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広がるインパクト融資の本質を捉え直す ー借り手の中小企業側からみた活用のあり方- アフターセミナー・インタビュー with 長谷川浩司 | NECSUS GREEN FILE

広がるインパクト融資の本質を捉え直す ー借り手の中小企業側からみた活用のあり方- アフターセミナー・インタビュー with 長谷川浩司

2026年8月22日のNECSUS特別セミナーに登壇した長谷川浩司先生に、アフターセミナーインタビューを行ないました。 ・福井工業大学経営情報学部教授 ・同大学地域連携研究推進センター副センター長 ・環境経営学会副会長 ・日本経営倫理学会幹事/CSR研究部会長 ・日本リスクマネジメント学会評議員 Q.インパクト融資を企業から銀行等に提示するにあたり、第一段階は企業内部の課題と外部不経済との関連を見出すことにあり、最終段階のひとつが融資効果の評価と考えられます。それぞれの段階の留意点があれば教えてください。  A.新時代の環境経営のあり方として、次のようなフロー図を提示しました。 1.社会課題を特定→2.自社の力で課題を解決→3.課題解決で収益が拡大 →4.社会課題解決型企業になる→5.新時代の環境経営の実践 1の社会課題の特定に対しては、あまりマクロ視点で考えてしまうと、問題が大きすぎで自社ではとても手に負えないように感じてしまいますので、身近な社員の働き方や生産現場で、効率面や女性活躍推進面での課題、さらには自社製品の現地販売先における課題などを捉えてみることが重要です。 2の自社の力で課題解決に対しては、全てを自社で解決しようとせずに、社会課題解決に向けて、得意分野を持ったパートナーと連携していくことがカギになります。 3の課題解決で収益の拡大に対しては、セミナー参加者の方から貴重な生の声として、課題解決しても現状では中々収益が拡大しないというお話を受けました。現状では、確かにご指摘のとおりという実態はあろうかと思いますが、それでも、現状を100%肯定してしまうのではなく、諦めずに社会課題解決が収益に繋がる社会を目指していくことが大切であり、そのような経営者の経営マインドこそが新時代の環境経営の実践なのでないでしょうか。 因みに、どこまで史実に沿っているかは分かりませんが、8月23日に放映されたNHK大河ドラマの中でも、「新しい世を創るんだ」と力強く宣言する将の方に心が動かされて、その力に加わるというシーンが描かれていました。 また、4の社会課題解決型企業になることに対しては、「中小企業庁が推進するローカルゼブラ企業」の例を参照しながらご説明したとおり、課題を特定した後にこれを自社のビジネスモデルに沿って仕組化し、それにより社会課題の解決に繋がる“インパクト”が効果として表れ、その効果を測定していくことが重要になります。 ※さらなる学びに向けて 今回は、基礎的な概念がとても重要であることを踏まえて、根底にある考え方を中心にお話しましたが、さらに具体的に学びたい方は、差し当たり、下記の文献を参考にしてみてください。 *月刊金融ジャーナル4月号及び5月号(日本金融通信社発行)連載 「本質を捉えた“インパクト融資”実銭へ 「 地銀コーポレート・ガバナンス3. 0 」とは *サステイナブルマネジメント第25巻収録 「インパクトの本質と経営理念に照らした地域銀行インパクト融資のあり方」

寄稿「ふたつのテーマ、しかし物語はひとつ」 ―10年間のキャンペーンデータが経営者に示す、社会的インパクトと環境インパクトをつなぐ「失われた接点」- by ルチア・ダル・ネグロ | NECSUS GREEN FILE

寄稿「ふたつのテーマ、しかし物語はひとつ」 ―10年間のキャンペーンデータが経営者に示す、社会的インパクトと環境インパクトをつなぐ「失われた接点」- by ルチア・ダル・ネグロ

