投稿日:2026.09.01 最終更新日:2026.10.08
グリーンマーケティングとクリエイティブプロセスを 規律するEU指令 ―敵か、味方か?- by ルチア・ダル・ネグロ
この記事を書いた人
NECSUS STAFF
|
目次 ルチア・ダル・ネグロ博士 De-LAB CEO(www.delab.it/en)
>>> これまでサステナビリティに関するメッセージを、表現のトーンや好みの問題として扱ってきた企業にとって、これは、その問題が「根拠」と「プロセス」の問題へと変わる瞬間である。 しかも、この指令は、個々の表示を一件ずつ審査するのではなく、一定の言葉やイメージの使用を類型的に禁止する仕組みを採っている。そのため、最も早く、そして最も大きな影響を受けるのは法務部門ではない。キャンペーンが実際に生み出される現場、すなわち企画書、ムードボード、ネーミング会議、クライアントへの最初のプレゼンテーションなのである。 本稿は、グリーンキャンペーンを最終的に承認する人だけでなく、そのキャンペーンが生まれる場に立ち会うすべての人に理解してもらいたい内容である。 何が変わるのか意味を具体的に示さない「美辞麗句」は使えなくなる「環境にやさしい」「グリーン」「持続可能な」「気候にやさしい」「環境に配慮した」といった言葉を、裏付けのない装飾的な形容詞として使うことは、もはや認められない。 欧州委員会のガイダンスでは、これらの言葉を適法に使用する二つの方法が示されている。 一つは、EUエコラベル、ドイツのブルーエンジェルや北欧諸国のノルディックスワンといった各国のISOタイプⅠ環境ラベル、または他のEU法令に基づく同等の最高水準の認証によって、その表示を裏付けることである。 もう一つは、その言葉が具体的に何を意味するのかを、当該表示が掲載されるウェブページ、パッケージ、画面上の目立つ場所に、明確に記載することである。 したがって、単に「気候にやさしいパッケージ」と表示することは違法となる。一方、「気候にやさしいパッケージ――製造に使用するエネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄っています」と表示するのであれば、一般的で曖昧な主張ではなくなり、違法とはならない。 つまり、禁止されるのは言葉そのものではない。認証も具体的説明も伴わない、曖昧な形容表現なのである。 カーボンオフセットに依拠した「カーボンニュートラル」は使えなくなる企業自身のバリューチェーン内で実測された排出削減ではなく、購入したカーボンクレジットに依拠して、ある製品が気候への影響を中立化、削減、または改善したと表示することは、全面的に禁止される。 これは、「算定方法を開示すれば使用できる」という問題ではない。明確な禁止事項である。 一部分の環境性能を、製品や企業全体の評価へ広げることはできなくなる
箱がリサイクル可能だからといって、その製品全体が持続可能になるわけではない。また、環境負荷の低い製品ラインが一つあるからといって、企業全体が「地球環境に貢献している」と表示できるわけでもない。 今後は、すべての主張について、根拠が裏付けられる範囲を正確に限定し、その限定された内容を、消費者が表示を見るのと同じページまたは画面上で明示しなければならない。 実体のある制度に基づかない認証マークは使えなくなる緑色の葉のアイコン、独自に作成した「エコ」マークなど、環境上の優位性を示唆するバッジ型の図柄は、ECGT上の「サステナビリティ・ラベル」に該当する。 このようなラベルは、公的機関が設定したもの、または真正な認証制度に基づくものでなければ違法となる。その認証制度には、競合他社にも開かれていること、内容が公表されていること、制度の運営主体から法的に独立した第三者による検証が行われていることが求められる。 企業が独自のラベルを所有、運営すること自体は禁止されていない。この点は欧州委員会のガイダンスでも明示されている。ただし、その背後にある認証制度が、これらの条件を満たしていなければならない。 どれほど善意に基づくものであっても、実体のある制度を伴わず、パッケージのためだけに作られたマークは認められない。 これら四つの規制の背後には、各加盟国の消費者保護当局が執行する、極めて高額な制裁金が存在する。 EU法では、各加盟国が国内法で定める制裁金の最低水準を年間売上高の4%としている。これは上限ではなく、あくまで最低基準である。さらに高い基準を設けている国もあり、例えばフランスでは、平均売上高の最大10%、または誤認を招く広告キャンペーンに要した費用の50%までの制裁金を科すことができる。 