今回から連載がスタートするルチア・ダル・ネグロさんの特別寄稿です。
De-LAB設立者のルチアさんは、ミラノ・カトリック大学で国際関係学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で地理学を学び、ミラノ・カトリック大学大学院にて制度・グローバル政策分野の博士号を取得。複数の非営利団体や民間企業での勤務を経て、認証B Corp™であるDe-LAB(www.delab.it/en)を設立し、CSR(企業の社会的責任)、持続可能な開発、国際開発協力に取り組んでいます。
イタリア学術会議(CNR)およびジャンジャコモ・フェルトリネッリ財団の元研究員。現在は、ミラノ・カトリック大学の非常勤教授、ジャンニーノ・バセッティ財団サウンディングボード委員を務めるほか、ESG報告を専門とするCEPAS/Bureau Veritas認証のChief Value Officer(最高価値責任者)として活動しています。
>>>
世界の広告データを10年にわたって分析すると、サステナビリティがどのように発信されてきたのか、その実像が明確に浮かび上がる。そして、それは多くの人が想像している姿とは異なる。
Kantarが紹介したWARCの「Effective 100」データセットは、2013年から2024年までの世界で最も効果的なマーケティング・キャンペーンを追跡したものである。それによれば、サステナビリティをテーマとするキャンペーンは、2013年の33件から2024年の41件へと着実に増加している。しかし、この増加を牽引しているのは環境に関するコミュニケーションではない。ほぼ全面的に社会的テーマによるものである。
労働、地域社会、包摂、公平性を扱うキャンペーンは、2013年の24件から2024年には34件へと増加し、調査対象となったすべての年において、全体の中で一貫して最大の割合を占めている。環境をテーマとするキャンペーンも期間を通じて存在するものの、その数は少なく、比較的横ばいである(2013年8件、2024年5件)。概して全体の中では2番目に大きな区分であり、最多になったことは一度もない。
しかし、最も懸念すべきなのは第3の区分、すなわち社会と環境の両方を同時に扱うキャンペーンである。12年間の全期間を通じ、この区分が年間3件を超えた年は一度もない。2024年には全41件中わずか2件で、全体の5%にも満たない。
これは、一時的な現象ではなく、10年以上にわたって続く構造的な傾向である。サステナビリティに関するコミュニケーション全体は約25%増加したにもかかわらず、社会的メッセージと環境的メッセージが交わる領域は、期間を通じてほぼ一貫して極めて小さいままである。
出典: Sustainability in the WARC Effective 100(Kantar, 2024により紹介)
これは、クリエイティブチームだけで処理すればよい小さな技術的問題ではない。経営戦略上の重要なシグナルである。企業は社会的インパクトを語ることに習熟し、環境インパクトについても相応に語れるようになった。しかし、その二つを一つの整合したサステナビリティの物語として語ることはほとんどなく、互いに無関係な別々のテーマであるかのように扱っている。
二つのテーマを切り離すリスク
環境と社会に関するコミュニケーションを分けることは、単なる中立的な簡略化ではない。そこには、サステナビリティ戦略を構築するすべての経営者が真剣に受け止めるべき、二つの具体的なリスクがある。
第1は、グリーンウォッシングとみなされるリスクである。企業の実績について環境面だけを伝えること、あるいは社会面だけを伝えることは、構造的な死角を生み出す。そして、その死角こそが、都合のよい情報だけを選択的に開示する余地となる。排出量削減だけを語るキャンペーンは、その構造上、労働条件、賃金の公平性、地域社会への影響について何も語らない。一方、社会貢献活動だけを語るキャンペーンは、資源利用や環境負荷について何も語らない。規制当局や監視団体が、潜在的なグリーンウォッシングの一形態として注視を強めているのは、まさにこの仕組みである。問題は、必ずしも虚偽の主張にあるのではない。事実であっても、何を語らないかを選ぶことによって、部分的な真実にしてしまうことにある。
第2は、戦略の断片化である。環境課題と社会課題を別々のチームが担当し、異なるKPIで測定し、異なるチャネルを通じて発信すれば、企業は「なぜ自社が存在するのか」「地域社会全体にどのような価値を生み出すのか」を、一つの整合した物語として語る力を失う。ここでいう地域社会全体とは、人間を取り巻く環境と自然環境の総体にほかならない。この断片化は社内にも現れる。サステナビリティ戦略は、調達、人事、製品設計、マーケティングのすべてを貫く一つの事業運営原理ではなく、相互につながりのない施策の寄せ集めになってしまう。