今回から連載がスタートするルチア・ダル・ネグロさんの特別寄稿です。 De-LAB設立者のルチアさんは、ミラノ・カトリック大学で国際関係学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で地理学を学び、ミラノ・カトリック大学大学院にて制度・グローバル政策分野の博士号を取得。複数の非営利団体や民間企業での勤務を経て、認証B Corp™であるDe-LAB(www.delab.it/en)を設立し、CSR(企業の社会的責任)、持続可能な開発、国際開発協力に取り組んでいます。 イタリア学術会議(CNR)およびジャンジャコモ・フェルトリネッリ財団の元研究員。現在は、ミラノ・カトリック大学の非常勤教授、ジャンニーノ・バセッティ財団サウンディングボード委員を務めるほか、ESG報告を専門とするCEPAS/Bureau Veritas認証のChief Value Officer(最高価値責任者)として活動しています。 >>> 世界の広告データを10年にわたって分析すると、サステナビリティがどのように発信されてきたのか、その実像が明確に浮かび上がる。そして、それは多くの人が想像している姿とは異なる。   Kantarが紹介したWARCの「Effective 100」データセットは、2013年から2024年までの世界で最も効果的なマーケティング・キャンペーンを追跡したものである。それによれば、サステナビリティをテーマとするキャンペーンは、2013年の33件から2024年の41件へと着実に増加している。しかし、この増加を牽引しているのは環境に関するコミュニケーションではない。ほぼ全面的に社会的テーマによるものである。   労働、地域社会、包摂、公平性を扱うキャンペーンは、2013年の24件から2024年には34件へと増加し、調査対象となったすべての年において、全体の中で一貫して最大の割合を占めている。環境をテーマとするキャンペーンも期間を通じて存在するものの、その数は少なく、比較的横ばいである(2013年8件、2024年5件)。概して全体の中では2番目に大きな区分であり、最多になったことは一度もない。   しかし、最も懸念すべきなのは第3の区分、すなわち社会と環境の両方を同時に扱うキャンペーンである。12年間の全期間を通じ、この区分が年間3件を超えた年は一度もない。2024年には全41件中わずか2件で、全体の5%にも満たない。   これは、一時的な現象ではなく、10年以上にわたって続く構造的な傾向である。サステナビリティに関するコミュニケーション全体は約25%増加したにもかかわらず、社会的メッセージと環境的メッセージが交わる領域は、期間を通じてほぼ一貫して極めて小さいままである。 出典: Sustainability in the WARC Effective 100(Kantar, 2024により紹介)   これは、クリエイティブチームだけで処理すればよい小さな技術的問題ではない。経営戦略上の重要なシグナルである。企業は社会的インパクトを語ることに習熟し、環境インパクトについても相応に語れるようになった。しかし、その二つを一つの整合したサステナビリティの物語として語ることはほとんどなく、互いに無関係な別々のテーマであるかのように扱っている。   二つのテーマを切り離すリスク 環境と社会に関するコミュニケーションを分けることは、単なる中立的な簡略化ではない。そこには、サステナビリティ戦略を構築するすべての経営者が真剣に受け止めるべき、二つの具体的なリスクがある。   第1は、グリーンウォッシングとみなされるリスクである。企業の実績について環境面だけを伝えること、あるいは社会面だけを伝えることは、構造的な死角を生み出す。そして、その死角こそが、都合のよい情報だけを選択的に開示する余地となる。排出量削減だけを語るキャンペーンは、その構造上、労働条件、賃金の公平性、地域社会への影響について何も語らない。一方、社会貢献活動だけを語るキャンペーンは、資源利用や環境負荷について何も語らない。規制当局や監視団体が、潜在的なグリーンウォッシングの一形態として注視を強めているのは、まさにこの仕組みである。問題は、必ずしも虚偽の主張にあるのではない。事実であっても、何を語らないかを選ぶことによって、部分的な真実にしてしまうことにある。   第2は、戦略の断片化である。環境課題と社会課題を別々のチームが担当し、異なるKPIで測定し、異なるチャネルを通じて発信すれば、企業は「なぜ自社が存在するのか」「地域社会全体にどのような価値を生み出すのか」を、一つの整合した物語として語る力を失う。ここでいう地域社会全体とは、人間を取り巻く環境と自然環境の総体にほかならない。この断片化は社内にも現れる。サステナビリティ戦略は、調達、人事、製品設計、マーケティングのすべてを貫く一つの事業運営原理ではなく、相互につながりのない施策の寄せ集めになってしまう。   