2026年9月27日の適用開始後に正式な移行期間はなく、欧州委員会のガイダンスは、既存の商品も対象となることを明記している。 一方、欧州委員会は、既存在庫をすべて再包装しなくても、ステッカーや販売時点での訂正情報によって適合させることが可能であるとも説明している。また、執行に際しては、企業が法令遵守のために合理的かつ相応な努力を行ったかどうかも考慮される。 だからこそ、早期に監査を開始する必要があるのであって、古いパッケージは当然に安全だと考えてよい理由にはならない。 影響が及ぶ場所――クリエイティブプロセスそのもの一般的なコンプライアンス説明では見落とされがちだが、キャンペーンを事後的に審査する人ではなく、実際に生み出す人にとって最も重要なのが、この部分である。 従来、環境に関する表示は、制作工程の終盤で修正すればよい問題として扱われてきた。まずキャンペーンを作成し、法務部門がリスクの高い形容詞を穏当な表現に修正したうえで世に出す、というモデルである。 しかし、ECGTの下では、このモデルは完全に機能しなくなる。 根拠のない一般的な環境主張は、小さな文字で但し書きを加えれば法務部門が修正できるようなものではない。そもそも使用できないのである。 したがって、「この表現を使えるのか。使えるとすれば、どのように使うのか」という問いへの正確な答えは、ストーリーボードが完成した後ではなく、クリエイティブコンセプトを組み立てる前に明らかにしておかなければならない。 具体的には、グリーンキャンペーンの制作方法に、次の六つの変化が生じる。 1.企画は感情ではなく、根拠から始める従来のクリエイティブ・ブリーフは、消費者に訴えたい感情から始まり、その後でコピーを裏付ける事実を探すことが多かった。 今後は、その順序を逆にしなければならない。まず、実際に存在する認証、ライフサイクルデータ、測定された削減数値を確認し、そのうえで、そこからどのような感情的価値を誠実に構築できるかを考えるのである。 サステナビリティ関連の案件を扱う広告会社では、最初の草案を作成した後ではなく、最初のワークショップを行う前に、認証書や監査済みの数値を提出するよう求めるケースが増えている。 2.サステナビリティと法務の担当者は、承認の場ではなく企画の場に参加する最も迅速に対応している組織は、ESGや法務の担当者を制作工程の最後に立ちはだかる関門として扱うことをやめ、企画書を共同で作成するメンバーとして位置付けている。 開始時に「実際に何を、どの程度の精度で証明できるのか」について5分間話し合うだけで、制作開始から3週間後に法務部門が中心的な主張を認めず、キャンペーン全体を作り直すために費やしていた2週間を節約できる。 3.ビジュアル・アイデンティティも、見出しと同様に厳しく審査される欧州委員会のガイダンスは、緑の葉、水滴など自然を連想させる視覚的要素についても、一般的な消費者が、暗黙の環境主張や信頼性を示すマークとして受け取る可能性があると注意を促している。 これは自動的に禁止されるものではなく、個別の判断を要する。しかし規制当局は、すでに相当広い範囲にこの考え方を適用している。 これまで純粋に美的な判断と考えられてきたアートディレクション上の選択、例えばカラーパレット、アイコン、データでは十分に裏付けられない物語を暗示する自然写真などにも、広告コピーとほぼ同程度の根拠が求められるようになっている。 ブランドが実際には獲得していない環境上の評価を、「グリーンな視覚表現」によって暗示するキャンペーンは、単に表現を慎むべき問題ではなく、現実的な法的リスクとなる。 4.名称は恒久的な主張となるため、事前確認が必要になる「エコ」「ピュア」「ニュートラル」「クリーン」といった言葉を含む製品名、商品ライン名、企業名は、一度限りのキャンペーン素材ではない。 発売時の広告キャンペーンが忘れられた後も、すべてのパッケージ、小売事業者の商品一覧、検索結果に表示され続ける。 欧州委員会のガイダンスは、2025年11月に初めて公表され、この点を明確にするため2026年5月に改訂された。そこでは、環境に関する用語を含む商標や企業名も、広告コピーと同様に規制の対象となることが確認されている。 これまで、表示管理とはある程度独立してブランド部門が担当してきたネーミングについても、名称を決定する時点で、広告コピーと同様の根拠確認が必要になる。数年後に確認するのでは遅いのである。 5.大きく、温かく、一つの事実だけを示す広告から、限定的で具体的な広告へ移行する「カーボンニュートラルなパッケージ」「持続可能な方法で製造」といったキャンペーンが機能してきたのは、その表現が広範で、誰に対しても安心感を与えられたからである。 