセージ単独よりも高い効果を示した。尊厳、包摂、ウェルビーイング、自信、公正さといったテーマに焦点を当てたキャンペーンは、環境課題のみを扱うものよりも頻繁に見られ、かつ効果的だった。 これは気候変動対策を否定するものではない。 人々はまず「自分の生きた経験」を通じてサステナビリティと向き合う、という事実を思い出させるものだ。 抽象的な問題は行動を変えにくい。人の物語こそが、人を動かす。 第二に、短期的なアピールよりも、長期的なコミットメントが効果を生む。 最も成果を上げた取り組みは、場当たり的なキャンペーンや単発の声明ではなかった。数年、時には数十年にわたって同じテーマに向き合い続けてきた活動だった。 同じ課題に継続して取り組むことで、ブランドは信頼、感情的なつながり、そして累積的なインパクトを築いていった。 サステナビリティは、戦略に組み込まれたときに機能する。 都合のよいときに後付けされるものではない。 なぜこれが2026年に重要なのか 今日のサステナビリティを巡る議論は、「恐れ」によって形づくられている。 規制への恐れ、訴訟への恐れ、誤解されることへの恐れ、政治的な争点にされることへの恐れ。 だが、恐れは最悪の戦略である。 データが示しているのは、サステナビリティについて語るのをやめても、信頼は守られないという事実だ。むしろ、静かに侵食されていく。 関連性(レレバンス)は、沈黙ではなく、明確さと一貫性によって築かれる。 長期的思考を誇る文化や組織にとって、これは特に重要だ。 人を中心に据えた、忍耐強いサステナビリティの取り組みは、効果と強く結びついている――ただし、それが可視化されている場合に限る。 良いことをして、何も語らない。 それは美徳に見えるかもしれない。 だが、価値を生むことはほとんどない。 サステナビリティ担当者が直視すべき、三つの厳しい真実 1. グリーン・ハッシングにはコストがある 沈黙は短期的な不快感を避けるかもしれないが、差別化と長期的なブランド力を弱める。データは明確だ。慎重さよりも明瞭さが成果を生む。 2. 問題よりも、人が先にある サステナビリティは、人間の尊厳や日常生活に語りかけたときに共鳴する。 専門用語や遠い目標の背後に隠れたときではない。 3. コミットメントそのものがメッセージである 信頼は、完璧に言葉を選んだ声明ではなく、時間をかけた一貫性によって築かれる。継続は、本気度の証だ。 最後に 2024年から得られる教訓は、過去の話ではない。未来を予測するものだ。 サステナビリティが静まり返ると予想された年に、効果は「沈黙を拒んだブランド」に報酬を与えた。 グリーン・ハッシングは自己防衛のように感じられるかもしれない。 しかし実際には、それは関連性からの静かな撤退である。 社会への貢献によってブランドが評価される時代において、 もはや最も危険なのは「間違ったことを言う」ことではないのかもしれない。 何も言わないことこそが、最大のリスクになりつつある。