この二つのリスクの背後には、さらに深い構造的な問題がある。二つのテーマを切り離す習慣そのものが、単独のコミュニケーション上の選択ではなく、経営者の思考様式の表れなのである。   サステナビリティは、企業の歴史の大半において、コンプライアンス機能として扱われてきた。それは、プロジェクト群ごとに整理されたチェック項目の集合であり、それぞれに独自の認証、監査サイクル、担当責任者が置かれてきた。これはシステム思考ではなく、管理事務的な論理である。つまり、企業はサステナビリティを、事業の成長そのものを設計するための統一的な視点としてではなく、税務申告や安全点検と同様に、一つずつ満たすべき個別の義務の連なりとして管理してきたのである。   認証制度も、数十年にわたってこの傾向を強めてきた。認証制度は、領域ごとに検証しやすい、個別かつ監査可能な基準を中心に構築されているからである。しかし、認証を取得していることと、真にサステナブルであることは同じではない。   サステナビリティは、定義上、領域横断的である ESGコミュニケーションの日常業務の中で見失われがちな点を、改めて確認しておきたい。サステナビリティは、もともと「環境」の同義語として生まれた概念ではない。ブルントラント報告書による当初の定義以来、サステナビリティという概念は、本質的に領域横断的なものとして構想されてきた。それは、生態系の限界と社会的公正、そして両者を仲介する経済・制度システムを結び付ける概念である。   したがって、環境または社会の一方の柱だけを扱うキャンペーン、方針、企業施策は、単に「焦点を絞ったサステナビリティ・コミュニケーション」なのではない。厳密に言えば、不完全なコミュニケーションである。サステナビリティの定義そのものが、環境と社会の二つの側面を、互いに付け加えても付け加えなくてもよい任意の要素として扱うことを許していない。もちろん、そのキャンペーンを支えるプロジェクト自体の設計が不十分であれば、話は別である。   社会面と環境面を、どのように一体化するか 問題が断片化にあるのなら、対応すべきは、サステナビリティ・マーケティングとコミュニケーションに対する全体的なアプローチの設計である。 キャンペーンを適切に設計するためには、次の問いが役立つ。   ・社会面と環境面の両方を同時に実証できる、一つのプロジェクトまたは取組は何か。   ・このキャンペーンでは何を伝えていないのか。そして、それはなぜか。   ・誰が恩恵を受け、ほかに誰が影響を受けるのか。   ・クリエイティブ・ブリーフから「グリーン」(または「ソーシャル」)という言葉を削除しても、キャンペーン全体の論理は成立するか。   ・私たちが発信しているのは、一つの成果なのか、それとも一つのモデルなのか。   これらの問いへの答えが部分的なものにとどまる場合、あるいは4番目の問いに「はい」と答えられる場合、二つのテーマは真に統合されていない。そのとき企業にとって、評判を損なうリスクは現実のものとなり得る。   経営者とクリエイターへの示唆 この断片化を避けることは、最終的にはクリエイティブ上の選択ではなく、組織上の選択である。その出発点は、キャンペーンを設計する場に誰が参加するかにある。企画が完成した後に外部チェックとして専門知識を加えるのではなく、サステナビリティの知見を備えた戦略担当者を、すべてのクリエイティブチームに加えることが有効である。   次に重要なのは、キャンペーン公開前に誰が意見を述べられるかである。メッセージを検証する際には、ターゲットとなる消費者だけでなく、キャンペーンが取りこぼすおそれのある立場を代表するステークホルダーにも参加してもらう必要がある。一方に環境の専門家やアドボカシー団体、もう一方に労働者や地域社会の代表者を置くといった方法である。そうすれば、語られていない論点は、公開後に社会や競合他社から批判として突き付けられる前に、レビューの場で問いとして表面化する。   さらに、評価すべきは単なる成果物ではなく、統合そのものである。キャンペーンの成功を評価するKPIが、リーチ数や環境メッセージの想起率だけを測るのであれば、メッセージを分断する誘因は残り続ける。複合的な指標を採用することが、その有効な解決策となり得る。   サステナビリティ戦略を構築し、あるいは見直そうとする経営者にとって、実務上の示唆は明快である。「このキャンペーンでは、どのサステナビリティ・テーマを前面に出すべきか」と問う前に、こう問うべきである。   「社会面と環境面の双方を内包する、サステナビリティのプロジェクト、取組、またはプログラムとは何か」   この問いに答えられる企業は、消費者や市民社会からの信頼を獲得できるだけでなく、急速に統合的な対応を不可欠なものとしつつある規制環境、そして日々の現実に対するレジリエンスも高めることができる。  