しかし、そのような表現領域は、ほぼ失われつつある。 代わって求められるのは、より具体的で、数値に基づき、率直に言えば感情的な魅力を生み出すことが難しい表現である。 例えば、「地球にもっとやさしく」ではなく、「2019年を基準としてパッケージ由来の排出量を38%削減。独立した第三者が検証」といった表現である。 2026年の適用開始を見据えて登場している興味深い欧州のキャンペーンの中には、この変化に抵抗するのではなく、正確性や第三者検証それ自体を感情的な訴求要素として活用するものもある。 曖昧な善意ではなく、「信頼」そのものをクリエイティブの中心に据えているのである。 6.将来目標を示す主張には、当初からモニタリング計画が必要になる「2040年までのネットゼロ達成に向けて順調に進んでいます」「2028年までにすべてのパッケージをリサイクル可能にします」といった表現は、単なる将来への抱負として使用することができなくなる。 その主張を行う時点で、独立した検証が可能なロードマップが必要である。規制当局から要求された後に、防御的に作成すればよいものではない。 したがって、企業の将来方針を中心に構成するキャンペーンでは、開始当初からメディア計画の中に検証計画を組み込まなければならない。後から付け加えるのでは遅いのである。 具体例この変化を、パッケージメーカーが新しいボトルを宣伝する場合で考えてみよう。 従来であれば、次のようなコピーを使用できた。 「私たちの新しいボトルは、よりグリーンで、環境にやさしい素材を使用し、よりクリーンな地球を実現します。」 ECGTの下では、この文章のすべての要素がリスクとなる。 「よりグリーン」は、比較の基準が示されていない無限定の比較表現である。「環境にやさしい素材」は、認証もなく、同じパッケージ上で具体的に説明されてもいない一般的な環境主張である。そして、「よりクリーンな地球」は、一つの製品だけでは裏付けることのできない、範囲の限定されていない企業全体に関する主張である。 適法性を確保した表現は、より限定的で、文学的な美しさには欠けるかもしれない。しかし、はるかに強固な根拠を持つ。 「このボトルには再生PETを40%使用しています。2022年を基準として検証済みです。認証書はご要望に応じて提示します。」 これは、従来とは本質的に異なる種類のコピーであり、コピーライターに渡す企画書も本質的に異なるものとなる。 だからこそ、変革は法務審査の段階ではなく、企画立案の段階から始めなければならないのである。 もう一つ、企業広告やBtoB向けのグリーンキャンペーンで多用される、将来目標に関する例を挙げよう。 従来であれば、企業は次のように表現できた。 「私たちはネットゼロへの道を歩み、すべての人にとってより良い未来を築いています。」 ECGTの下では、この表現には二つの問題がある。 第一に、実施計画や中間目標を伴わない将来に関する主張である。第二に、「すべての人にとってより良い未来」は、指令が規制対象とする、範囲の限定されていない企業全体に関する主張そのものである。 より確かな根拠を持つ表現は、次のようになる。 「当社は2020年以降、Scope 1およびScope 2の排出量を22%削減しました。また、外部機関による検証を受けたロードマップに基づき、2027年および2030年の中間目標を公表しています。」 引用しやすい文章ではないかもしれない。しかし、ジャーナリスト、規制当局、競合他社が容易に論破できる文章でもない。 変わらないものECGTが何を禁止していないのかについても、明確に理解しておく必要がある。企業が取るべき対応は、環境情報の発信を控える「グリーンハッシング」ではないからである。 欧州の規制当局は、その目的が、根拠のない主張を排除することであり、真正なサステナビリティ・コミュニケーションを妨げることではないと明言している。 EUエコラベルを実際に取得している企業、監査済みの排出削減実績を持つ企業、検証済みのライフサイクル改善を実現している企業は、その事実を積極的に発信する権利を引き続き有している。 むしろ、競合企業がこれまで用いてきた、声は大きいものの曖昧な主張が使えなくなることで、正確な根拠を持つ企業が発信から得られる利益は一層大きくなるだろう。 ECGTによって最も大きな影響を受けるのは、控えめであっても十分な根拠を持つサステナビリティ・ストーリーを発信してきた企業ではない。 「グリーン」「環境にやさしい」といった言葉を、根拠のあるストーリーそのものの代わりとして長年使い続けてきた企業なのである。 