「サステナ経営と財務をつなぐ」 アフターセミナー紙上インタビュー 柏原岳人 | NECSUS GREEN FILE

「サステナ経営と財務をつなぐ」 アフターセミナー紙上インタビュー 柏原岳人

2026年2月7日開催のNECSUS特別セミナー、「GXの新常識:サステナビリティ開示が“経営分析の重要情報”になる時代-サステナ戦略と財務をつなぐインターナルカーボンプライシング(ICP)-」を担当した柏原岳人先生が紙上インタビューで再登場。柏原総合環境会計事務所を主宰し、企業のサステナビリティ開示をサポートしている方です。 3回シリーズの本初回は「そもそもサステナ経営と財務のつながりは?」から。この分野に詳しい方は復習記事としてご活用を、「財務はどうも、、、」という方は、丁寧な読み込みで理解が深まります(編集部Jは3回読みました笑)。 【編集部】「サステナ経営と財務」のセミナーは、3回に分けて学びを深める構成ですね。 【柏原】本企画は、今回を導入編として3回開催することを予定しています。 第1回(2月7日:導入編)サステナ戦略と財務をつなぐインターナルカーボンプライシング(ICP) 第2回(3月7日:実践編)GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く 第3回(4月25日:応用編)本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーションです。 【編集部】サステナ経営は財務との連動で初めて鼓動が始まります。財務の関わり方についてあらためてお話しください。 【柏原】多くの方々が、第一印象として、財務と環境がなぜ結びつくのか、と疑問に思われることでしょう。もう少し考えると、企業の視点からは、「環境対策は負担したくないコスト」という考え方が思い浮かぶでしょう。一方、社会の構成員である個々人の視点からは、環境問題やESGの主要テーマに関係する問題を社会的損失として認識し、解決すべき「社会的コスト」が存在すると確信している現実があります。 企業側が適切に社会的コストを負担して課題解決に貢献し、企業価値を確保向上し続けなければ、社会の構成員である個々人が幸せになれる素地は涵養できません。サステナビリティな社会に貢献し得る社会的コストを負担して企業価値を向上させる企業を、株式市場や責任ある企業社会、市民社会など社会側から評価する経済社会を早急に構築する必要があります。 【編集部】サステナ経営と財務の分野では、ICPやISSBといった略語が次々に生まれ、「アルファベットスープ」と称せられるほどです。少し整理して教えてください。 【柏原】上記のような経済社会を構築するために必要な企業評価のインフラとは、従来から流通する財務開示に基づく企業評価と連携できる世界共通のサステナビリティ開示基準です。2023年6月に国際的なIFRS財団によるサステナビリティ開示基準(以下、ISSB基準)が成立しました。IFRS財団は国際会計基準の制定団体であり、財務関連情報としてのサステナビリティ開示を充実させるために日々改善を進めています。 我が国でも、(公財)財務会計基準機構内に設置されたサステナビリティ基準委員会(SSBJ)によって2025年3月にサステナビリティ開示基準(以下、SSBJ基準)が制定されました。SSBJ基準はISSB基準と整合した基準として認定され、ユニバーサル基準、一般開示基準、気候関連開示基準、で構成されています。SSBJ基準で財務 関連情報として財務情報とサステナビリティ情報、特に気候変動問題が連携するテーマとして相関関係が明確な開示項目が、内部炭素価格:インターナル[Internal]カーボン[Carbon]プライシング[Pricing](以下、ICP)です。 内部炭素価格(ICP)という名称からも推察されるように、企業内部において炭素価格をどのように運用しているか開示が求められています。炭素価格とは、温室効果ガス(以下、GHG)をCO2に換算して単位当たりに課される金額であり、社会全体に租税として適用される場合は炭素税、GHGの排出量に関係させた取引市場では排出量取引(排出枠、排出権、など取引機構で名称は異なります)など、「炭素排出量×炭素価格」の基本原理に基づいて経済社会の各方面で応用が進んでいます。 内部炭素価格(ICP)を用いた開示を行うということは、財務会計で行われてきた企業内部における会計情報に基づく意思決定のプロセスに「炭素排出量×炭素価格」の基本原理がどのように組み込まれて、経営全体に気候変動対策が適切に配慮され、気候変動対策の財務影響が財務情報に反映され、財務情報及び気候変動対策の実数の双方で結果を残しているか、を開示することになります。企業経営における気候変動に関するリスクと機会、カーボンニュートラル(実質的なGHG排出ゼロ)に向けた長期視点の行動計画、を開示する際に、財務と気候変動対策の相関関係を示す重要な要素が内部炭素価格(ICP)なのです。 【編集部】業界の注目すべき最新トピックを教えてください。 【柏原】2026年以降の大きな動きとしては、SSBJ基準を開示規範として証券市場におけるサステナビリティ開示が法制度化される予定です。プライム上場企業に対して5年平均の時価総額に応じて段階的に対象企業を増やしながら、有価証券報告書上を起点とした開示が進展することを想定してプライム上場各社も取り組みを進めています(最短で2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム上場企業から段階的に義務化される見通し)。 サステナビリティ開示の制度化による影響は、義務化された企業に連なるサプライチェーンを通じて波及することが想定され、サプライチェーンの中で持続的に重要な一員としてあり続けるためのツールとして、義務化対象であるかを問わず、気候変動マネジメントの重要分析思考としてICPをマスターしていただきたいです。 【編集部】今後のセミナーの展開について、あらためて教えてください。 【柏原】第2回(3月7日:実践編)GX戦略に不可欠な損益計算書と貸借対照表をICP分析で読み解く、では内部炭素価格(ICP)を適用することで見えてくる損益計算書及び貸借対照表などの財務諸表に与える影響分析、財務諸表に影響を与えるESG要素との関係を明示する財務影響経路の重要性、など内部炭素価格(ICP)が導入されることによ り進展が期待される財務情報とサステナビリティ情報のリンケージについて解説していきます。 第3回(4月25日:応用編)本当のPBR(株価純資産倍率)対策、ICPと財務指標のコラボレーション、では、東京証券取引所上場部から2023年3月31日に提示された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」に代表されるPBR問題と密接に絡むICP分析手法について解説します。既存の財務指標や分析手法とICP分析手法を組み合わせることで、PBR問題を進展させるために必要な非財務資本(製造資本、知的資本、社会関係資本、人的資本、自然資本)を充実させるプロセスを紐解くことが期待されており、内部炭素価格(ICP)が、財務関連情報として重要なサステナビリティ開示項目とされる理由となった応用範囲の広さも垣間見ていただきます。 内部炭素価格(ICP)について理解を深め、環境経営-サステナビリティ経営、を経営戦略の中に融合していくために必要な財務と環境-サステナビリティの連携を実現していくための一助になればと考えております。