サステナビリティ経営は競争優位になるのか ― パタゴニアの事例から考える価値創造経営 ― アフターセミナー・紙上インタビュー with 竹原正篤 | NECSUS GREEN FILE

サステナビリティ経営は競争優位になるのか ― パタゴニアの事例から考える価値創造経営 ― アフターセミナー・紙上インタビュー with 竹原正篤

2026年7月25日、上記のタイトル開催した講演後の紙上インタビューです。 【講師プロフィール(講演時)】 ●株式会社T Insights代表取締役 ●環境経営学会理事 東京経済大学非常勤講師 ●大妻女子大学非常勤講師 ●損保ジャパンと日本マイクロソフトでサステナビリティ経営推進を担当 ●法政大学教員を経て現職 Q.先生のお話から、パタゴニアの成功要因は、環境理念と、それを実践する経営構造を一体として構築したことにあると理解しました。 一方で、既存企業にとっては、理念を浸透させることも、それを支える経営構造を変革することも容易ではありません。特に、シュイナード氏のように、自身の原体験を環境経営の理念へ昇華できる経営者は今のところ多数とは言えなさそうに感じます。 そこでお伺いします。 既存企業の経営トップが環境経営・サステナブル経営へ転換を進める際、実践上、特に留意すべきことは何でしょうか。理念の浸透と経営構造の改革という二つの観点から、優先順位の高い取り組みを教えていただけますでしょうか。 (例えば、以下のような取り組みが想定されますが、、、) 【理念の浸透】 朝礼や会議で理念を継続的に確認する 理念について内省する機会を設ける 理念共有ミーティングを実施する 1on1を通じて理念と業務を結び付ける 【経営構造の改革】 小規模な部門から段階的に導入する 部門長との対話を重ねる 取引先や外部ステークホルダーと意見交換を行う A.私は、既存の企業が実効性の高い環境経営・サステナビリティ経営を実践するためには、「理念の浸透」と「経営構造の構築」を別々の課題として捉えずに、一体のものとして取り組むことが重要だと考えています。  今回の講演でもお話しさせていただきましたが、パタゴニアの成功要因は、優れた環境理念を掲げたことで終わらずに、その理念を日々の経営判断や事業活動の中で実践できるような経営構造を、時間をかけながら構築していったことにあります。  理念を企業内に浸透させるためには、社員が理念を深く理解するようになる取り組みに加えて(朝礼や会議で理念を継続的に確認することは私も重要だと考えています)、理念を自分事ととらえて実践できるように、経営として仕組みを構築することだと考えています。理念が真に企業に浸透した状態とは、社員が理念を深く理解し、日々の意思決定の基準になっている状態だと考えております。  理念の浸透という点では、稲盛和夫氏が京セラで実践し、日本航空(JAL)の再建プロジェクトでも実践され大きな成果を挙げた「京セラフィロソフィ」が、大変示唆に富む事例です。 理念を繰り返し学び、対話を通じて社員一人ひとりが自らの仕事と結び付けて考える機会を設けたことで、理念が組織文化として根付いていきました。 そして、京セラやJALの変革はフィロソフィだけで実現したわけではなく、少人数で収益に責任を負うアメーバ経営をはじめとする経営システムと一体で運用されたからこそ、理念が日々の経営や現場の行動へと結び付いたのだと考えられます。  このように、実効性の高いサステナビリティ経営の実践のためには、理念の浸透と合わせて、理念を経営管理の仕組みに組み込むことが重要だと思います。 具体的には、以下のような点が重要と考えております。 サステナビリティを中期経営計画などの経営戦略へ統合すること その実現に向けた目標やKPIを設定し、継続的にモニタリングすること 役員・従業員の評価や報酬制度へ反映すること 取締役会が継続的にレビューし、経営資源の配分へ結び付けること  こうした仕組みが整うことで、理念が、組織として継続的に実践されるものになると考えます。 理念を具現化するような経営戦略を策定し、実効的な戦略実行のためにKPIを設定し、それらのKPIが評価・報酬や経営資源配分へと結び付いていく。そのような仕組みを、程度時間をかけてでも構築していくことが、実効性の高いサステナビリティ経営へ向けて必要なことと考えております。 下線は編集部

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