発注側と制作側の双方で組織再編が進んでいる同様の再編は、広告会社の内部だけでなく、クライアント企業側でも進んでいる。 従来、サステナビリティに関する表示を一人の法務担当者に一括して確認させていたマーケティング部門では、最初の企画段階からマーケティングチームに加わる専門担当者を置く動きが広がっている。 その担当者には、企業が実際に保有する認証、個々のライフサイクル数値が対象とする範囲と対象としない範囲、正当化できる比較表現の限界を詳細に把握することが求められる。 その人材の価値は、制作の最後に「できない」と判断することではない。審査を通過できない企画に制作費が投入される前に、実現可能なクリエイティブ領域を形成することにある。 理屈は単純である。 実現不可能な主張をクライアントへの提案前に企画から取り除くことができれば、制作開始から3週間後に法務部門が中心的なアイデアを認めず、キャンペーン全体を解体して作り直す必要はなくなる。 この能力を示すことのできる広告会社は、それを単なるリスク管理上の補足事項ではなく、新規顧客への提案における真の差別化要素として活用し始めている。 現在EU市場で販売していない企業にも重要である理由ECGTは、本社所在地にかかわらず、EUの消費者に対してマーケティングを行うすべての企業に適用される。 日本、英国、米国からEUへ商品を出荷する企業も、ミラノに本社を置く企業とまったく同じ条件で規制の対象となる。 主要市場が欧州以外にある企業にとって、直接的な法的リスクは限定的かもしれない。しかし、この動きが示す実務上の意味は決して小さくない。 欧州の規制当局、裁判所、広告会社は、他の多くの市場が同じ課題に直面する数か月前から、「根拠を起点とするサステナビリティ・マーケティング」が日々のクリエイティブ実務に何を求めるのかについて、大規模な実証実験を行っている。 欧州のブランドが今後1年間で企画や承認のプロセスをどのように変えていくのかを観察することは、グローバルなサステナビリティ・マーケティング基準が次にどこへ向かうのかを知るうえで、極めて有益な先行事例となる。 かつて欧州のデータ保護規則が、法的には直接拘束されない市場の実務まで変えていったのと同じである。 五つの実践的ポイント1.すでに世に出ている表現を監査する何年も前に作成されたパッケージのコピー、製品名、常設のウェブコンテンツ、小売事業者の商品一覧も、制作したキャンペーンがすでに終了しているという理由で適用を免れることはない。 2026年9月以降、既存在庫を販売し切るまでの適用除外は認められない。 2.根拠の確認を、審査の最後ではなく企画の最初に移すスケジュールが大幅に遅れる最大の原因は、制作開始から3週間後になって、キャンペーンの中心的な主張を裏付けられないと判明することである。 最初のワークショップを行う前に、認証書や数値を確認すべきである。 3.ビジュアル・アイデンティティとネーミングを、コピーと同じ厳密さで扱う文章による主張が認められない場合でも、緑色を基調としたデザインや、「エコ」を冠した製品名が安全な代替手段になるわけではない。 それ自体が環境主張と判断される可能性がある。 4.企画段階から部門横断型チームを編成する2026年9月に向けて最もよく準備できている企業は、キャンペーンがほぼ完成してからではなく、企画書を作成する段階で、サステナビリティと法務の専門家をチームに加えている。 5.正確さを制約ではなく、クリエイティブ上の資産として活用する競合企業が曖昧で耳当たりのよい表現を削除せざるを得なくなる中、範囲が限定され、独立した第三者によって検証され、具体的な数値に基づく主張を行えるブランドは、むしろ際立つことになる。 それは、従来の広告らしく聞こえないからこそ、消費者が実際に確認できる情報として強い存在感を持つのである。 結論ECGTは、グリーンマーケティングそのものを禁止するものではない。 禁止するのは、根拠ではなく形容詞によって成り立ってきたグリーンマーケティングである。そして、このような手法は、過去20年間、業界の標準として静かに定着してきた。 それに代わるマーケティングは、より限定的で、より技術的であり、魅力的な文章に仕上げることは確かに難しい。 しかし、制作工程を「最後にコンプライアンスを確認する方式」から「最初に根拠を確認する企画方式」へと再構築する意思のある企業にとって、これはマーケティングの世界では珍しい機会でもある。 消費者が求めていると答えながら、実際にはほとんど提供されてこなかった、根拠があり、具体的で、信頼できるストーリーテリングに報いる規制改革なのである。 |