MBA取得を迷っている社会人のためのリアルトーク 五十嵐篤・本学研究科長予定者メールインタビュー | NECSUS GREEN FILE

MBA取得を迷っている社会人のためのリアルトーク 五十嵐篤・本学研究科長予定者メールインタビュー

新年のNECSUS特別セミナー第一弾は五十嵐篤・本学研究科長予定者が登場。MBA取得に際し、キャリア形成、仕事/家庭との両立や学費等で迷っている人たちに向け、オンラインでトークセッションを行ないました。 以下は、そのまとめとしてのメールインタビューです。 1.MBAがどのように自分のキャリアや人生に影響を与えていますか? 私にとってのMBAは、キャリアを「前に進めるための資格」というよりも、自分のそれまでの経験や判断を問い直すための学びでした。実務の中で、自分の限られた経験から感覚的に行っていた伝え方や意思決定を、理論や分析のフレームワークも用いて、よりよい選択肢を考え、そして、説明できるようになったことで、自分の強みや立ち位置が明確になり、判断や発言に一貫性が生まれました。 また、答えを感覚的に判断したり急いだりするのではなく、問いを持ち続ける姿勢が身についたことは、その後のキャリアや人生において、大きな変化をもらたし支えになっています。MBAで得たものは知識以上に、自分自身や組織、そして社会に「問い続ける」姿勢でした。 2.MBAを検討している人へのメッセージをお願いします。 MBAを検討している方には、「今の自分に何が足りないか」ではなく、「いま自分はどんな問いを持っているか」を大切にしてほしいと思います。年齢や立場に関係なく、キャリアのどこかで正直に自分に向き合い、考え直す時間は誰にとっても必要だと考えます。多様な経験やスキルや価値観を持つ人と共に対話し学ぶことは、所属する組織へのダイバーシティのあり方や、個人のキャリア形成においても大きな意味を持ちます。もし迷っているなら、その迷い自体が問いの始まりです。自分だったらどう考え、どう判断するのか――その問いを深める場として、MBAを捉えてみてほしいと思います。

1.サステナビリティは”ルール”か、それとも”道徳”か?  -良い利益を生むビジネスを考える- 中山茂 特別セミナー(12月13日開催)振り返りインタビュー | NECSUS GREEN FILE