この二つのリスクの背後には、さらに深い構造的な問題がある。二つのテーマを切り離す習慣そのものが、単独のコミュニケーション上の選択ではなく、経営者の思考様式の表れなのである。
サステナビリティは、企業の歴史の大半において、コンプライアンス機能として扱われてきた。それは、プロジェクト群ごとに整理されたチェック項目の集合であり、それぞれに独自の認証、監査サイクル、担当責任者が置かれてきた。これはシステム思考ではなく、管理事務的な論理である。つまり、企業はサステナビリティを、事業の成長そのものを設計するための統一的な視点としてではなく、税務申告や安全点検と同様に、一つずつ満たすべき個別の義務の連なりとして管理してきたのである。
認証制度も、数十年にわたってこの傾向を強めてきた。認証制度は、領域ごとに検証しやすい、個別かつ監査可能な基準を中心に構築されているからである。しかし、認証を取得していることと、真にサステナブルであることは同じではない。
サステナビリティは、定義上、領域横断的である
ESGコミュニケーションの日常業務の中で見失われがちな点を、改めて確認しておきたい。サステナビリティは、もともと「環境」の同義語として生まれた概念ではない。ブルントラント報告書による当初の定義以来、サステナビリティという概念は、本質的に領域横断的なものとして構想されてきた。それは、生態系の限界と社会的公正、そして両者を仲介する経済・制度システムを結び付ける概念である。
したがって、環境または社会の一方の柱だけを扱うキャンペーン、方針、企業施策は、単に「焦点を絞ったサステナビリティ・コミュニケーション」なのではない。厳密に言えば、不完全なコミュニケーションである。サステナビリティの定義そのものが、環境と社会の二つの側面を、互いに付け加えても付け加えなくてもよい任意の要素として扱うことを許していない。もちろん、そのキャンペーンを支えるプロジェクト自体の設計が不十分であれば、話は別である。
社会面と環境面を、どのように一体化するか
問題が断片化にあるのなら、対応すべきは、サステナビリティ・マーケティングとコミュニケーションに対する全体的なアプローチの設計である。
キャンペーンを適切に設計するためには、次の問いが役立つ。
・社会面と環境面の両方を同時に実証できる、一つのプロジェクトまたは取組は何か。
・このキャンペーンでは何を伝えていないのか。そして、それはなぜか。
・誰が恩恵を受け、ほかに誰が影響を受けるのか。
・クリエイティブ・ブリーフから「グリーン」(または「ソーシャル」)という言葉を削除しても、キャンペーン全体の論理は成立するか。
・私たちが発信しているのは、一つの成果なのか、それとも一つのモデルなのか。
これらの問いへの答えが部分的なものにとどまる場合、あるいは4番目の問いに「はい」と答えられる場合、二つのテーマは真に統合されていない。そのとき企業にとって、評判を損なうリスクは現実のものとなり得る。
経営者とクリエイターへの示唆
この断片化を避けることは、最終的にはクリエイティブ上の選択ではなく、組織上の選択である。その出発点は、キャンペーンを設計する場に誰が参加するかにある。企画が完成した後に外部チェックとして専門知識を加えるのではなく、サステナビリティの知見を備えた戦略担当者を、すべてのクリエイティブチームに加えることが有効である。
次に重要なのは、キャンペーン公開前に誰が意見を述べられるかである。メッセージを検証する際には、ターゲットとなる消費者だけでなく、キャンペーンが取りこぼすおそれのある立場を代表するステークホルダーにも参加してもらう必要がある。一方に環境の専門家やアドボカシー団体、もう一方に労働者や地域社会の代表者を置くといった方法である。そうすれば、語られていない論点は、公開後に社会や競合他社から批判として突き付けられる前に、レビューの場で問いとして表面化する。
さらに、評価すべきは単なる成果物ではなく、統合そのものである。キャンペーンの成功を評価するKPIが、リーチ数や環境メッセージの想起率だけを測るのであれば、メッセージを分断する誘因は残り続ける。複合的な指標を採用することが、その有効な解決策となり得る。
サステナビリティ戦略を構築し、あるいは見直そうとする経営者にとって、実務上の示唆は明快である。「このキャンペーンでは、どのサステナビリティ・テーマを前面に出すべきか」と問う前に、こう問うべきである。
「社会面と環境面の双方を内包する、サステナビリティのプロジェクト、取組、またはプログラムとは何か」
この問いに答えられる企業は、消費者や市民社会からの信頼を獲得できるだけでなく、急速に統合的な対応を不可欠なものとしつつある規制環境、そして日々の現実に対するレジリエンスも高めることができる。