投稿日:2026.08.03 最終更新日:2026.10.04
サステナビリティ経営は競争優位になるのか ― パタゴニアの事例から考える価値創造経営 ― アフターセミナー・紙上インタビュー with 竹原正篤
この記事を書いた人
NECSUS STAFF
2026年7月25日、上記のタイトル開催した講演後の紙上インタビューです。
【講師プロフィール(講演時)】
●株式会社T Insights代表取締役
●環境経営学会理事 東京経済大学非常勤講師
●大妻女子大学非常勤講師
●損保ジャパンと日本マイクロソフトでサステナビリティ経営推進を担当
●法政大学教員を経て現職
Q.先生のお話から、パタゴニアの成功要因は、環境理念と、それを実践する経営構造を一体として構築したことにあると理解しました。
一方で、既存企業にとっては、理念を浸透させることも、それを支える経営構造を変革することも容易ではありません。特に、シュイナード氏のように、自身の原体験を環境経営の理念へ昇華できる経営者は今のところ多数とは言えなさそうに感じます。
そこでお伺いします。
既存企業の経営トップが環境経営・サステナブル経営へ転換を進める際、実践上、特に留意すべきことは何でしょうか。理念の浸透と経営構造の改革という二つの観点から、優先順位の高い取り組みを教えていただけますでしょうか。
(例えば、以下のような取り組みが想定されますが、、、)
【理念の浸透】
- 朝礼や会議で理念を継続的に確認する
- 理念について内省する機会を設ける
- 理念共有ミーティングを実施する
- 1on1を通じて理念と業務を結び付ける
【経営構造の改革】
- 小規模な部門から段階的に導入する
- 部門長との対話を重ねる
- 取引先や外部ステークホルダーと意見交換を行う
A.私は、既存の企業が実効性の高い環境経営・サステナビリティ経営を実践するためには、「理念の浸透」と「経営構造の構築」を別々の課題として捉えずに、一体のものとして取り組むことが重要だと考えています。
今回の講演でもお話しさせていただきましたが、パタゴニアの成功要因は、優れた環境理念を掲げたことで終わらずに、その理念を日々の経営判断や事業活動の中で実践できるような経営構造を、時間をかけながら構築していったことにあります。
理念を企業内に浸透させるためには、社員が理念を深く理解するようになる取り組みに加えて(朝礼や会議で理念を継続的に確認することは私も重要だと考えています)、理念を自分事ととらえて実践できるように、経営として仕組みを構築することだと考えています。理念が真に企業に浸透した状態とは、社員が理念を深く理解し、日々の意思決定の基準になっている状態だと考えております。
理念の浸透という点では、稲盛和夫氏が京セラで実践し、日本航空(JAL)の再建プロジェクトでも実践され大きな成果を挙げた「京セラフィロソフィ」が、大変示唆に富む事例です。
理念を繰り返し学び、対話を通じて社員一人ひとりが自らの仕事と結び付けて考える機会を設けたことで、理念が組織文化として根付いていきました。
そして、京セラやJALの変革はフィロソフィだけで実現したわけではなく、少人数で収益に責任を負うアメーバ経営をはじめとする経営システムと一体で運用されたからこそ、理念が日々の経営や現場の行動へと結び付いたのだと考えられます。
このように、実効性の高いサステナビリティ経営の実践のためには、理念の浸透と合わせて、理念を経営管理の仕組みに組み込むことが重要だと思います。
具体的には、以下のような点が重要と考えております。
- サステナビリティを中期経営計画などの経営戦略へ統合すること
- その実現に向けた目標やKPIを設定し、継続的にモニタリングすること
- 役員・従業員の評価や報酬制度へ反映すること
- 取締役会が継続的にレビューし、経営資源の配分へ結び付けること
こうした仕組みが整うことで、理念が、組織として継続的に実践されるものになると考えます。
理念を具現化するような経営戦略を策定し、実効的な戦略実行のためにKPIを設定し、それらのKPIが評価・報酬や経営資源配分へと結び付いていく。そのような仕組みを、程度時間をかけてでも構築していくことが、実効性の高いサステナビリティ経営へ向けて必要なことと考えております。
下線は編集部