1.サステナビリティは”ルール”か、それとも”道徳”か?  -良い利益を生むビジネスを考える- 中山茂 特別セミナー(12月13日開催)振り返りインタビュー

環境経営大学院大学(設置構想中)では、GX時代の戦略的変革リーダーを養成する一環として、NECSUS特別セミナーと称するオンラインセミナーを開催しています。 2025年12月13日は、サステナブルなビジネス発想-未来を動かす価値創造3つの視点-と題し、千趣会からベル・メゾンを700億円ビジネスに育て上げた中山茂・中山マーケティング株式会社代表取締役に講演願いました。 以下は、ご講演終了後、本ニュースレター読者に向けミニインタビューにお答えいただいたものです。聞き手は本学理事長の平野宏司です。 平野:本日の特別セミナー、ありがとうございました。「サステナブルなビジネス発想-未来を動かす"価値創造"3つの視点-」と題し、 ①新規事業開発の現状理解 ②サステナブル視点からの価値創造意識、 ③本質的価値を見失わない臨機応変な対応 についてお話しいただきました。 3つの視点はすべて合点のいくものでしたし、私は「筋がいいビジネス」の話が心に残りました。「筋」がいいビジネスとは、「なんかよさそう」ではなく、構造として強いと感じることができるか?そしてそれを見極める直感を養うには「失敗体験」や「考える努力」が必要、との話で、これは経営の体系的な学びの必要性を説く本学の考えと合致するものです。 さらに先生が好きな言葉として「報われない『努力』はあるが、無駄になる『努力』はない」を紹介されたことも印象的でした。 さて、先生のお話には、「良い利益」「悪い利益」という言葉もありました。自社利益のみを考えるビジネスは、悪い利益しか生まないが、顧客や社会を考えて行なうビジネスは「良い利益」を生むとの話でした。 サステナビリティを意識しないビジネスでは、本当の意味での「良い利益」は生まれにくいのではないか、という理解をしたのですが、その点について改めてご説明いただければと思います。 中山:正直に言うと、過去の成功事例は、当時はサステナビリティを強く意識してやっていたわけではないケースが多いんですよね。ただ、あらためて振り返ってみると、「うまくいったビジネス」は結果的にサステナブルな要素と合致している。 逆に、当時からその視点を明確に意識していれば、もっと違う展開もあったかもしれない。今回はそこまで踏み込んではいませんが。。。 平野:これからビジネスを始める方々には、ぜひ環境経営、つまり環境保全を基軸としたビジネスを実践してほしいという思いがあります。それが「良い利益」を生むものであってほしい、という願いもあります。そのために、例えば会議の中にサステナブルのチェック項目を入れるとか、責任者を置くといった、具体的なヒントがありますか? 中山:これは本当に難しい問題です。ビジネスって、きれい事だけでは成り立たない部分もありますよね。誰かが利益を得る一方で、誰かが不利益を被る構造が生まれることもある。そう考えると、単純に「サステナブルであるべきだ」と言うだけでは済まない現実があります。 だからこそ、サステナビリティは「言葉として毎回掲げるもの」なのか、という点には正直、違和感もあります。本来は当たり前のこと、もっと言えばルール以前の「道徳」の話だと思っているんです。SDGsを、無理にルール化しようとしているように感じる部分には、少し悶々とするところがあります。 平野:なるほど。一方で、やはり何らかの「仕組み」にしないと、人はなかなか動かないのではないか、という思いもありますが。。。 中山:ひとつ思い出すのが、以前関わっていた組織での取り組みです。会議室の出口にメーターが設置されていて、「今の会議はどれくらいお客様を笑顔にできましたか?」と表示されているんです。満面の笑顔から、不満そうな顔までいくつか選択肢があって、会議を終えたら必ずチェックしてから退出する。 これを「良い利益・悪い利益」に置き換えて考えると、今の会議での議論は人や社会にとって誇れる内容だったのか、そうでなかったのかを振り返るだけでも、結果的にサステナブルにつながるのではないかと思います。少し強引な例えですが、そんな感覚の装置は必要かもしれません。 平野:最終的に、会議の終わりで自分たちの道徳心に照らし合わせる、ということでしょうか。とても興味深いですね。 中山:ところで本日の聴講者の方々の関心は、「事業」に比重が高かったのか、「環境やSDGs」であったのか、どうでしょうね。今日のセミナーが、皆様が本当に求めている価値を提供できているものであることを願いますが。。。 平野:環境経営とその教育は、今まさに成長・発展期にあります。理想論だけを語るのが本学の役割なのか、それとも、従来のビジネスの悩みや葛藤を引き受けながら、どう乗り越えるかを模索する実学の場なのか?私たちは後者でありたいと思っています。 今日のお話から、聴講者の皆様が、これまでの時代の経済・社会の歩みと、これからの、環境という視点で新たにアップデートしていく時代へ向かう意思が、共有できたのではないかと思います。 ありがとうございました。

GXリーダー必須「あいまいさに強くなれる思考法」 日本マンパワー会長が語る「ネガティブ・ケイパビリティ」 田中稔哉 | NECSUS GREEN FILE

GXリーダー必須「あいまいさに強くなれる思考法」 日本マンパワー会長が語る「ネガティブ・ケイパビリティ」 田中稔哉

2025年11月29日は、「曖昧さに強くなる思考法ーネガティブ・ケイパビリティから学ぶ持続可能な成長のヒント」と題し、株式会社日本マンパワーの田中稔哉・代表取締役会長にご登壇いただきました。 以下は、ご講演終了後、本ニュースレター読者に向けミニインタビューにお答えいただいたものです。 Q1.ネガティブ・ケイパビリティとは何でしょうか? ネガティブ・ケイパビリティとはあいまいで不確実な状況の中で、 「わからなさ」を受け入れ、それに耐えながら、あきらめず、観察や 思考を続ける力(あり方)です。 私があてた訳語は、希望を内包した「保留状態維持力」です。 誰でもどこでも発揮するものですが、ポジティブ・ケイパビリティ(効率的な問題解決力)とのバランスで、優位になったり劣位になったりします。 特に対人支援は理解しきれない存在である人間を相手にしますので、必要になります。ただ数学など答えがあるように見える課題だとしても「本当にそうか」「他の答えはないか」と考え続ける姿勢は持っているべきだと思います。 Q2.環境経営を学ぶ人達が、ネガティブ・ケイパビリティという問題解決のためのアプローチを手に入れる必要性についてお答えください。 長期的視点を持つことが必要な環境問題と、それに比べて短期的な成果が求められがちな経営という、一見相反するテーマに対して、答えが見えない中でも、あきらめて思考停止になることなく、考え続け、試行錯誤し続けるには、ネガティブ・ケイパビリティが必要です。 また、SDGsなどもそれぞれの目標間にジレンマ、トリレンマがあり、企業経営でももはや「こうすればいい」という経営課題はあまりありません。 経営上の選択についても、いったんポジティブ・ケイパビリティを発揮して意思決定したとしても、それを妄信して進むのではなく、変更や修正をする構えを持ち続ける方が、VUCAの環境下では有効だと考えます。

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